いきなり修羅場
身体を押され、巨大なリングの中へ飲み込まれてゆく
リングの先は漆黒に染まっており、
どこへ繋がっているのか検討もつかない
まぁ、異世界の何処かである事は、分かっているのだが。
咄嗟に振り返り押した張本人を見る
超満面の笑みを浮かべ、手を振っている。
普通に見れば可愛らしい笑みなのだろうが
今の俺からすると、見ているだけでぶん殴りたくなる顔である…
とりあえずこの胸の中に渦巻く怒りの感情をぶつけてみようと思う。
「ふざけるなよ!俺はお前を神とは認めねぇからな!お前なんて自称神(笑)で十分だぁぁぁ!」
ふむ、少しだけスッキリしたな!
少し冷静さを取り戻し、ゆっくりと周りを見渡す
そしてそこでようやく気づく
そこがもうだだっ広く何も無い部屋ではなく、
高い天井に、
繊細な彫刻を施された壁、
床には美しい朱色の絨毯が敷かれている
如何にも王室という造りの部屋に変わっている事…
目の前にいるのが、あの馬鹿でなく、
金髪紅の目をした、美しい少女に変わっている事…
そして何よりも、
いつの間にか武器を構えた屈強そうな兵に周りを囲まれ、
槍を突きつけられている事…
とりあえず、
大体の状況を理解した俺が最初に行ったことはといえば
ー土下座
である
それはそれは見事な土下座であったのだが、
残念ながらそんな文化はなかったらしい…
「き、気をつけろ!何らかしらの攻撃姿勢やもしれん!」
「姫様を守れ!自らを盾としてでも守るのだ!」
とか、酷いパニック状態になってしまったのだ…
顔をあげようにも、
「次動いたら、即座に刺せ!」
という命令をされたため、動くことも出来ないのだ…
そんなこんなで、パニックが収まるまでの10分間、
俺はずーっと土下座し続けるはめになった
10分と聞くと短いと思うかもしれないが、意外とキツイ。
10分後ーようやく落ち着いたのか、
「両手を上げて、ゆっくりと立て!妙な行動を起こすなよ!」
ーと命令される。
…いやいや、こちとら意味足が痺れてて、
そんなことできないんですが…
そんな事を思い、動けずにいると、
「何をしている早く立て!」
と怒鳴られた…
そんな無茶な…と思いつつも、
このままでは刺されてしまいそうなので、
言われた通り手を上げ、
ゆっくりと…ゆっくり…ってやばい意外とキツイ
せ、せめて手を使わせてくれー
とか内心めちゃくちゃ焦りながらも、
なんとか立つ…
謎の達成感を味わう事になった…
まさか、立つだけでここまでの達成感を味わう事になるとは…
こうして俺は一つの危機を…
ってまだ何も解決してなかった…
そう溜息をつこうとする…その瞬間
「今だ!拘束しろ!」
唐突に周りに居た衛兵が俺に飛びかかり拘束する。
俺が最初に思ったのは、なら立たせなくてよくない?
ーだった、
さっきの達成感を返せ!
そう思いながらも目の前の姫と呼ばれている少女を見上げる…
どうやら俺の運命は彼女によって決められるようだ。