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試験当日、ロメリアに見送られカジュは学園までの道を歩いていた。
(まだ比べちゃうけど、前ほど苦しくはない)
入試申込のためにシオンと始めて学園に向かった日、カジュは町のあちこちにクロッカスの面影を見つけては苦しかった。
その気持ちは今もある。しかし、前のように悲しみで押しつぶされそうなことは減っていた。
(いつか、もう一度家族に会いたい)
カジュは試験勉強をするうちに目標がしっかり定まっていった。
学園に入り知識をつけ、研究成果を挙げて家族に会いに行く。謝罪も感謝もその時にきっちり伝えようと思うようになったのだ。
そう思えたのは、ロメリアとシオンが身分や事情に関係なく、対等に歩んでくれたからだ。
一緒の場所に立ち、共に学び、時には悩みながらも決してカジュの意見や気持ちをないがしろにしてこなかった。
分からない問題があれば疑問な場所はどこかと問いかけ、ご飯のメニューを決めるときもどんなメニューにしようかと一緒に議論してくれた。
そんなふうに自分の気持ちを口に出していくうちに、カジュは自分の気持ちを無理に抑え込んで我慢しなくてもいいと思えるようになっていったのだ。
(私が失わせたものの、ほんの一部でも家族に返せるように学びたい)
まだ、幸せを感じる瞬間に心に抵抗がかかる。
まだ苦しい。
でも立ち止まって泣いているよりかは少しでも前に進みたい。
(よし、行くよ)
カジュは力強く一歩を踏み出した。




