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ないチチびいき  作者: クロード・フィン・乳スキー
新世代篇 後編
70/80

(貧)NEW GENERATION 第25話 板橋まなまの敗北

「おかしいな。何だろう」


 違和感の正体を確認しようと、再び彼女を注視してみる。


 今山ハルヒメが寝返りを打ってこちらを向いた時、彼女の胸についているものが、揺れた。ああ揺れた。揺れていた。どう見ても柔らかそうに揺れていた。ふやんふやんだった。


「ちょっ、えっ、なんか、胸、でかくない?」


「ん、誰、ですか」とハルヒメは目を開いた。


 誰とはこちらのセリフだ、と板橋まなまは思った。


「わたしよ。板橋まなま。あなた、ハルヒメ……よね?」


 今山ハルヒメは起き上がりながら、


「ああ、お胸育て部の部長さん。どうしたんです? ここ保健室っすよ?」


「どこか悪いとかじゃなくて、えっと、あなたに会いに来たのだけれど……本当にハルヒメ?」


「ん? なんでそんなこと……」


 ハルヒメが首をかしげながら、まなまの視線が自分の胸に注がれていることに気付いた。


 そこには、普段は見せていない双丘があった。


「ッ、ハッ、やば、油断した……ッ」


 あわてて胸を隠したものの、手からこぼれるほどの大きさであった。


「その胸、どういうことなの? ちゃんとおっぱいしてる。盛っているようには到底見えないし、一時的に腫れてしまっているわけでもない……。本物よね……」


「これは……その……」


「カクシコやミユルが、偽りの胸の大きさを振りかざしてハルヒメを煽って苦しめてる光景を見たことがあったけど、あのときの悔しそうな態度って、まさか演技だったの? 普段の貧乳は仮の姿? 極限まで強くおさえつけて、胸の小さな後輩を装っていた?」


「フゥ、こうも間近で見られてしまっては、仕方ないっすね。そうです。自分は巨乳っす」


「まさか、そんなことって……」


「今山家の一族には、貧乳の呪いがあると言われてきました。でも自分は、奇跡的に普通に巨乳なんすよね」


「二人は知っているの?」


「カクシコ先輩も、ミユル先輩も、このことは知らないです」


「悪いことは言わないから、絶対に隠し通したほうがいい」


「その感じだと、黙っててくれるんすね?」


「もちろんよ。あなたが隠れ巨乳だって知ったら、二人が何をしてくるか、わかったもんじゃない」


「今の人間関係が壊れるのは嫌っすね」


「ないちち賞賛部から出て行けって言われて、いやがらせされるかも」


「まさか、そんなことないと思いますけども、でも先輩たちが何かしてきても、胸を撫で回して反撃するので、大丈夫っす」


「んん? 胸を、撫で回す……?」


「あ、やりましょうか? まなま先輩の胸も、自分の好みに近い貧乳なので、よろしければ是非とも」


「全力で遠慮するわ。ごめんだけど」


「残念です。でも、黙っててくれるなら、まなま部長の貧乳オブ貧乳をなでなでするのは、やめてあげようと思います」


「ねえ、ちょっと待って。さっきから貧乳貧乳って、やめてくれない?」


「えっ、何故っすか。いつも周りのみんなから言われてるじゃないっすか。うおるも許されてるし、ひので先輩も、まなま部長を煽らない日はないですよね」


「なんだろう……貧乳から言われるのは、まだいいのよ。でも、巨乳の人から貧乳って面と向かって連発されて、いま、わたし、普通にまじで傷ついてる」


「あっ、なんか、ごめんなさい」


 板橋まなまは、身の回りに巨乳が少なかった。だから精神の安定を保っていられたのだ。しかし、貧乳だと思っていた後輩が、突如として巨乳を見せつけてきたことで、完全に心が折られてしまった。


「わたしの負けかなあ、これ」


 いったい、何と戦っていたのか。


 板橋まなまは、もし自分がハルヒメと同じ境遇に陥ったら――本当は巨乳なのに貧乳を装わざるをえず、先輩二人から偽乳で巨乳マウントをとられるような屈辱的状況に陥ったら――きっと耐えられないと強く思った。


 そこには、いつも悩みや苦しみがあるだろうに、今山ハルヒメは、まったく気に病むこともなく、秘密を抱えながら暮らしているのだ。


 今山ハルヒメは首を傾げる。


「負けって……。何かあったんすか、自分でよければ、相談のりますよ」


 板橋まなまは、ひとつ大きな溜息を吐き、


「わたしって、悩みがないのが悩みなのよね」


「そうっすか? さっきから貧乳なことで、すっごい悩んでますよね。自分には、なんでそんなことが悩みになるのか、全ッ然わかんないっすけど」


「売ってる? ケンカ」


「いいえ。かわいいって意味です」


「そうだね。小さくてかわいいわよね。でも言ったよね、巨乳から言われると傷つくって」


「じゃあ、ミユル先輩やカクシコ先輩のように、胸をばばんと盛ってみたら、解決できるかもしれません。なりたい見た目になることも、自分に自信を持つ切っ掛けになるし、悪い事ばかりじゃないと思うんすよね」


「あー、やっぱりそっち側なんだ。あなたの考えは、とても受け容れられない」


 今山ハルヒメは、どうしたものかと腕組をした。


 そのとき、彼女の腕の上に乳房が乗っかった。その光景が、板橋まなまをさらに苦しめた。


 今山ハルヒメは、しばし考えをめぐらし、やがて言う。


「そうだ、先輩。自分、占ってあげましょうか?」


「占い? なに? そんなのできるの?」


「ええ。最近、縁あって、とある人にじっくり教わって、できるようになりました。けっこう当たるんすよ?」


「たとえば?」


「そーですねぇ、食堂の日替わり定食のなかで、どれが一番おいしいか、とか。次に道端で出会う動物が犬か猫か、とか。あとは学園に不注意運転の車が突っ込んでくる日付と時間を当てるとか」


「そのへん当たるんなら、なかなかすごくない?」


「そうでしょうとも。てなわけで、先輩が巨乳になれるかどうかも占えるってぇわけです!」


「じゃあ、お願いしようかな」


「では、手をみせてください」


「あら手相? はいどうぞ」


「そして、ここに、先輩のお名前をフルネームで書いてください」


「つまり姓名判断? 板橋まなま……と、これでいい?」


「じゃあ次は、生年月日をこちらに」


「これは、星座占いとか?」


「…………えっとぉ」


「どうなの、ハルヒメ。わたしの胸って、すなおに育ってくれるかしら」


「ええ! 来世では、十分に育つ可能性があるとでました」


「そこは嘘でも希望をちょうだいよ」




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