我が主、我が親友
少しの間、
思い出に浸っていたアリシアは気を取り戻し、
目の前の少年へと視線を移す。
ーイカンな…この小部屋にいるからか、
少年の姿が、我が主と被って見えてしまう…
アリシアは、
そう考えながらも今度は自身の疑問をぶつけてみる…
「次は、私から聞かせてもらう。」
「ソナタには魔力が一切無い。」
「そのうえ所有アビリティも種族スキルも無い。」
「ソナタは一体どんな手を使い私の目の前に現れたのじゃ?」
ーと
すると少年は少し考え
顔をしかめつつこう語る…
「神と名乗る少女に、無理やり転移させられて…。」
「気がついたらいつの間にやらあの場所に…。」
アリシアは、その言葉に驚愕する…
ー…ありえない…
他人を転移させるなぞは、
膨大な魔力を必要とする…
しかも我が国の魔導結界をすり抜け、
あの場へと転移させるとなると…
私は、それが出来る者を一人しか知らぬ
この世界の統一者、
数多くの種族を従えた、
偉大なる我が主、
我が親友ー…
ユリエ様以外いるはずが無い。
アリシアは、
その可能性に考えを向ける…
しかしすぐさま、自ら否定した。
ー…それは無いな。
何故なら彼女は…ユリエ様は…
600年前にはもう死んでいるのだからー
そう考えアリシアは寂し気な表情を浮かべる…