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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
169/176

167.騎士エンデ

 酒と女に酔っていた割には動きが速いが、それでも素面の状況ならまだしも、酔って動きと思考が曖昧になっている男など相手にはならない。

 腰に下げていた剣を鞘ごと抜き、男の首に叩きつける。


「ぐげぇっ……!」


 フィリップス兵士長と思われる男は鈍い声をあげ地面に倒れた。

 これが兵士長とは情けない。これならまだ訓練したアンデのほうがとっさに避けるなり防ぐなり、むやみに掛かってこないくらいの冷静さはあるのだが。

 さすがに荒い物事にも慣れているらしく、娼婦達は悲鳴も上げず、薄着の体を服で覆いながらこちらを見ていた。


「念のため伝えるが、私はグレン・ヴァイカウント・ヘクサス。 騎士団長からの命令で話をしにきている。 雑用の見習い騎士ではない」


 何も言わずにいたため、雑用の見習い騎士が来たと考えたのだろう。


「はっ?。 子爵がなんだというのだ。 俺はトルノ伯爵家の次男であり正騎士。 お前とは家柄が違うんだよ」


 騎士エンデはどうということはないという表情のままこちらをみている。

 家柄だけで不正をどうにか出来るわけではないのだが、どうしてもこういった者が出てきてしまう。これについては騎士団側で対処するしかないだろう。


「如何なる立場であろうと、貴族及び騎士として金を受け取り、不正な圧力をかける事は禁じられている。 そのことは見習い騎士や貴族の子息子女でも知っている事だろう」


「貴族の特権だ。 下位の者には私を捕縛する権利はない」


 廃れかけている特権階級を振りかざす騎士が居るとは、どちらにせよ騎士エンデが伯爵の次男であろうとも、当人が伯爵ではない以上、特権階級で捕縛を逃れる事は出来ない。


「それはトルノ伯爵が持つ特権、一族のものにはその特権はない。 騎士エンデ、騎士団に出頭してもらう」


 エンデから短剣が投じられ足元に刺さる。これは決闘を申し込む儀礼ではあるのだが。


「俺に対して不敬な奴だ」


「酔った勢いで決闘を挑むのは感心しない。 それは騎士としての名誉まで損なうことになる」


「オレが怖いのなら跪いて詫びろ」


 ここで決闘を申し込んだところで、何にもならないのだが、酒を飲み過ぎ冷静な判断力を失っているのだろうか。

 しかしここまで言われて決闘を断ると、娼婦たちが証言となり良い噂は流れない。受けたとしても得るものはまったくないのだが、不名誉な噂よりはまだいいだろう。


「分かりました。 決闘を受ける」


 短剣を拾いながら新たな短剣を倉庫から取り出し、騎士エンデの足元に投げ返す。


「それで決闘の日取りですが」


「今この場でだ!」


 騎士エンデは椅子の横に置いてあった剣を掴み抜き放った。剣から炎が迸り床や天井に火の粉が飛び散る。

 さすがにこの場でいきなり抜くとは思っていなかったようで、周りに座っていた娼婦達が慌てて逃げ始めた。


「民を巻き込む気か! 騎士エンデ!」


「娼婦が死んだ所でなんだというんだ!」


 娼婦だろうと王都に住む国民であり、それを守るのが騎士であり兵士、罪人でもない限り不用意に命を奪うなど許されることではない。

 左手に持っていた剣を正面に向け、振り下ろされる剣を受け止めると、炎が身に降り注ぎ体が焼かれる。

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