プロローグ
初めて小説というものを書きました。
プロローグ一つにどれだけ時間をかけるのかと文才の無さが目立ちます。
西暦20××年 世界的に起きた不況により犯罪率が増加。相次ぐ混乱に政府は対策を余儀なくされる。それに伴って政府が考えたのが"CD-R機関"の設立。それからの動きは迅速なもので活動が可能になるまで数年も掛からなかった。
"Containment(収容)"
"Deterrence(抑止)"
"Repair(更正)"
その頭文字を取って作られた機関は瞬く間に犯罪組織を取り締まって行った。しかし、時が経って落ち着きを取り戻したと安堵していた人々のもとに衝撃がもたらされることになる。かの機関をもってして捕らえることが出来ない集団が現れたのだ。
"紅の魔瞳"
リーダーと思わしき人物が赤い目をしてることから機関が付けた通称だがなんの前触れも無く突然現れた集団は僅か2年という短い期間でその名を知らない人はいないまでに世界に影響を与えた。
それから数年、政府はそれらに対して対策に追われることになる。だが、人々が恐怖する中ある日を境にその集団が忽然と姿を消しのだ。現れた時と同じで突然になんの前触れも無く。
それでも不安は拭いきれない。されど一先ず事態は収束に向かったと...思っていた。
(俺がこの腐り切った世界を変えてやるよ。だからお前らも俺に付いて来い)
(ああ!慈蓮!ようやくだな!もちろん行くぜ!)
(当たり前じゃない慈蓮。どこまでもあなたについていくわ)
(暁。今まで君の言ったことに間違いはなかったからね、僕も行くよ)
(私も行く…。少し不安だけど…慈蓮が…みんながいれば大丈夫だよね…?)
これはいつの記憶だったか。
昔、俺は何でも出来ると思っていた。自分に不可能はないと。事実やろうとしたことは全部実現させ不可能と言われたことも可能にしてきた。だから、みんな付いてきてくれたしそんな自分に自信もあったのだ。そう、あの出来事が起きるまでは...。
「...番!起きろ!」
怒声で目が醒める。随分と昔の夢を見ていたようだ。しばらく見ていなかったあの時の夢を。
忘れていたはずの記憶を無理矢理思い出されたようでとても気分が悪い。そんな暁に再び怒声が聞こえてきた。
「695番!起きろと言っている!!」
「うるせぇよ、もう起きてるって」
見ていた夢の所為でぼんやりする思考の中、声のする方に顔を向けながら返事をすると見慣れた鉄格子の向こう側で暁を見降ろしているのは看守だ。どうやらいつもよりイラついているようだ。そんな看守に暁はさっき見た夢を考えないようにしながら
「普段ここになるべく寄らないようにしてるくせに今日はいったいなんの用だよ」
そう投げやりに言うと、看守はさらに顔を歪めしかし、先程より幾分かマシになった声量で話しだした。どうやら今から話す内容がよほど気に食わないらしい。
「お前に特例で面会だ。あのような方が何故お前のようなやつに...!」
「俺に面会...?物好きな奴もいたもんだな誰だ?」
「ふんっ、付いてくればわかる!さっさと立て!」
「だからうるせぇよ...至近距離で喚くな、頭に響く」
そう言って立ち上がった暁に殊更イラついたような看守が暁の両手首に手枷をはめていく。
見た目こそ普通の手枷だが、戦車で踏んづけようが銃弾をぶっ放そうが傷一つ付かないその頑丈さは折り紙付きだ。まぁ、やりようはいくらでもあるわけだが。
「わかってると思うが間違っても妙な真似はするなよ。面倒事はごめんだ」
決して考えが伝わったわけではないだろう。念を押してくるがそんなこと言われるまでもない。面倒事を避けたいのは同じだ。
「わーってるよ、そんな意味も無いことするか」
大人しく看守に付いて行くこと暫し、この殺風景にはどうも似つかわしくない立派な両扉の部屋の前に着いた。
「こんな部屋なんてあったんだな」
看守にそう聞くと滅多に使われないが特別な場合に使われる部屋だとか。
「少しここで待っていろ」
看守が扉の向こうに消える。程なくして中から女の声が聞こえてきた。
「入りなさい」
扉を開けて中に入るとそこには先ほどの看守とその横でスーツに身を包んだちっちゃい女がアンティーク調のデスクを挟んだ向こう側で椅子に座りながらこちらに視線を送っている。その大きさは椅子の方がデカく見えてしまうくらいだ。
とは言っても年齢は20後半だったはずだがぱっと見未成年ですと言われても信じてしまうだろう。しかし、内から出る雰囲気と有無を言わせない視線はなるほどここに居ても違和感はないかもしれない。髪は黒色でショート目の下の泣きぼくろが特徴だろうか。何はともあれ
「なんか聞いたことある声だと思ったらそうか物好きはアンタだったか」
面識ある奴だったわけだが、その姿は昔会ったときと全く変わりがない。ほんとうに人間か疑わしいところだ。
「貴様!口の聞きかっ...」
思わずと言った様子で看守が口を挟もうとするがちっちゃい女―――多々羅 礼華は遮る様に看守の方へ手をやりながら「構いません」と言った後姿勢を正しもう一度暁の方に向き直してから
「お久しぶりですね、暁。7年ぶりくらいでしょうか。ここでの暮らしは慣れましたか?」
「お陰さまでな。てかもうそんなに経つのか早いもんだ」
看守が「いや、しかし...!そんな訳には!」とかなんとか言ってるが2人とも無視だ。聞いてるだけ時間の無駄と言うもの。
「で?俺になんの様だ?」
だるそうにしながら本題に入ろうとした暁に礼華は少しだけ表情を緩めて
「せっかちな男は嫌われてしまいますよ?」
「…まさか、世間話しをしにきた訳じゃないだろ?さっさと要件を言え」
礼華は少し間を置いて「それもそうですね。でもその前に」と視線を少し下にずらし
「それ窮屈そうですね。外して構いませんよ」
慌てて看守が何か言ってるが全部無視する。
ちなみに"それ"とは手枷の事だ。ただし、外して構わないと言ったのも暁に対してだし礼華が看守に指示を出す素振りもない。
そんな様子の礼華に暁が肩を竦めて隣のなんとも言えない顔をしている看守を見ながら言う。
「鍵がないんだから開けられないだろ。そこのやつに外すよう言ってくれよ」
「必要ですか?」
「当たり前だろ、鍵が無かったらこんなん外せるか」
そう言う暁だが礼華は確信してるようだ。
その必要はないと。
暫し、無言で見つめ合っていた2人だったがはぁ、と諦めたようにため息をついた暁が徐に手首を捻るとゴトッと普通しないであろうそんな音を立てて手枷が床に落ちた。
看守は驚くが礼華は何故か納得顔だ。
「流石の手際ですね、お見事です」
「それお前が言っていいのか?」
暁が手首を摩りながら胡乱な視線を送って言うがまあ、少なくとも彼女が褒めていい事では決してないだろう。ともあれ、もともと面倒事を避けるために外さなかったのだ。それも許可がおりたのなら願っても無い話。何故ならその手枷クソ重たいのだ外せるのなら外しておきたい。
納得はいってないようだが仕方なくといった感じで手枷を回収してる看守を尻目に礼華がでは改めてとここに来た経緯を話し出した。
「まず、最初に。暁はCD-Rをご存知ですよね?」
もちろん、知っている。寧ろ知らない奴の方が珍しいだろう。暁は頷くことでそう伝える。
それを見た礼華が「そうですよね、では」と指を立てて続ける。まるで教師が生徒に教えるように。
「その機関が新しい計画を立てていたことは?」
「知らないな。こんなとこにいて情報もクソもないだろ、そもそも興味もない」
そう言うと礼華の顔が少し曇った気がした。まあ、一瞬のことだが。すぐにそれを取り繕うように表情を戻して
「そんなこと言わないでほしいですね。まあ、聞いて下さい。その計画というのは...」
礼華が言うには国民が一時の平和を鵜呑みにしてこのままなにもしないでいいのかと政府に訴え出たらしい。もちろん、政府としても何もしていないわけではない。居るだけでそれが抑止力になっているし犯罪率も年々減っているのだから。とは言ってもそれで国民が安心するわけも無く政府のお偉い方の重い腰があがったとういわけだ。
その新しい計画と言うのが一から犯罪組織を捕まえるための学生を育てると言うもの。その計画が出たのが四年前、すでに学園は出来上がっていて生徒数も徐々に増えているらしい。だが、ここで問題になってくるのが...
「生徒に対して教える教師が足りません。CD-Rの人員をすべて投入することはできませんし、そんなことをしては元も子もありませんからね」
そういうことだ、年々増える生徒に対して圧倒的に教師が足りていない。全員を投入するとなると守りが手薄になってしまうし、かと言って適当に教師とするわけにもいかずある程度有能となるともちろん限られてくる。
そこまで礼華は言うと暁から一度視線を外すし深呼吸をしてからまた暁に向き直る。その視線はとても力強い改めて何かを決意したときのような。
「そこで、です暁。その学園であなたに教師をやってもらいたいのです」
「…は?」
暁から間の抜けた声が漏れた。その礼華に向ける視線は言わずもがな何を言っているのかと。
ここがどういう場所で俺がどういう人間か知らないわけではないだろうと。
看守が「それは...!?」と声をあげる。どうやらこのことは知らされていなかったようだ。それもそうだろう。言われていたら止めている決まっている。言ったからといって礼華が止まるかは別の話だが。
またもや割り込もうとした看守に今度は視線だけでそれを止めると礼華は続けた。
「もちろん、あなたがどういう人か知っていますし私の様な立場が言ってはいけないこともわかっています。ですが...」
暁は無言のまま何も答えない。
話の続きを待つ。
「ですが...どうかお願いできませんか...?私たちCD-Rをあなたは幾度となく搔い潜ってきた。にも関わらずあなたは...あなたたちはこちらに負傷者を出したとしても死傷者を出したことは一度もありません。それがどれだけ凄いことかわかりますか?だから..."暁 慈蓮"。あなたが持ってるその知識と経験を生徒に教えてあげてほしいのです」
暁がそんな面倒なことしてられるかと断りを入れるため口を開きかけた時、「それに...」と礼華が遮るように言葉を挟む。
「7年前私たちの前にお一人で投降してきたときあなたはとても疲れたような何かを諦めてしまったような顔をしていました。あなたに何があったのかはわかりませんし、あなたが何をしたかったのかもわかりません。しかし、そのしようとしたことはもう実現できないのでしょうか。諦めてもいいのでしょうか」
暁はその言葉を聞いて目を見開らく。
それはかつて暁が一度諦めそうになったとき同じようなことを言ってくれた人がいたから。
状況はあの時と全く違う。不可能なことはあるんだとわかった。なにより自分にはなんの力も無いと。だが、それでも...
暁の様子を見ていた礼華は続ける。
「こちらと手を組めばやれることが広がると思いませんか?少なくとも私はあなたをサポートしますよ。限度はありますが...すいません立場的に」
礼華が申し訳無さそうに俯く姿を見ていた暁だったが何かを考えるため視線をずらすその先に何を見ているかはわからない。だが、それもすぐに考えるの止めると
「わかった」
短くそう言った。その言葉を聞いた礼華がここで初めて緊張を解くと相好を崩した。微笑んだその顔は容姿の所為でさらに幼く見えてしまう。
さっき断ろうとした手前妙に気恥ずかしい。バツが悪くなった暁は礼華から視線を外して自分の頬を掻きながら
「そもそも俺に拒否権はないだろ。
ここに居るより退屈しなさそうだしな生徒の方には気が向いたときに適当に教えてやる」
言葉がなんとも言い訳がましい。
照れ隠しだろうか。そんな様子の暁を見ていた礼華は思う。どうも悪い人の様には見えない。あの集団を率いていたのには何かしなければならなかった理由があった筈だと。
暁が投降してきたとき事情聴取をしたのは他でもない礼華だ。その時も思ったからこそ当時の彼が問答無用で死刑になろうとしてたところその意見を跳ね除けまだ利用できる筈だと説いたのだ。
そして、学園の話が出た時すかさず暁を教師として推奨したと言うわけだ。上の圧力に抵抗しどれだけ彼が必要かを分からせる為に今の時間まで掛かってしまったが。
「とりあえず、それで構いません。こちらとしてもやる気が出るよう出来るだけのことはしますよ。それと学園に向かうのは1週間後になりますので」
「ああ、わかった。仮にも折角の自由だしなそれなりに頑張るさ」
「はい、よろしくお願いしますね」
そう言って微笑む姿はやはりここにいるには些か可愛いが過ぎるかもしれない。
「まあ、そのなんだお手柔らかにな」
礼華を見ていられなかった暁がそっぽを向いてボソッと呟いた。その顔に僅かな笑みを浮かべながら。
書いていてこれもあれもと後から追加したら長くなってしまいました。なんかプロローグにする話じゃないかも...みたいなことを思いながらもつい書いてしまった。
次話からは少し短くしていきます。
読んでくれた人はわかると思いますがとても拙い文です。上手く書けるように頑張りたい!!
投稿は不定期で話が思い付いたらになっていきますがこれから宜しくお願いします。
誤字脱字ありましたら報告待ってます!