159.イノ、娘へ
王都ではソフィール神聖王国消滅に伴い、国境警備の増員に、魔術師ギルドなどから探索隊の編成、今後についてなど騒がしくなっていた。
屋敷周辺は何ら変化もなく、出立前と何一つ変わらない。
警備の兵士が門を守る中、敷地内に入ると静かで何も変わらない庭と屋敷がある。
屋敷の外にいるソードウルフの小屋に行くと、相変わらず何頭ものウルフ達が屋敷内の警戒に当たっている。これが彼らの仕事であり、運動になっている。
「報酬を持ってきた。 食べてくれ」
森で狩ってきたワイルドボア6頭を小屋の前に置くと、順番に自らの小屋に運び込んでいく。
小屋を離れ、屋敷内に入る。
「おかえりなさいませ」
「お風呂とお食事のご用意をなさいますか?」
執事とメイドが迎えに出てくるのだが、考えてみれば、特別な報酬など渡したこともなかった。
明日にでも何かしら与えてもいいだろう。
「両方とも頼む。 ところで今は働いている者は何人いる」
「24人でございます」
「そうか。 準備が出来たら呼んでくれ」
私室に戻り、肩に乗って居たエルとリーアナがテーブルの上に降りる。
「あぁ疲れた。 甘いもの用意しろよ」
「一休みしたらお願いしますね」
二人ともテーブルに置かれているクッションの上で横になる。
少ししてから金庫から資金を24個に袋分けし、1つ当たり10万フリスとする。
「グレン様、お風呂の用意が出来ました」
執事が呼びに来たので、そのまま任せる。
「これを全員に一袋ずつ渡すように。 今まで尽くしてくれた報酬だ」
「承りました」
メイドを呼び、金の入った袋を持っていく。
風呂と夕食も終わり、一息ついたところで側仕えに、訓練場にイノが来るように伝える。
訓練場で少し待つと、イノとサーシャが来たので、庭の訓練場に魔方陣を描き、中央に白蛇の精霊が宿っている魔石を置く。
「死と再生を司る蛇神フィジィ・ピソン。 我は生命力と魔力を捧げ、我が娘イノに守護の加護を願う。 白き蛇の精霊に力を貸し与え、何卒我が願い聞き届けお力を《イーリス・アスピーダ》」
魔方陣の中心に置かれている魔石に光が降り注ぎ、白蛇の姿がはっきりしてくる。
代償として体の力が抜け、魔力と生命力が持っていかれるが、魔石が消えると完全に実体化した白蛇、イノの近くまで進むと小さな人の姿に変わる。
「イノ、契約を」
肩で息をしながらその場に座り、様子を見いてると恐る恐るイノは手を差し出した。
「イノと言います。 あの、私と契約してもらえませんか」
「私はノルン、契約に従いあなたを守護しましょう。 ですが自らも気を付けるのですよ」
「はい。 ありがとうございます」
ふわりと浮き上がると、ノルンはイノの肩に着地した。
これで、イノについて心配する必要性はないだろう。
「グレン様、ありがとうございます」
イノは距離を取り礼を言う。親ではなくまだ主という認識なのだろう。
悲しくもあるが、それでもイノが自らの身を大事にするならそれでも良い。
以上で3章が終わりとなります。
次が最終章となり、
少し書き貯めを行いますので、更新が一週間程度とまります。
ところで、何を求めてこの作品を読んでいるのでしょうか?
流行の物語の作りとは全く異なりますし、我ながら理由が読めずさっぱり?