ベイラの使者
その日もヴェルマスには平穏な時間が流れていたー
アリシアはいつもの業務を済ませながら、
18:00になるのを待っていた…
…16:00か、後2時間程でアデルに会いに行けるな。
そう考え、浮かびそうになる笑みを噛み殺す。
イカンな…どうにも最近表情が緩み易くなってしまっておる。
そんなことを考えていたアリシアの目の前では
いつもの会議が執り行われていたー
「西方、東方諸国共に動きはありません。」
「本日の隣国との取引は、大きな問題なく終了致しました。」
いつも通りの退屈なーそう考えかけたアリシアの思考を
「しかし…その際に…」
という言葉が遮る
報告をしていた幹部の一人は言いづらそうに言葉を続けるー
「『本日中にヴェルマスに使者を一人遣わせる。』と
…そうベイラの王より一方的に告げられまして…」
「あまりにも急な話であった為、断ろうとしたのですが全くとりあってもらえず…アリシア様申し訳ございません…」
悔しそうに幹部の一人はそう告げるー
アリシアは、
人族のベイラの王に
そのようになめられた態度をとられた事を
不快に思いながらも、
ユリエの言っていた事を思い出していたー
皆と話し合わなきゃダメだよ!
そうしなきゃ仲良く出来ないからね!
そしてアリシアは決意する…
「良い、その使者とやらに会ってやろう。」
アリシアはそう告げた。
直ぐに報告をしていた幹部が玉座の間より出て行き、
どうやら既に到着していたらしい
ベイラの使者を連れて戻ってくるー
呼びに行った幹部から少し遅れて
玉座の間へと入ってきたベイラの使者は
切れ長の鋭い目に
少し長めの茶髪がかかっていて
その下には筋の通った鼻が真っ直ぐと伸びている、
白い聖衣に身を包んだ20歳ぐらいの青年であったー