148.貴族とは
鎧を脱いでから会場に入ったのだが、どこに皆がいるのかわからず、最後尾で静かに壇上で行われている発表を見る。
会場には多くの貴族たちが集まり、壇上では順番に各ブースの代表者による説明が行われていた。
「では次は」
新しい装飾や刺繍など貴族の子女らしい大人しい発表がほとんどだが、一部では身を守るための護衛術やドレスを着たままの剣術など、やはり将来女騎士団に向けて努力している子たちもいるようだ。
優しさや大人しさや見た目だけが女性の美徳ではない。
精神的強さや知性の高さそして志し、全てがそろってこそ貴族の子女だろう。
発表が行われていく中で、シーナの派閥と思われるグループのリーダーが骨の馬を引き連れ壇上に現れた。
「こちらが新しい死霊術によって造られたアンデットです」
それから様々な情報が伝えられ、基本的な考え方や今後は魔導士ギルドにて、研究が続けられる事が発表された。
多くの貴族たちも興味深く話を聞き、最後には拍手の中壇上を降りた。
発表された内容では、全てを理解するのは不明だったが、いずれは魔導士ギルドによって正式に公開発表され、わかりやすくなるだろう。
壇上の下ではシーナ達が待っており、迎えに出ると楽しそうに話し、サーシャ達の紹介をしている。
男の自分にいる場所はなさそうだ。
一人発表会場を出て他のブースを巡っていると、時々顔を見られる。
「先ほどは見事な立ち合いでした」
声に振り替えると、どこかで見たことのあるような金髪をまとめた妙齢の女性が居た。落ち着いたドレスと身なりからして誰かの親族として学園祭にきたのだろう。
「お褒めにあずかり光栄です。 失礼ですが、あなたは?」
「私はテルミル・ヴァイカウント・ハルクデット。 フェリクス・ブラウンの叔母です」
「先ほどの子息の叔母でしたか。 これは大変な失礼とご迷惑をおかけいたしました」
丁寧に頭を下げ謝罪の意を表す。
「甥のフェリクスがシーナ嬢に迷惑を掛けました。 今後は私から近づかないように命じましょう。 命に従わないなら、貴族として廃嫡も考えます」
随分と厳しい叔母のようだが、名を貶めるような者がそのままいては、最悪責任が及び家の取り潰しとなる。貴族としてはただしい判断だろう。
「我が妹のために、苦しい判断に感謝いたします」
「良い機会でしたから、大したことではありませんわ。 それではまたいずれ」
ハルクデット夫人は側仕えを連れ、いまだ発表が行われているだろう会場に向かっていった。
これで一つ安心できるだろう。これでもダメなら学園を追い出されることになるか、キョウキによって処分されるかであり、これ以上関わってくることはないだろう。
この件を恨んで後々関わってくるようなら、相応に対応するしかないが、それは仕方ないことだろう。
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