表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

天霧夜vsジル・ブラッド(刀、斧要素あり)【戦力差1:9】

霊装──それは一部の人間が持つ強力な武器。

雷を発する斧の霊装を持つ男──ジル・ブラッドに、高い戦闘技術を継承し続けた天霧家の少年が、たった一本の刀で挑む。


視点:天霧夜

戦場:屋敷のホール

ポイント:格上の相手に立ち向かうには──

 

 鞘に手を当て、ジルへ駆ける。



 俺の腰に携うこの刀は、俺の家に伝わる名刀──【天之叢雲(あまのむらくも)


 その切れ味は霊装に引けを取らない。


 霊装の普及化で名刀の価値は鑑賞用に落ちてしまったが、【天之叢雲】は今尚、他の霊装に対抗できる稀有(けう)な刀だ。



 ジルは数多の実戦を潜り抜けてきた歴戦の戦士。

 搦手を使った所で簡単にいなされてしまうだろうし、全力でぶつかった方がまだ勝機があるだろう。


「俺とまともに立ち会って、立っていられる奴はなかなかいないんだがな」


 そこで背中に手を伸ばし、斧を掴むジル。

 もうすぐ俺の射程圏内に入ろうかという距離で──


 俺はある技を使う。


「【集眼(ゾーンアイ)】」


 その瞬間、俺の世界から音が無くなる。

 

 ──天霧流戦闘術【集眼(ゾーンアイ)


 人間は自ずと集中力を分散して生きている。

 それは周囲の危険を感じ取り、即座に行動する為の生存本能だ。


 【集眼(ゾーンアイ)】は生存本能──周囲への注意力、聴覚や味覚といった感覚を一時的に遮断し、視覚から得られる情報処理能力を爆発的に強化する技だ。

 他の五感を完全に捨て視覚に一点集中する事で、視覚内での情報処理能力は通常時の十倍を超える。


 視覚外からの攻撃に対処出来なくなるというデメリットはあるが、視界に捉えてさえいれば、【集眼(ゾーンアイ)】状態の俺は無類の強さを発揮できる。



 視線、構え、筋肉の動き──


 ジルを攻撃へと転じさせる要素を視覚内で全て計算し、ジルの攻撃を俺の未来と結合。


 そこから予測されるジルの攻撃地点。


 ──地面だ。


 一点に集中力を集めたせいで時の流れを遅く錯覚している俺は、その真意を深く探る。


 ジルの霊装が雷を纏うものだというのは知っている。

 その情報を加味した上なら、地上に電気を流し、俺の動きを封じる位の事は想定出来る。


 このまま地を走り、ジルに突撃するのは危険だろう。


 ──なら!


 斧が地面に接触する直前、俺は地面スレスレを跳躍する。

 足と地面との間は10cmも無い。

 この方法なら勢いを殺さず、かつ予期せぬ攻撃を避けられる確率が一番高い。


 更にこの距離なら、鞘から抜いていなかった【天之叢雲】の抜刀タイミングとしても最適だ。


 だが──


『読みは悪くねぇな』


 ジルの口はそう動いていた。


 斧が地面に触れたその瞬間──


(……何も無い?)


 何も起こらなかった。

 

(焦るな、ジルの考えを読み取れ……!)


 斧の叩きつけられた地面を確認するが何も無い。

 

 再び正面を向くと──


「な!?」


 ジルが消えた。

 そこには彼の斧が刺さっているだけだ。


 跳躍と抜刀の勢いを止めきれない俺は、地面に突き刺さった斧の柄を、身体を捻って回避する。


 霊装は絶対に壊れないという性質を持つ。

 ここで柄に切りかかって【天之叢雲】の刃を傷付けるよりは回避した方が良い。


 そう判断しての行動だったが──


「ぐっ!?」


 一連の行動全てがジルに読まれてる事を、背中に加えられた凄まじい衝撃で察した。


「いい気迫だったが……まだまだだな」


 俺の意識はそこで途絶えた。


やはり経験が一番。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ