これがわしの手のぬくもりじゃ
しばらく『アチチ』で溶岩鳥狩りをしていたわしらじゃったが、わしがレベル34、光がレベル31になったところで、光が牛丼屋のバイトへ行ってしまった。
光は気にせずレベル上げをしていて良いと言っておったが、ゲーム内でのレベルの差が開くと一緒にプレイしずらくなると思い、わしも今日はレベル上げはやめることにした。
わしは意外と気が利く魔王なのじゃ。
光がいなくなった『アチチ』から『ゼロ』に帰る前に、溶岩鳥に今日新しく覚えた魔法を一つだけ試すかの。
本当は今日覚えた魔法は二つなんじゃが、二つ目は今使う機会はなさそうなんじゃよな。
「火系魔法 溶岩の手!」
飛んでいる溶岩鳥の群れを巨大な溶岩の手が握りつぶす、溶岩鳥に火耐性があるとはいえ『マリン』のときのようにわしと敵とのレベル差があるので、気持ちよく溶岩鳥があたたかな手の中で絶命していく。
「これがわしの手のぬくもりじゃ」
「ねーちゃん珍しい武器もってんねぇ! 俺と勝負しない?」
わしの背後から男の声がする。
「PvPがしたいんなら不意打ちで良かったじゃろ?」
振り返ると大剣を持った標準体型の男がいた。
アロハシャツを着ておるが、これは恐らく男版の火耐性の服じゃな。
「俺は『夏』レベル50の戦士、ねーちゃん見たところレベル34の魔法使いだろ? さすがに不意打ちはねぇ」
「意外と紳士じゃの。じゃが勝負をするのであれば何かを賭けないとつまらんのう」
ああ! 対人戦! 対人戦じゃ! 邪悪な魔王の血が騒ぐっ!!
「じゃあこうしよう。ねーちゃんは俺よりレベルが下だし何も賭けなくて良い。ねーちゃんが勝ったら未鑑定の『魔法の指輪』をやるよ。どうせ戦士の俺には装備できねぇし、鑑定すんのもめんどくせぇしな」
「ほお! 初対面の女にリングとはのう。おぬしわしをナンパしておるのか?」
わしは男じゃが。
「あ、いや、ちげぇ! これはそういう意味じゃねぇ! たまたまだっ! 今たまたま持ってる賭けれそうなもんが、これだっただけだっ!!」
本気で照れておるところからして、リングはナンパ目的じゃなくて本当に偶然のようじゃな。
「良いじゃろ夏。わしは魔王。勝負じゃ!」




