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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
最終章 何が為に
160/176

160.時間

 5人目の転移者シンを倒してから一年。

 最後の転移者を精霊であるエルとリーアナでも見つけられず、情報も集めているのだがさっぱり見つからなかった。

 その間に体の状態を整え、鍛錬を重ねて備えているとき、リーゼルネシア公爵邸に呼び出され、兄アークスと面会をしていた。


「私が新兵教育ですか?」


 兄アークスから渡された書類に目を通し、その内容に疑問が出る。


「教育係に病人が出てしまい、一時的に人数が足りていない。 一月掛からずに復帰する間だけ任せたい」


 兄アークスの頼みとなれば断るわけにはいかない。事情も事情であり、一か月程度なら構わないだろう。


「そういう事でしたら、力になれると思います」




 翌日、王都の兵士訓練場に行くと、一人だけ兵士が待っていた。話では6人のはずだったのだが、他には誰も居ない。


「他の人は?」


「全員休暇をとっております」


 申し訳なさそうに話す顔はまだ幼さが残っている。見習い新兵、つまり入団直後の14歳ということになる。

 それにしても拒否されるとは、6人は教えるよりは楽だと考えておこう。


「そうか、それなら始めようか。 まずは準備運動の素振りから」


 兄から頼まれている以上、たった一人でも訓練を行う。


「はい!」


 見習い兵士の子は腰に下げている訓練用長剣を抜き、素振りを始める。

 私も横に並び、訓練用の大剣の素振りを行う。


「入団年数は?」


「半年です」


 半年の割に振るうたびに重心がぶれ、正規の訓練を半年受けた割には、まるで初心者冒険者のようだ。

 30分ほど素振りを続け、軽く汗をかいたところで次の鍛錬に移る。


「では次、木製人形への打ち込み」


 次は様子を見ながら行う。指導するにしても癖が判らないと、善し悪しの判断ができない。

 見習い兵士の子は気合と共に打ち込んでいるのだが、ただの木製人形に食い込まず弾かれてしまっている。

 振るっている訓練用の長剣に視線を向けるが、特段刃が悪いわけでもなく、兵士に供与されている一般的な量産剣。


「木製人形に剣が食い込んだ経験はあるか?」


「ありません!」


 返答が良いのはともかくとして、木製人形を切り倒せないとなると、剣を振るう技術だけではなく筋力も足りないと言うことになる。

 入団半年で一体何を重視して教えていたのだろうか。


「この半年したことはなんだ?」


「走り込みと雑用です!」


「素振りと打ち込みは今日が初めてなのか?」


「はい! そうです!」


 基礎訓練を半年してないのは驚きだ。何よりも時間がかかる基礎を疎かにして、走り込みと雑用ばかりとは、訓練教官は何を考えているのだろうか。


「そうか、私が担当する間は実訓練を多めにとるからそのつもりでいるように」


「はい! よろしくお願いします!」


 尊敬する兄からの命令とはいえ、これは少し手間がかかりそうだ。

最終章、再開いたします。

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