アロハシャツには火耐性があるぞ!
「行くぞ魔王っ! うおおおおおお!」
夏が大剣を構えて走ってくるが、それほどスピードはない。
夏は戦士で、両手持ちの大剣を武器に選択していることから、盾が持てないという弱点があり、HPと物理攻撃力を増やすために、ステータスポイントはスタミナとパワーに多めに振っている可能性が高い。
「火系魔法 溶岩の手!」
魔王が鈍色の鎌を振ると、出現した溶岩の手が夏を追跡するように動く、複雑な動きをして溶岩の手を回避しようとした夏だったが、溶岩の手の方が速く夏を手の中に捕らえた。
「チッ! さすがにある程度はダメージが入っちまうが、アロハシャツには火耐性があるぞ!」
「拘束が目的じゃから大した問題ではないのう」
「何っ!?」
「水系魔法 泡爆弾!」
魔王が鈍色の鎌を振るとおびただしい数のシャボン玉が、溶岩の手に拘束された夏を取り囲んだ。
「爆ぜろ!」
「さすがにこれはまじぃ! 肉体強化 鋼!」
スキルを使った夏が青いオーラを纏った一瞬後に、シャボン玉の爆発が始まった。
夏が使ったのは状況と名前からして、一時的な身体強化スキルか?
これはどうなんじゃ?
夏は恐らく水系魔法に耐性が無いとはいえ、元々あやつの方がわしよりレベルが16も上、身体強化スキルを使った場合どれぐらいのダメージが通るんじゃ?
「いってぇ! こいつはかなり効いたぜっ!」
意外と夏にダメージは入ってはいるが、仕留めきれてはいない。
夏に対する溶岩の手の拘束も解けて、接近戦に持ち込んだ夏がわしの頭上に両手剣を振り下ろす。
わしは鈍色の鎌を素早く横に振る。スピードなら装備込みならわしの方が上じゃ。
「先に一発入れたとしても魔法使いの物理攻撃程度じゃ俺は仕留めきれねぇぜ! 終わりだっ!」
「PvP専用魔法 死」
鈍色の鎌に黒い炎が纏わりつき、一太刀を浴びた夏のキャラが地面に倒れた。
勝負が終わり、生き返った夏が悔しそうな表情で口を開く。
「クソッ! 負けちまったぜ! ねーちゃんなんだったんだ今のスキルは?」
「これは鎌の魔法でPvPでしか意味のない対人魔法じゃな。触れたら死ぬ。わしには夏の残りのHPは関係なかったんじゃ」
「くー……やられたぜっ! 約束のブツだ取っときな」
「悪いのう」
わしは夏から未鑑定の『魔法の指輪』を受け取った。
「そうじゃ夏、フレンド登録しよう」
「良いのか? ねーちゃん、こんな雑魚がフレンドで?」
「単にわしのスキルが初見殺しだっただけじゃ、気にするでない」
わしが夏にフレンド申請を送ると、夏がフレンド申請を承認した。




