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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
158/176

158.家へ

 ソフィール神聖王国が消えたことで大きな騒ぎとなった。

 原因不明であり、国境の城壁を守っていた騎士たちの話では、全てが溶け落ち大量の水が全てを押し流していったという。

 国境城壁にいた兵士たちも、ソフィール神聖王国の者達だけが水疱に侵され、溶け落ち死んだという。



 再び地下を通ることでオーディン王国に戻り、北西の魔道蒸気列車の終着駅へと向かう。

 その間ずっと気は晴れない。

 数えきれないほどの、何も知らなかった人間の命を奪った。覚悟を決めていても、精神的負担は小さくない。


「残りがよくわからないんだよねぇ」

「あと一人の気配はほとんど感じません」


「どうにかなりそうか?」


 エルとリーアナはそう言い、すでに死んだ人々に興味を失っている。

 神命であるあと一人の転移者のいる場所が判らなければ、排除しようがない。


「少し時間がかかると思う」

「最後の標的は、簡単にはいきそうにありません」


「そうか、二人も大変だと思うが頼む。 今回みたいに対処が遅れ、国ごと亡ぼす事になるのは避けたいんだ」


 かすかに聞こえた悲鳴と絶叫が、数日経っても耳から離れなかった。もうあんな真似はしたくはない。

 命の取り合いならまだしも、一方的な虐殺は戦争どころか戦いですらない。


「そうだ。 帰る前にイノにお土産用意しなきゃ」

「そうですね。 何か用意しましょう」


「そうだな。 強い使い魔にでもなりそうな獣を」


 二人に耳が引っ張られ言葉を止められる。


「違うって」

「これだから男は困ります」


 否定されてしまった。こういう時男はやっぱり弱いというか、適切な判断がしにくい。

 前々世と前世と今世を合わせて、主に女性と関りが薄い自業自得ではあるのだが。


「イノは精霊の知り合いを欲しいと言ってたんだよ」

「この周辺にいる精霊を探して」


 護衛としてはソードウルフ達がいるのだから、それを考慮すると弱くても常時身を守れる精霊がいいのだろうか。

 新しく用意するのは小型で戦闘に向くとなると、猫に類する精霊となるのだが、契約するのは難しい。こればっかりは運に左右される。

 森に入って小さく魔方陣を描き、その場で待ち続ける。精霊と契約を望む以上、相手に無理強いをしてはならない。

 一昼夜待ち続けると一匹の蛇が現れた。


「蛇……か」


 白く美しい肢体をくねらせ、魔方陣の中央に置かれている魔石の上にたたずむ。

 じっとエルとリーアナが見ていると、魔石が小さく光る。


「力を貸してくれるってさ」

「イノに守護の力を与えてくれるそうです」


 エルとリーアナ、そして蛇の精霊とどう会話が成り立っているのか、さっぱりではあるが問題がないならそれでいい。


「感謝する。 イノは、……大事な娘なんだ よろしく頼む」


 蛇の精霊に対して頭を下げる。

 理解してくれたのか、とぐろを巻くと小さく舌を出し、魔石の中に消えていった。

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