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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
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焉 贄は運命に捧げられた

 あと10年、その時間しか命が残されていない事をサーシャに伝えたのだが。


「そう、それでは私も次の世界に行きましょうか」


 サーシャは私室でお茶を飲みながら、次の世界にいくという。


「なぜそれを知って、いや行くとはどういう」


「知らないのは男だけ。 テラス神様もご理解頂けてるんだよ」

「女性は男以上に物事を知っていて、そして強いんですよ」


 エルとリーアナがサーシャの肩に立っている。2人がいつのまにか多くの事情を話していたのだろう。


「だが、それは永劫に」


「平和は退屈。 戦いの世界を楽しみましょう?」


 くすくすと笑うサーシャは、異なる世界であろうと関係がなく、自らを表現できる場所を求めているだけだった。

 それが何よりも大事な事であり、どこであろうと、それが異なる世界であろうと構わない。


「本当に……君には敵わないよ」


 この時、私とサーシャが転移することが決まってから、老いと言うものがほぼ消えた。

 それから猶予を与えられた10年、ただ平穏に、そしてサーシャと共にイノの為に時間を多く使った。

 もっともそれもまた、最適な力を出せる適正年齢を維持する為の加護であり、戦士として使うためだけでしかない。





 10年後・・・・・・


「それじゃあんたらも元気でな」


 長らく契約していたが、サーシャとの契約移行を望まず、鬼人族のラーラクシャとリヒト、契約を終了し国に帰ることにした。


「ところで、こいつはもらってしまってもいいのかい?」


 竜断ちの大鉈、本来なら回収して砕いてもよいのだが、あくまで真っ当な冒険者であるラクシャなら、渡しても悪用することはない。


「今まで契約してくれていたお礼です。 持って行ってください」


「そうかい。 そりゃ悪いね」


 名残惜しさもあるが、鬼人族は傭兵や冒険者を生業としている。出会いも別れも重要な事ではない。


「ヘクサス、だったね。 何かあればその名で署名を送りな。 うちの一族から若いのを送るよ」


 そう言ってラクシャたちは自国に帰っていった。

 ルーンウルフのジノーヴィとソードウルフ達、ジノは魔物であるため寿命と言うものが魔力に依存するが、ルーンウルフと言う上位の存在、寿命などあってないに等しい。

 ジノは戦士としロータス様の所なら不満はないそうだ。元より白鳳騎士団は魔物による兵団、その中にルーンウルフのジノがいてもなんらおかしくはない。

 何よりも強大な力を持つ兄アークスと義姉ロータス様に完全に屈服している。

 屋敷はソードウルフ達が継続して守り、主としてイノが管理所有、彼らにとって家と家族は屋敷であり、そのまま暮らす事を選んだ。

 そして家名はイノに譲る。一代で消えてしまったとしても、それはイノの自由であるが、兄アークスの下を訪ねた


「そうか。 行くのか」


 大体の事情を光の大神から聞いている兄アークス、僅かな時間しか残されてない事を伝え、イノを託す。


「イノの事を、お願いします」


「大事な姪、安心していい。 事によっては後ろ盾になることも、ロータスは認めているよ」


 兄アークスは書き記された書面を取り出し、小さなサインを入れた。

 公式的には、私とサーシャは龍の谷に呼ばれ、そこで戦死したことになり、死体も回収できず公爵家による死亡承認のみが行わる。


「龍の大地によって戦死の知らせは、公爵家から出しておく。 グレン、元気でな」


 悲しみを隠すような笑みを浮かべ、兄は最後の言葉を伝え自らの仕事に戻った。


「いままで、お世話になりました。 兄さん」


 ロータス様の屋敷を離れ、数日後屋敷では最後の別れを行っていた。


「縛られることなく、元気で暮らすのよ」


「お義母様もお元気で」


 この10年でイノも24歳になり、王都戦士養成学校も卒業、騎士団に所属している。そのため王都の文官を通し、正式にイノに財産と家名の継承を終わらせた。

 イノ・ヴァイカウント・ヘクサス、第三騎士団に所属する正騎士。

 正確な事は伝えて居なくとも、イノも二度と会うことが出来ない事を理解していた。

 サーシャとイノはお互い熱い抱擁を交わし、別れを惜しんでいる。




 屋敷を離れると、龍の大地を訪れると巨大な一体の龍が待っていた。敵意もなく、巨大な魔方陣が描かれており、そこに立つように促される。

 大地から光が沸き上がるとともに、天空から暖かい光が降り注ぎ体が消えていく。


「さぁ、どんな相手が待っているか楽しみね」


「それは、テラス神様の意向次第。 どんな過酷な世界が待つか」


「行けばわかるわ。 それに」


 サーシャはこちらを微笑みながら手を伸ばし、首に爪を立てる。


「最悪、あなたと殺し合えば、私は満足できるから」


 世界や命は神々やゲストが勝手にしていいものではない。世界に住む存在全ての為に外敵への盾となり剣となり、世界の調律し流れを整える。敗北するか魂が砕け散るその時まで。

以上で完結となります。

今までありがとうございました。



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