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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
163/176

163.横領

 翌日もアンデの訓練を行うため、王城近くにある兵士の訓練場へと赴く。


「今日は実剣による打ち合いを行う」


 実際に刃を少し鈍くしただけの剣で、訓練を行うことも少しはある。

 厳しい物であるため見習い騎士達では行うが、兵士が行うとは聞いたことはない。

 少々危険な訓練かもしれないが、これも経験を積むには必要な事。


「加減せず向かってくるように」


 技術を上げるには、体験する事・見る事・考える事・実践する事、半年間走り込みだけだったアンデには今一番必要な事だ。


「いきます!」


 切りかかってくるアンデの剣筋はまだ出鱈目に近い上に、筋力任せで動きに貯めと無駄が多く振りが遅い。

 受け止め流すのは簡単なのだが、一方でまだ何も知らないため、見込みがあると言えるのだが、しっかり握っているようで、握り方に癖があるように見える。

 もしかしたら長剣向きではないかもしれない。

 5分ほど受けを続けた頃、アンデの体力が尽きたのか、呼吸が乱れ剣を握る手が震えている。良く持った方だとは思うが、走り込みとは使う筋力と体力が違う。


「ここまで。 少し休憩を置いてから、槍・斧・鉈・棒など様々なもので適性を見よう。 長剣を使用する必要はない」


「わかり、ました!」


 乱れた呼吸を素早く整えるのも訓練と慣れ、半年ならまだまだこのくらいだろう。


「呼吸が落ち着いたら、訓練倉庫から自分の手に合う物を持ってくるように」


 アンデは真面目らしく、少し呼吸が落ち着いた状態で武器を取りに行き、すぐに戻ってきた。

 様々な武器で、木製人形に打ち込みをさせてみると、手斧に少し適性が見られるが、何よりも訓練せずに両利きという稀有な才能を持っていた。

 これは鍛え方によっては優秀な女戦士になれるかもしれない。


「手斧、癖はあるものの、腕力と使い方によっては鎧や盾を貫くことができる。 今までより辛い訓練になるが、覚悟は出来るか?」


「はい! 一人前の兵士になれるようがんばります!」


「そうか。 では今日は片手ずつ手斧を持ち、素振りを1000回。 それで終わりとする」


 軽く言っているようで、片手で手斧を1000回はかなり厳しい。



 本日の訓練を終え、管理部に赴き申請していた書類を受け取る。


「……ロゼ団長の言う通りとは」


 書類には防具や食堂の費用など、天引きされるはずなのだが、都度支払いということになっている。

 その代わりに天引きされなかった分が教官が受け取りとなっており、アンデが食堂の利用や武具の修理を申請するたび、教官が支払うことになっていた。

 別に天引きではなくその都度支払いにすることも、教官が受け取るのも悪いわけではないのだが、アンデ自身に食事や修理費を支払わせ、自分の懐に入れるのは問題だ。

 当面の間はアンデには食堂の利用を許し、武具の修理申請をさせておくとして、なぜこのような事をしているのか、現在病気で休んでいるという教官に問いたださなくてはならない。


「アンデの教官について知りたいので、書類申請をお願いします」


 毎回申請と審査が必要なのは面倒ではあるのだが、正当な理由もなく他人の情報を得られないのは、組織として正しい。

 直接関りがあり仮とはいえ生徒であるアンデならまだしも、教官については知る必要は基本ないのだから。


「では、こちらの書類にご記入をしてください。 理由が正当であるならば数日以内に許可が出ます」


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