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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
1章 王都での戦い
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4.詐欺と鑑定

翌日・・・・・・


「やってしまった」


 不覚だった。考えてみれば仮眠を取ったものの、ちゃんとした睡眠は二日ぶり、熟睡してしまい眼が覚めたときには昼を過ぎ、日が傾き始めていた。

 仕方ないと割り切り向かいのギルドに出向いたものの、この時間からでは大した依頼はのこっていなかった。外の街灯が灯される始めた頃、ギルド併設の酒場で簡単に食事を済ませ、依頼を受けれないため帰ろうとした所酒場の中央で言い争いが始まった。

 巻き込まれたくないので静かにその場を離れようとしたが、興味深い言葉が聞こえた為そっと近付く。騒動の中心では30歳くらいだろうか、熟練した戦士がテーブルに剣と付きたて、向かい側に座っている商人らしき男を睨んでいた。

 

「魔法剣っていうから先払いしたんだ! だがこれはどうみてもただの剣じゃないか!」


「何言ってるんですか。 これは間違いなく魔法剣ですよ。 明日鑑定してもらえばわかりますって」


 商人の男はあくまで本物だと主張し、笑顔で剣をすすめている。しかし何も魔力を感じない剣が魔法剣だろうか。見物人の輪の中からテーブルに置かれている剣をこっそり鑑定してみる。この鑑定能力は前世から引き継いだものだ。


タイプ 鋼の剣

付与 なし

状態 使い古し

委細 塗装された鋼の剣


 塗装されただけの鋼の剣。鑑定能力がないなら使ってみなければ、分からないので騙したのだろう。しかし戦士は長年の勘というやつで気付いたようだが、明日鑑定屋が開く前に商人は逃げ出す算段なのだろう。

 余り関わりたくはないが、魔法剣士としてこんなくだらない物を売る奴を野放しにはしたくない。見物人の輪の中から離れ、言い争いになりかけているテーブルの横に立つ。


「これはただの鋼の剣ですよ」


 商人風の男は焦ったのか、それともばらされるのが気に食わないのかこちらを向き怒りの表情を露にする。


「てめぇ、何を知ったような口を!」


 襟首を掴もうと手を伸ばしてくるが、その腕を掴み話を続ける。


「下級鑑定程度のスキルは持っています。私の簡易鑑定でも完全見えるので間違いないかと」


 本当は兄アークスと同じ完全鑑定を持っているのだが、身の安全の為下級もしくは中級と偽るよう言われている。

 この世界では国のお抱えやギルド専属になるなどしない限り、囚われて死ぬまで鑑定させられ続ける可能性もある厄介なスキルだそうだ。


「おい、これはどういうことだ」


 熟練戦士はテーブルを蹴り上げると売った男の襟首を掴み持ち上げる。


「ま……まてよ! そんな小僧の言う事信じるのかよ!」


 嘘吐き呼ばわりとは言ってくれる。何か証明できるものはないかと視線をずらすと熟練戦士の背負っている剣が目に入った。魔力を放つ剣は間違いなく魔法が付与された魔法剣、鑑定で確認してみる。


タイプ バスタードソード

付与 鋭利 強靭 耐熱

状態 良好 メンテナンス済み

委細 程度の良い付与魔法剣


「あなたが今背負っている剣はバスタードソードの付与魔法剣ですね。 強靭と鋭利とあと一つ何か付与されてます。 私が嘘吐きかどうかこれでどうですか」


 熟練戦士は一瞬驚いたような表情を浮べた後、商人風の男を逃がさないよう腕を掴む。


「おい、ちょっと面かせや。 坊主はちょいと待っていてくれ」


 熟練戦士はギルドの受付嬢の前にいくと何かを伝え、衛兵だろう男と一緒に商人風の男を奥に引きずっていく。それから5分ほどして苦笑しながら戻ってきた。やはり騙されてしまった事がはっきりしたのだろう。


「待たせて悪かった。 奴とは長い付き合いでな。 ダンジョン産の剣ってことで先払いしたのだが偽物とは」


 今はギルドから衛兵に突き出され絞り上げられていることだろう。


「この時間じゃ鑑定屋も閉まっていてな。 いくつか見てくれないか。 少ないが金は払うぞ」


「時間が掛かって良いなら、経験になるので構いませんよ」


「おぉ 頼む」


 ギルドの売店で大き目の安布と木炭を買い、テーブルに広げて鑑定用魔方陣を4分程で書き上げる。なくてもそれなりに鑑定は出来るのだが、魔方陣があるとないとでは、鑑定時間も閲覧できる内容も変わり、魔力の消費量も僅かで済む。


「それでは一つ目お預かりします」


 受け取った鈍く光るネックレスを魔方陣の中央に置き、鑑定用魔法を使用して20センチ程度浮かばせる。


タイプ ネックレス

付与 耐熱 対雷

状態 良好

委細 下級効果


「下級効果ですが耐熱・耐電の力を持ってます」


「そうか! そこそこの値がつきそうだな!」


タイプ 短剣

付与 なし

状態 良好

委細 特に無し


「ただの短剣ですね。 付与も特徴もありません」


「ガーゴイルから奪ったんだが、苦労した甲斐はなかったか。 これで最後だが頼む」


 男は背負っていたものと同じバスタードソードを亜空間倉庫から取り出し、軽く布で拭うと魔方陣の中央に置いた。

 亜空間倉庫は、前世にはなかったこの世界独自の魔法で、訓練によって倉庫の収容重量は大きく変動、並のCクラスの冒険者なら1トンにも満たないが、Cクラスでも手馴れた魔導士なら3トン程度入る非常に便利な魔法だ。私の場合はかなり兄達に鍛えられたので4トンくらいだろうか。


タイプ バスタードソード

付与 鋭利 強靭 火 雷

状態 要メンテナンス

委細 複数付与された魔法剣

魔力切れを起しており、再充填と全般的なメンテナンスが必要。


 どうやら随分良い魔法剣のようだが、あっさり教えてしまっては鑑定能力が高い事がばれてしまう。


「ちょっと待ってください。私の能力だと時間がかかる代物のみたいで」


「まじかよ。 これは掘り出しものか!?」


 焦ったような表情を作り、時間が掛かることを伝えると、期待しているのか剣をじっと見つめている。5分ほど鑑定し続けているように見せ掛け、これ以上できないと首を振る。


「鋭利 強靭 火 雷が付与されています。劣化しているみたいなので詳細は本職の方に調べてもらった方が良いかと」


「いやいやこれで十分だ! 助かったぜ! 正式な鑑定料より少ないかもしれんが」


 それでも一日宿屋に泊まれる1200フリスを置いてギルドを出て行った。少ないがといっているのだから、正式に3個程度鑑定すると料金はいくらくらいするのだろう。

 そんな事を考えていると周囲に他の冒険者が周囲に集まってきた。


「俺達も頼んでいいか? もちろん金ははらうぞ」


 その後、ギルドに居た冒険者が持ち込んだ物品の鑑定をし続け、1万フリス近く稼いだが宿屋に戻れたのは夜遅くになってからだった。

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