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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
173/176

173.弄ぶ者

「酷いではないか。 それも元は君と同じ人だというのに」


 黒い色が落ちていくと、肌色をした、それも何十人もの人間が混ざり合った肉塊の柱だった。

 巨大な柱に人が、元は人だった者達が取り込まれている。口々に怨念と苦痛のうめき声をあげ、余りのおぞましさに数歩下がってしまう。


「終わらせてくれ・・・・・・、余りにも我々が・・・・・・、何の為に・・・・・・」

「ころし……ころし……」

「あぁぁぁぁぁ」


 せめて知性も人格を失っていれば楽なのに、まだ生きて、意識を残している。どれほどの苦痛なのか予想も出来ない。


「生きている人間になんてことを!」


 まるで面白い玩具を見るように、肉塊で出来た柱を男は見ている、この時点で考え方が違い過ぎる。


「大した価値もない生きているだけの人間を、努力し神にまで至った私が有効活用してやった。 光栄な事だろう」


 立場が何であれ、それぞれの考えで人間は足掻いて生きる。死ぬ寸前まで何かしらの形を残し、犯罪奴隷になった人間とて、努力し市民に戻る者もいる、価値もない人間など居ないに等しい。


「待っていろ。 いま命を完全に絶ってやる」


 魔剣群の中から炎を宿した魔剣を握りしめ、魔力を流し込みながら詠唱を開始する。

 その間にもオールバックの男は余裕の笑みを浮かべながら、こちらを見ていた。


「壮麗なる舞台は整い、あなたの美貌を求め観客は集う。 全てを焦熱に包み込む美麗なる舞い姿、優美なる熱炎、高貴なる姿、我は汝の眷属と契約せし者、我が前にその真の姿を現し力を貸し与えたまえ。〈炎熱を纏う舞姫ウェスタ〉」


 魔剣によって何倍にも増幅された魔力が周囲に放たれ、炎のドレスを纏った美しい淑女が現れる。舞姫ウエスタが肉塊の柱に手を向けると、地面から炎が噴き出す。


「「「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」」」


 耳に響く絶叫を上げ、肉塊の柱の全てを業火が焼き尽くしていく。それでも中々死ぬことができず、のたうつかのように柱から歪に跳びだしている手足がうごめく。


「丸焼きとは面白い。 だがその程度では私の玩具は死なない」


 オールバックの男が軽く手を動かすと、絶叫と共に肉塊の柱から血が噴き出し火を消そうとする。

 神の力があるのなら、ほんの少し水を与えて消すだけでいいはずだが、そのようなことをするそぶりさえない。


「舞姫ウェスタ、慈悲によって我が眼前の苦しむ存在を、劫火によって穢れを浄化し、楔から解き放ち給え。フォティア(火)・フローガ(炎)・カーフシ(燃焼)・エクリクシ(爆発)、イリアケスキリーデス(黒点) 《カタフィギオ・イリョス》(聖域の太陽)」


 火に属する他の魔剣の助力を受ける、肉塊の柱を覆うように結界が張り巡らされ、光輝く太陽による超高温・超高熱によって即座に炭化し、灰となって散っていく。


「ほう、玩具とはいえ灰にしてしまうとはやりますねぇ」


 相変わらず余裕の笑みを浮かべるオールバックの男、どこから出したのかタバコを加え、優雅に煙を吐いている。

 相手は下級神、それでも人とは異なり遥か高みにある存在、人間の武器で勝てる相手ではない。神と戦えるのは神もしくは高位の竜のみ。

 人の自分では届かないが、それでもなんとかしなければならない。

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