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一輪の花が咲いていた。
どこにでも咲いているような、名もわからない花だ。短く刈り揃えられた芝生の中でその花は凛と佇んでいる。
「あの花を植木鉢に植えたら、手元においておけるのだろうか」
ふと気になり歩みを止めて、横にいる部下に問いかけた。
「どうでしょうか、花の生命力によるのでは」
隣からはそっけない返事が返ってくる。
肥料を与え、日当たりの良いところにおいたとしても咲き続けるかどうかは花によるということだろう。
「取ってきましょうか」
部下はちらりと上司の様子をうかがいながら花に目を向ける。
「いや、いいんだ……気持ちよさそうだな。
咲き誇ってほしいものだ」
「はあ……」
部下は訝しげな声を出して上司を見た。
たった一輪の花に咲き誇るという言葉は少々大げさではないだろうか。
それに、あの花は今が盛りのように見える。これからは枯れるだけで成長することはないだろう。
「足を止めて悪かった。次の予定までは少しあるな……」
上司は少し微笑むとゆっくりと廊下を歩きだした。この上司が笑顔を見せるのはなかなかに珍しい。部下は何の変哲のない花のどこが気に入ったのだろうかと首を傾げた。
「綿毛か……」
空に舞った綿毛を仰ぎながら上司はぽつりとつぶやく。その背を温かな風が撫でた。
木々たちはころころと木漏れ日を地面に落として遊んでいる。
始まりました!
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