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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
174/176

174.魔なる神人

 踏み込もうとした瞬間、何かに掴まれたように体を動きを制され、見えない何かに握りつぶされるような力に、空中に持ち上げられてしまう。

 そのまま頭部を直接つかまれ、暴力的な破壊の魔力を頭部に送り込まれながら地面に叩きつけられる。対魔力性能が高いアダマンタイト製の鎧も粉々に砕け散ってしまう。


「《ジャッジ・テスタメント』」


 体内に押し込まれたどすぐろい魔力が暴走し、全身が引き裂かれるような痛みと共に四肢から体外に噴き出す。

 激痛で意識がもうろうとする中、首を掴まれ持ち上げられる。


「頑張ってくれたまえよ。 わざわざ簡単に死なないように手心を加えたのだからね」


 首から手を離された直後拳を腹部に叩き込まれ、先ほどと同じように流れ込んだ魔力が全身を駆け巡る。


「《アーチ・エネミー》」


 地面から黒い光が浮き上がり、全身を覆うと同時に小さな爆発が連続、全方向から爆発の衝撃と黒い炎に身を焼かれ、体の感覚が途切れる。


「転移してMMOのキャラの体になった時はどうかと思ったのが、 まぁまぁ楽しめたな」


 オールバックの男はそう言い、革靴で蹴り飛ばされ、数十メートル飛ばされた後地面に叩きつけられる。

 今までの転移者とは異なり、全てにおいてこちらを上回る、ゲームのキャラは現実にはあり得ない力を持つというが、それこそ神に準ずる存在とは言ったものだ。

 治癒に属する魔剣の力によって何とか動けるようになっていくが、それでも過負荷と怪我で体はすぐには癒えない。

 エルとリーアナがどこからか現れ、目の前に立つと小さくこちらをみて頷いた。


「水底より深い闇」

「死より深い闇」


「水底より深い闇、死より深い闇」


 二人の言葉に続いて口ずさむと、不思議と体に力が満ち、魔力が充足し痙攣している体を何とか起こせる。


「魂の深き混沌」

「生命の混沌」


「魂の深き混沌、生命の混沌」


 空間の狭間から複数の白い腕が一本の大振りの長剣を取り出す。黒い影が纏わりつき、正確な輪郭も不明な魔剣群の中核である剣。

 エルとリーアナが剣の上に移動、黒い影が纏わりつき形が掴みきれなかった、その影がすべて消えていく。光を飲み込む黒い刀身を持つ大振りの長剣、読めない文字が刀身に刻まれ浮かび上がっている。

 体が動くようになり、立ち上がりながら剣を握り締める。


「「神への反逆」」


「『神への反逆・原罪』」


 決して拭う事の出来ない人間の罪、核の魔剣 原罪。転生しても拭えず積み重なったそれは、人間とは異なる高次元の存在に与えられた罪であり刃、同じ高次に存在するモノならば届くはず。

 こちらが立ち上がったのを見ても、男は新しいタバコを取り出し火をつけ、白い煙を吐きながら余裕の笑みを浮かべている。


 踏み込むと同時に男に目掛け、魔剣をを振り下ろすと魔力だけではなく、生命力もごっそり失われ意識が遠のく。


「耐えろ!」

「まだ終わってません!」


 エルとリーアナの声に、消えようとする意識をなんとか支え、片膝を地面についた状態で男を見る。


 とっさに後ろに跳んで避けた男には深い傷が刻まれ、苦痛と憎しみを込めた目でこちらを睨んでいる。

 それでもまだ命に別状がないのか、男の両腕にはどす黒い破壊の魔力が集まっていくのが見えた。


「人と天使は堕落し悪魔となる。 反して人と悪魔は天使にもなれる。 ならば眼前の男は悪魔そのものか」


 魔剣を杖に立ち上がり、震える腕で剣を構える。


「明けと宵に別たれし明星。 嘗て御座の傍らに座した存在。 御技を模倣できる唯一の存在。 分け隔たれたる明星の力を求め、我が黒き虚無なる力に、御技を模倣せし力を貸し与え、眼前なる堕落せし存在を滅する力を」


 黒い刀身の周囲が揺らぎ、周囲に黒い影が放出される。


「《エグリマティアス・エクスィレオスィ》(罪人の償い)」


 最後の力を込めて上段から振り下ろす。

 空間も何もかも切り裂き、男の体の肩口から左右に両断したが、それでもまだ生きており、徐々にだが体が繋ぎ合わされ修復されていく。

 こちらは腕を上げる余裕さえすでになく、これで決まっていなければ勝つ術はない。もはやダメかと思われたとき、無数の白い影が纏わりつき、男の体をえぐりとっていく。

 目を凝らしてもはっきり見えないが、白い影には邪悪な気配など感じない。


「あんた、他の神々に恨まれ過ぎなんだよ」

「力で下級神の力を従えていたのです。 他の神々が力が落ちたこの瞬間を逃すはずがありません」


 エルとリーアナの言葉に、あの影が力を奪い取られた神々ということが理解できた。

 次々と現れる白い影が男を覆いつくし、全て去った後には小さな一塊の光が残る。


「あれは・・・・・・」


「もうアレは自分が何かさえ分かっていない」

「時期にあの形さえ留めていられず消滅します」


 力で無理やり抑え込み従えていたのだから、力を失えば反逆されて当然か。

 テラス神さまの加護もないのか、そのまま小さな光の塊は静かに消えていった。


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