【勇者専用スキル 進化】
リアルタイムで装備の生産を長時間待たせるゲームもあるが、このゲームはすぐに終わるタイプじゃった。
光を長時間待たせるわけにはイカンので助かった。
装備ができたわしは光に個人チャットを送って、今は『ゼロ』の噴水で待ち合わせをしている。
この噴水は『ゼロ』の街のど真ん中にあり、他のプレイヤーも待ち合わせ場所に使うようだ。
鎌はもちろんこのゲームに現状一本しか存在していないので、目立たぬよう『ゼロ』ではしまっている。
わしは意外と空気が読める魔王なのじゃ。
五分もしないうちに待ち合わせ場所の噴水に、メイド服姿の光が歩いてきた。
しかし光はわしの次にかわいいだけあって、かなり注目を浴びておるな。
わしはどちらかというと儚いタイプの美少女なので、あえて美少女オーラを出してはおらぬが。
いや、違うな。光が異常に注目を浴びている理由は――光の背負った大剣に顔みたいなのが無数について蠢いておる! 魔王軍で魔王クラスが持ってる大剣かなっ!?
近くのプレイヤーの装備が見れる機能で、ポップアップを出して光の大剣の詳細を見てみる。
【魔剣 冬虫夏草】
詳細 勇者の最初の剣。この装備は【勇者専用スキル 進化】に対応しています。
最終装備の魔剣になるかはあなたしだいです。
【勇者専用スキル 進化】
詳細 勇者は特定の装備を進化させる才能があります。
「ごめん待った?」
「い、いや、全然っ! ひ、光その剣は?」
「ああこれね。武器屋で他の剣を見てたら進化しちゃって、私にまだ使って欲しかったのかな?」
「お、おう。時に光、剣がこういうふうになったのに何か心当たりはないのかの?」
「ゾンビになったNPCを100人ぐらい倒したからかな?」
「な、なるほど」
わしは光が実はヤバいやつなんじゃないかと思ったが、光らしい理由で良かった。






