アストリアvsガルナス(大剣、ナイフ、魔法要素あり)【戦力差6:4】
翼を手に入れ、空を飛ぶ事が出来るようになったアストリア。
力を隠していた部下が、そんなアストリアに全力で挑む。
視点:魔族の少女 アストリア
戦場:屋内
ポイント:必殺の一撃を決める。
真後ろから声が聞こえ、咄嗟に右方に跳ぶ。
「チッ!」
すると私の左胸があった辺りに、ナイフの刺突が繰り出されていた。
何とか咄嗟に対処出来たわね……
「【火の銃弾】!」
すぐさま私は魔法を撃ち込む。
でもその魔法はあっさり回避され、逆に距離を詰めてくるガルナス。
「らぁぁっっ!!!!」
再びナイフによる刺突──
と思いきや、今度は腰に提げていた剣を私に振るう。
(危、ない!)
何とか大剣の柄でそれを受け止め──
「まだだアストリアァ!」
「くっ……!」
鍔迫り合いに入る。
私の身体能力が魔力で強化された今、鍔迫り合いを優位に持ち込めるのはこちら側。
(押し込むっ……!)
私はこの展開をチャンスと判断。
ここで攻めきるっ……!
「ハァァァ!」
「くっ……らぁ!」
──が、ガルナスは体勢を維持したまま、私の鳩尾に鋭い蹴りを放つ。
(まだ、避けれる!)
その一撃は身体をひねって回避。
ガルナスは人体の急所を的確に狙ってくる。
途轍もない技量ね……【強化:動体視力】をかけていて正解だったわ。
お互い、一旦距離を取る。
「貴方、実力を隠してたわね?」
「色々と事情があってな」
突然、姿が消える。
しかも気配が察知できない。
私の気配察知能力は、多くの実戦からそれなりに高い自負がある。
どんなに敵の気配遮断が上手くても、遅れて追うくらいは出来た。
でも何でだろう。
気配を追うことができなくても──
「左っ!」
何となく、敵の位置が分かる!
「なっ!?」
私は大剣を左に大きく振るう。
その一撃は剣で防がれてしまったけど、身体能力強化が施された今、ガルナスを吹き飛ばすにはそれで十分。
「っらぁ!」
勢いを殺すため、地面に突き立てられた彼の剣が火花を散らす。
再び仕切り直し。
(今の感覚……何?)
なんで気配が掴めないのに、敵の位置が明確に分かったの?
私はこの戦いの当事者だけど、それなのに別の視点からも戦いを見ているような不思議な感覚。
今度は視点を向ける事もなく、大剣でガルナスの攻撃を弾き飛ばす。
ある程度、相対して分かった事がある。
敵との実力差はほぼ同等。
火力はこちら上だけど、向こうは手数が段違い。
おかげで攻め切ることが出来ない。
「後ろっ!」
──ギィン!
「くっ……どうして分かる!」
大剣と剣での攻防が延々と続く中、私は考え続ける。
どういう訳か別の視覚から戦いが見れている私には、現状スキが無い。
ある程度なら大胆な攻撃を仕掛けても大丈夫そうね。
そして、ガルナスの瞬間移動じみた死角への移動方法──
魔法を唱えた様子は無かったし、ただの技術だと私は推測する。
そういえば、何かの本でそういう歩法があるって記述があった。
だとしたら、その歩法をなんとか封じて私の出来うる最大火力をぶつけられれば、終わりの見えないこの戦いに、勝機を見出だす事ができるかもしれない。
歩行を防ぎつつ一撃で仕留めきれる方法──
「やってみるしかない!」
「何をだぁ!?」
再び、背後からの急襲。
でも、それは見えてる!
急襲のタイミングに合わせて地面前方に手を着き、相手の顎に踵を振り上げる。
結構無理体勢だ。
そのせいで肩は痛めたけど──
「カ゛ッ゛!?」
リターンは僅か数cm宙に浮いた敵の身体。
──それで十分!
浮いた身体に対し、下から攻撃を叩き込む。
防がれたけどそれで良い!
「ァァァァァァァァァァァアアアアアアア!!!!」
私は全身の力を使って、ガルナスの体を空中へと吹き飛ばす。
「っっ!!」
痛めた肩が更に痛む。
──だからどうした、そんな理由で私の流れを止める必要は無い!
そして、次の一手は賭け。
だけど、せっかく掴んだチャンスなんだ。
絶対に成功させてみせる!
「【飛翔】!!」
私の足が地面を離れる。
(この翼、馴染むわ……)
空中に躍り出た私は、重力に遵うガルナスの上に移動し、全力で大剣を振り下ろす。
空中なら歩くどころかまともに動けないだろうけど、こっちは空中でも自由に動ける。
お互いの実力が拮抗していた今、空中で有利なのは私。
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
「【物理防御】!」
防御魔法のおかげで、私の斬撃はガルナスに届かない。
──でも、本当の目的はそれじゃない!
「まだ、私のターン!」
防御魔法の上から地上へとガルナスを弾き飛ばす。
「くっ、【風】!」
勢いを弱める意図で、逆方向に【風】が放たれる。
だけど、ガルナスを地面に少しでも硬直させればそれでいい……!
私は魔力をため続けていた。
──確実に攻撃が当たるこの瞬間に、最大火力の魔法をぶつける為。
避ける時間は与えない!
空中に浮いたまま──
「【地獄の炎】!!!!」
「…………!」
──地獄の炎を召喚した。
凄まじい熱量が地面に衝突し、衝撃と共に蒸気を発生させる。
「がっ、はっ……!」
ガルナスが倒れたのを見て、私は地面へと降り立った。
肉を斬らせて骨を断つ。