1-9
それから一カ月間、シオンは時間があるときはカジュに勉強を教えに通った。数学や言語などの筆記科目は問題数を重ねるごとに成績が上がっていき、過去問題を解いた際には満点を出すこともあった。
心配していた魔法実技に関しても、基礎から原理を学びなおすことで合格点は優に超えるようになっている。 感覚で使っていた魔法の原理をしっかりと理解することで、魔力の流れを体内で感じられるようになったことが大きい。
魔力の流れを理解すると体のどこの部分で魔力を増幅させているかが分かる。カジュは手首の部分で魔力を増幅させていた。
「いよいよ明日だが、今日はしっかり睡眠を取れ。
焦る気持ちはあるだろうがやれることはやったんだ。受かると思い込め」
シオンは自分にも言い聞かせるようにカジュに言った。
試験日を翌日に控え、最後の見直しを終えた二人は、次の日に備えて早めに解散することにしたのだった。
「あと、明日は家から直接学園に向かうから、会えないかもしれない」
シオンは帰り支度をしながら伝える。
「分かりました。
本当に一カ月間ありがとう。一人ではきっと無理でした」
「ああ、こちらこそありがとう。いい復習になった。
一人で勉強していたら怠けていたかもしれないし、カジュがいてくれてたすかった」
カジュの敬語は相変わらず取れていなかったが、最初に比べると堅苦しい言葉づかいをすることは少なくなった。
最近は笑顔を見せることも増えた気がする。
「じゃあ、お互い健闘を祈る」
「ええ、一緒に学園に通えますように」
そう言葉を交わすと二人は笑顔で別れた。
「あっという間だったねえ、もう一カ月もたつのかい」
いつものように夕飯の用意をしていると、ロメリアは出会った頃を懐かしむように目を細めた。
「本当に早かったです。ロメリアさんには感謝してもしきれません。本当にありがとう」
知らない町で一人心細い思いをせずにすんだのは、宿を提供しシオンを紹介してくれたロメリアのおかげだ。
「ふふっ、お礼は明日聞くさ。
あんたは飲み込みも早かったし素直だったから、教えがいがあったよ。また教師をしたくなったねえ」
ロメリアは机の上に、すっかり定位置化した机の上に二人分のフォークとナイフを並べている。
「ロメリアさんの教え方が分かりやすかったからです 」
カジュはクスリと笑いながら、蒸したローストポークの入った鍋を鍋掴みで挟んでテーブルの中央に置いて席に着いた。
こうして共に食事をするのもあと少しだ。
「二人とも受かるよ。大丈夫、私の勘は絶対さ!」
胸を張って自信気にロメリアは笑った。その頼もしい姿になんだか本当に受かるような気がしてくる。
「はい! 精一杯頑張ってきます」
ロメリアのおかげでカジュの緊張はどこかに吹き飛び、いつもと同じような和やかな雰囲気の夕食になった。




