メイド服姿で牛丼を食べている光がいた
わしは光に言われた通り光のバイト先の牛丼屋に来ていた。
店の中には人払いの結界が張られており店員しかいない。
ここは光の知り合いの店だという。
「いらっしゃいませー」
店員のおばちゃんがわしに挨拶をする。
「どうも、魔王です」
「光ちゃんのことをよろしく頼むよ、イケメンのお兄さん」
「はい!」
厨房の奥に案内されると地下へ続く階段がある。
光が言うには聖なる力を持つ有力な一部の退魔の家系のやつらは、聖なる力を持つが光のような短命なものを、魔のものと同じように殺しているそうで、この牛丼屋の敷地には一定以上の聖なる力を持っている者が立ち入ると、店に通報が行くしかけがしてある。だから光は緊急時に避難できるこの知り合いの牛丼屋で働いているらしい。
地下へ続く階段を降り扉の前に立って、わしは扉を開けるのに若干の躊躇をしてしまう。
この扉の先にリアル光がいる――。
光の『最後の楽園』での姿とリアル光の姿のギャップ、わしにいたっては『最後の楽園』ではネカマじゃからな……色んなことが一瞬頭をよぎった後、わしは扉を開いた。
メイド服姿で牛丼を食べている光がいた。
「あ」
「あ」
若干気まずい雰囲気になる。
「早かったね」
「そ、そうじゃな」
リアル光の外見は『最後の楽園』での光と雰囲気は似ているが、リアル光の方がさらにかわいかった。
「光ってかわいいんじゃな――いや、ゲームの方でもかわいいが」
「え、ちょっとやめてよ」
光がどう反応して良いかわからず、照れておる。
光が牛丼を食べ終わったし、そろそろわしの城へ行くか。
「光そろそろ」
「そうだね」
わしが魔法で楕円形のゲートを開き、先に中へ入るとわしの寝室へと出た。
続いて光がゲートを潜ったのを確認してゲートを閉じる。
「リアルキャラクリの方法なんじゃが――」
「えっと裸になるんだっけ? その前に歯磨きとシャワーして良い?」
「そ、そうじゃな! いや、何か気が利かなくてすまぬ……てか、下着はつけてて良いんじゃぞ!」
ちゃんとそう伝えたはずなんじゃが、相変わらず光は脱ぎたがりじゃな。
光が歯を磨き終わり、服を脱ぐ音が生々しく聞こえてくる。
シャワーの音が少しして聞こえてくる。
ドライヤーを使う音がし、やがて止まった。
光がドアを開け、こちらへ向かって歩いてくる。
スラっとした白い足にふともも。
ピンク色のパンツにヘソ。
歩くたびにぶるんぶるん揺れるおっぱい。
ゲームのキャラと変わらず、光はドスケベボディじゃな。
それにゲームでは見たこと無かったが、光のおっぱいの先端が見える――きれいなピンク色の乳首。
えっ――!?
「ひ、光!?」
「間を取ってパンツだけで。ブラだけの方が良かった?」
「い、いや光! さすがにブラだけのパターンはまずいじゃろ色々!」
「そう?」
「そう! それにおっぱいも、好きな人以外に大した理由もなく見せるのは良くないって!」
「じゃあ私も魔王のこと好きだから問題ないね」
「そ、そうなのか?」
「うん」
「ああ何かもう! 光のことを純粋に好きな感情と光に対する性欲で、わしの心がぐちゃぐちゃになってるんじゃけど!」
「好き」
「うん、わしも好きじゃけど! もう光をめちゃくちゃに犯したくならないうちにさっさと始めるぞ!」
「レイプを自重する魔王って魔王感ないけど、私は君のそういうとこに愛を感じるし優しくて好き」
「お、おほんっ! で光、種族は何にするんじゃ? わし個人の感情としてはあまり今の光の容姿から極端に変えたくないんじゃが……」
「じゃあサキュバスで」
「さ、サキュバスか……」
「大丈夫、君以外としないって」
「もう、本当に光はドスケベじゃのう――」
光にキャラクリの魔法をかけると、光をピンクのキラキラが包み、光の耳先がとがり、口から牙が生え、背にコウモリのような羽が生える。これで光の聖なる力は消滅した。正直光が比較的、外見の人外度の低い種族を選んでくれてホッとしている部分もある。
「光終わったぞ」
「これで私は君のものだね」
「いやいやいや、わしは光は光であって欲しいからそういうのはなしで! あくまで今まで通りね!」
まあ実際光はもう人間界では暮らせんじゃろうし、わしと暮らすしかないのはそうなんじゃが……光がわしの所有物とかそういうのは違うと思うんじゃ。
「ずっと辛かったし寂しかった」
「そう――じゃな。これからは何も心配しなくて良いんじゃ」
「ねぇ城に牛丼屋作らない?」
「えぇ……牛丼屋作るのは良いんじゃが、まさか光、城に牛丼屋作って働くのか?」
「変?」
んんん――今までの光の生活環境を変えすぎても良くないし、城内に牛丼屋を作るか。
「そういえばわし、光の作った牛丼食べたこと無いしのう」
わしらのギルド『魔王軍』の牛丼オフは、魔王城の城内の牛丼屋で開催することになりそうじゃな。
「牛丼屋の名前は『牛丼屋 冬虫夏草』で」
「お、おう」




