アデルと灰とヴェルマス
…これで…少しは無念を晴らせたかな?
少年は…足元の大量の灰に対して呟くー
勿論返ってくるのは静寂のみ
少年は思考を巡らせるー
…まだだ…きっとアイツの仲間が居る
全員…罪を償わせなければ…
しかしー
これが計画されたものであったなら
今から、アイツの仲間が
様子を見に来るだろう…
そこで皆殺しにしてしまいたいが…
相手の戦力が分からない以上は
得策じゃない
それに…アリシアの記憶では
人族というのは脆弱な種族であるはず…
覇王の…ユリエの遺物を
持っているのは何故だ?
あれはレオに預けられた物のはずー
レオが死んだとき手に入れた…?
何か…裏に今回の事を操っている
黒幕がいるはずー
…何にしてもここに
このまま留まるのは危険だろう
先ずはここから出て戦力を増やさないとな…
しかし…その前に
アデルはそこまで考えー
自身の足元一面に広がる灰を眺め
ーこいつらをこのまま
放置しておきたくないな
そう思い
【贈与】の指輪にある
保存境域全てを使って
灰を一つ残らず回収した
そして…誰も居なくなった国を眺めー
告げる
ー直ぐに戻ってくる
アデルはゆっくりと振り返り
巨大な門に手を伸ばす…
重厚な質量感を持つ門が
重々しい音をたてながらも開いてゆくー
…行ってくる
こうして…
アデルは…
アデル=ヴェル=ブラッドは
ヴェルマスを出た
ここから世界は
混沌とした時代を迎えることとなるー