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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
156/176

156.魔法・科学

 人形と戦っている間、遠くからかすかに聞こえてくる悲鳴や絶叫、町では阿鼻叫喚の地獄となっている事だろう。

 感染した当人は痛みもなく、安らかに眠れることだけがせめてもの救いだろうか。


「なんで! なんで止められないんだ!! ちゃんと感染学に従って隔離もしているのに!!!」


 転移者シンは感染学とは、医療知識まであるのか。

 だが無駄な事、ミクソゾアはただの病原菌ではなく、瘴気という生命体と魔法の織り交じった魔道病原菌、科学的には対応することができない。


「防ぐ方法はない。 お前では不可能だ」


 隔離壁にも食い付き、水疱となり溶け合いながら増殖、破裂してはさらに増え広がっていく。


「がっ!!」


 左腕が切り飛ばされ、貫通した大槍によって体が持ち上げられる。

 逃げずに居るのは少女人形だけ、教皇や神王と称えていた者達は誰一人残ってはいない。

 命がけで守ろうとする事なく、ただ逃げ回るだけだ。


「お父様を侮辱した罪、反省しなさい」


 滑稽だな。自らが作ったモノにだけ慕われる。

 そのまま振り回され、床に叩き伏せられ槍が引き抜かれる。

 あぁ、でも倒すのは大変だ。転移者そのものは大した事なくても、この人形が全てを持っている。

 身体能力、魔法、反射速度、対応するのが厳しい。

 無数の白い腕が持つ魔剣が少女人形に迫るも、何か不可視の障壁に阻まれ刃が届くことがない。


「《リジェネル・モルト》」


 蠢く肉塊と植物の魔剣から、肉塊が爆発的に増殖し少女人形と自分の間を埋める。

 細胞増殖の魔法によって切り落とされた腕口から血液が伸び、切り飛ばされた腕を掴むと元の状態に繋がる。


「これでなんとか、まだ戦える」


 直後蠢く肉塊の壁が吹き飛び、身を守ってくれた5本の魔剣が粉々に砕け散る。


「お父様がアダマンタイトの弾丸を電磁加速器で加速したのです。 あなたのようなものは消えてください」


 胴体の右半身をえぐり取られ、床に倒れる。即座に出血を抑えるために、増殖魔法がもつ力の一部で血は止まるが、身を引き裂かれた激痛は消えない。

 意識が飛んでしまうと死亡してしまうため、意識を何とか引き止める。

 魔剣を握る腕の一つが、ウィルス拡大をどうにか止めようとしている転移者シンに向け、握っていた魔剣を投げた。


「お父様!」


 少女人形は電磁加速器を投げ捨て、盾になるように立ちふさがる。

 確かに人形は恐ろしい強さ。しかし転移者はただの人、少女人形に感情を与え過ぎて意識が疎かになっている。

 次々と投じられる魔剣は少女人形の不可視の障壁によって阻まれ、転移者シンに届く事はないのだが、主を守るために何かの装置の前に居る転移者の側をはなれることがない。


 その間にばらばらになった右半身を繋ぎ合わせるが、失った血と激痛に意識がはっきりとしない。

 少女人形が投げ捨てた電磁加速器を掴み、その狙いを少女人形へと合わせる。


「所詮は道具、使い手の判断も何もない、これを動けないお前に撃ったらどうなるかな」


 確かに人形は恐ろしく強い。そして感情があり揺らぎがあるので一歩先も読めない。

 しかし感情があるゆえに、自らの造物主を守るためによけることができないのは分かっている。

 電子加速器によって打ち出されたアダマンタイトの弾丸は、不可視の障壁を貫き少女人形の体を破壊。

 転移者も強固な不可視の障壁を持っていたのか、少女人形を貫いた弾丸を天井方向にそらした。


「レーコ!」


 転移者シンはぼろぼろになった少女人形を、涙を流しながら抱き締めている。


「弾くなんて化け物か……。 だが終わりだ」


 電磁加速砲を投げ捨てると、水疱に侵され溶け落ちていく。


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