二十億の『童貞君』か……童貞君の価値高すぎない?
さてまともな僧侶がいれば、パーティにレベル200の冥と釘がいる時点で、水竜と火竜の戦闘はもう勝負にならないのでそこは割愛させてもらうが、昼ぐらいに水竜と火竜の討伐の再募集に来てくれた僧侶の『太陽』が、討伐が終わった後にうちのギルドに入ってくれた。
「うわぁ何かオレとか初心者ヒーラーだったのに、パーティだけじゃなくてギルドにまで入れてもらって、何かすみません!」
「いやぁわしらとしてもヒーラーは貴重なんで、めっちゃ助かったんじゃ!」
「しかも男装女子! ボクと逆ですね!」
「そうなんですよー男装女子!」
「ギルド立ち上げてすぐにこれとか、お前地味に運営の才能あるな」
「まあわし魔王じゃしな」
「ところでお前、新装備作る金はどうするんだ? 一千万もあんのか?」
そうじゃった竜の牙以外の素材は冥と釘に恵んで貰ったが、まだ製作費の問題があったの。
「確かにそうじゃな。何か短時間で大金を稼ぐ方法ってあるのかの?」
待ってましたと言わんばかりに冥がわしを見てニヤニヤしておる。
「課金できない哀れなメスガキ廃人のあたしに、聖獣魔獣ガチャの当たりを売りつければすぐだな」
「聖獣魔獣ガチャってなんじゃ?」
「ああ魔王さん、プレイヤーが乗れる聖獣や魔獣のガチャですよ。オレも回したことありますけど、ぶっちゃけ当たりなんて全然出ないっすよ。当たりが何かしらの聖獣や魔獣なんですけど、ほとんどの場合回してもゴミアイテムとまでは言いませんけど、使いどころが限定された消耗品等の詰め合わせしか出ないですね」
「ぶっちゃけ太陽が言ってることは事実だ。だが当たりが出たらあたしが二十億で買い取ってやろう。あたしは優しいから聖獣や魔獣ならどれでも良いぞ?」
「は? 二十億っ!? ガチャの当たりとはいえ、そんなに価値があるものなのかっ!?」
「超レアなアイテムは取引された前例自体が少ないので、いくらが妥当な値段なのかというのは難しいところですが、ボクが知る限りゲーム内にある程度の数が存在するレアアイテムでも五億では買えないので、被りが一匹も存在しない聖獣や魔獣となればその中で人気の差があっても、最低でも十七、八億はすると思います」
「なるほどのう」
「さてどうするんだお前は? ほとんど勝ち目がない勝負だ怖いならやめても良いんだぜ?」
「何を言っておるんじゃ冥? わしは魔王じゃぞ? 聖獣はともかく魔獣なら魔獣の方からわしの方に来るに決まっとるじゃろ? 300円の単発のガチャ一回回せば十分よ!」
「お前ガチャでそれは完全に死亡フラグだぜ?」
わしが単発のガチャを一回回すと、ゴージャスなポップアップが出てきた。
「ほれ、このゴージャスなポップアップ当たりじゃろ?」
「は? お前の運どうなってんだよっ!? まあ良いや――二十億で買い取る。で、当たりでも数種類あるけど何引いたんだ?」
「ユニコーンじゃな」
「ぷっくくく――魔王なのに聖獣のユニコーン引くとかっ!」
「くっ……『メスガキにユニコーン』とか、諺にありそうじゃな!」
「メスガキが処女じゃなかったら問題だろ!」
「さすがメスガキ煽りに強いのう……」
そんなわけでわしは二十億でうちのギルドのメスガキ様にユニコーンを売ったのだった。
「で、ユニコーンの名前何にするじゃ?」
「処女厨だから『童貞君』」
「二十億の『童貞君』か……童貞君の価値高すぎない?」
「まあ聖獣や魔獣の被りはないらしいんで、ユニコーンがゲーム内に一匹しか存在しないとなると『童貞君』の価値は高いっすねー」
男装女子の太陽は普通に下ネタいけるんじゃな。
「わしも自分用にもう一回単発のガチャ回すかの。もう一回ぐらいじゃったら当たりが出るじゃろ」
「なんなんだよお前のその自信は」
わしがもう一回ガチャを回すと、ゴージャスなポップアップが出た。
「ほれ、当たりじゃ」
「まあぶっちゃけ当たりが出るような気はしてたぜ。今度はなんだ?」
「黒竜じゃな」
「おいっ! それ一番価値が高いやつじゃねぇか!」
「そ、そうなのか? わしの城にもこういうのいるんじゃが? 名前はクロにするかのう」




