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合格通知が届いてから入学まで、カジュはロメリアに魔法実技学を教えてもらった。
ロメリアは学院に入ってから習うであろう分野の先取りや、学園での過ごし方について教えてくれる。
入学式の日から寮生活を迎えるため、ロメリアと過ごせる日は短く、あわただしく過ぎていった。
「ほんとに特待生で通ってしまうとはね。また宿に顔を出してくれよ!」
入学式の前の日、食堂でロメリアはしみじみと言う。まだ肌寒い夜には、砂糖を入れたホットミルクが欠かせない。ロメリアはいつも就寝前にホットミルクを飲む習慣があった。
「ありがとうございます。必ずまた遊びに来ます」
カジュもロメリアに付き合ってホットミルクを飲んでいた。カジュは砂糖を少し多めに入れるのが好きだった。
「……親に反抗して出てきたわけじゃないんだろう?」
美味しそうにゆっくりとミルクを飲むカジュを見ながら、ロメリアは目を細めて疑問を口にする。
「……気が付いていらしたんですか」
カジュは持っていたコップを机に置くと悲しそうに笑った。
「そりゃね、こんだけ一緒にいれば気が付くさ」
貴族のような口調と礼儀作法を使うにもかかわらず、家名を名乗らない。
さらにカジュは家族の話を一切しなかった。時折見せる、どこか遠くを見つめて思いにふけっているような表情からも反抗して家を飛び出してきたようには見えない。
「あんたが家を飛び出すのは想像がつかないしね。
どちらかと言えば親を丸め込んでから来そうなもんだよ」
けらけらと笑いながら話すロメリアを見て、カジュは肩をすぼめる。
「何があったのかは聞かないさ、いつか話したいと思う日が来れば話してくれればいい」
カジュが初めて宿を訪ねてきたとき、彼女は張り詰めたような雰囲気を纏っていた。何かわけがあることは察していたが、カジュの素直さと気遣いができる態度を見て、手を貸してやりたいと思ったのだ。
何よりプリムラ学園の話をしたときのカジュの表情の輝きを見て、この子なら本当に合格できるかもしれないと感じたのだった。
「……シオン様と全く同じことをおっしゃるのですね」
カジュは視線をカップの淵に落としてつぶやいた。伏し目がちな目に銀色のまつ毛が揺れる。
「ははっ、あの子もそういったのかい。似たのかねえ」
まんざらでもなさそうにロメリアは笑った。
「ロメリア様、聞いていただけますか。私がなぜここにいるのかを」
シオンは同じ学校に通うため、これから事情を話せる日が来るのかもしれない。
しかし、ロメリアには次いつ会えるかわからない。
2章突入です!2章からは魔法がバーンとでてきます(*ˊ˘ˋ*)




