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そうしてお姫様は、

時計草の花園

作者: 東亭和子

 私が迷い込んだのは時計草が咲き乱れる花園だった。

 花園の入り口は開かれていた。

 私は誘われるようにこの花園に迷い込む。

 たくさんの時計草が咲く様は美しい。

 私は花園を一人で歩く。

 ここには誰もいないようだった。

 心地よい風が吹く。

 私は目を閉じてゆっくりと息を吐き出す。

 ああ、ここはとても素敵な場所だ。

 ずっといたいと思ってしまうような。


「おかえりなさい」

 急に声をかけられて私は驚く。

 にこやかな青年が立って私を見ている。

 誰だろうか?私は彼を知らない。

「上手くいきましたか?」

 青年の言葉に私は首を傾げる。

「あれ、上手くいきませんでしたか?」

 残念そうに青年は言った。

 上手くいくとか、いかないとか意味が分からない。

 私の混乱を察したのだろう、青年はじっと見つめるとため息をついた。

「そうか。忘れてしまったのですね。それでは仕方ありませんね」

 そう言うと青年は近くに咲いている時計草に触れる。

 それを見た瞬間に私は思い出した。


「一度だけ時間を戻すことが出来ますよ。

 但し、一度だけです。それを有効に使って下さいね」


 そう青年は言ったのだ。

 そして私はやり直すために戻った。

 けれど戻った私は全てを忘れていた。

 同じ過ちをまた繰り返してここに帰ってきたのだ。

 私は深いため息をついた。

 もう一度戻ることが出来たら、今度は上手くいくだろうか?

 私は青年をじっと見つめる。

 だが、青年は願いを叶えてはくれないだろう。

 青年はゆっくりと微笑んだ。

「時間です。さぁ、行きましょうか」

 差し出された手を私は握る。

 青年の導く先に何があるのか私は知らない。

 それでも着いて行く以外の選択肢はないのだ。

 私は諦めて青年と共に時計草の花園を歩いた。


その先には…


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