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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
136/176

136.終結

 兄達も戦後の交渉から戻り、多くの貴族や騎士達が戦いを見守っている中、日も暮れた頃、強烈な雷撃が天を引き裂き、戦いの勝負がつきそうだ。



 遠めにみているためはっきりとはしないが、無傷に近いエウローリア公爵と異なり、セグレスト公爵は傷だらけだ。資質はほぼ同じだとしても、どうやら鍛え方がまったく違うようだ。

 冒険者としてトップクラスにあたり、強さは騎士団長クラスを超える祖父レオハートを若くして簡単に叩きのめしたのだから、エウローリア公爵その鍛え方はかなりのもののはず。

 元より戦いになどならないため、王の剣を奪いさらに転移者の兵器にまで手を出したのだろう。


「セグレスト! 王の命を奪った罰を受けなさい!!」


 エウローリア公爵の声が戦場に響き、戦いが終わろうとしているのが分かる。

 精霊達の支配も完全にエウローリア公爵側に移ったのか、周囲の精霊達はセグレスト公爵側から離れてしまっている。


「次の、王は私だ!」


 大型の拳銃を懐から取り出すと、エウローリア公爵に向け引き金を引いた。

 至近距離であったが瞬間的に精霊達が銃弾を受け止め、エルローリア公爵に届く事はなかった。


「セグレスト……王族の誇りも失ってしまったのか」


 誇りと思想がなければ、強大な力を持つ王族などただ危険な存在でしかない。

 それを何よりもエウローリア公爵は理解していた。


「弟セグレスト、安らかに眠りなさい」


 エウローリア公爵が踏み込んだ瞬間、セグレスト公爵の胸部を貫き戦いの決着はついた。




 膨大な魔力の迸りが終わると、空から巨大な龍が降り立つ。偉大なる大地の守護龍の一角にしてオーディン王国の本来の支配者の龍。


「新たな人の王よ。 我らが王の下に参れ」


 そのまま龍の背に乗るとエウローリア公爵は戦場を去っていった。




「エウローリア様が王位継承者となった! 全軍、王城へ!!」


「全ての戦士達よ! 王城に戻りエウローリア様を待つのだ!」


「戦争は終わった! 皆王都にいくぞ!」


「新たな王の下に集うのだ!」


 公爵達の言葉に戦場にいた全ての貴族と騎士や兵士達が集まり、隊列を成して王都へと向っていく。質が低かろうと王国の兵士には違いがなく、王が決まればもう争う理由などない。


「さて、ワシはまた旅に出る。 グレンも達者でな」


 祖父レオハートはかなりの武功をあげたはずだが、何も得ずに去るようだ。戦いさえなければ興味などないのだろう。

 剣を背中に背負うと皆が王都へと向う方向とは逆に向っていく途中で立ち止まった。


「そうだ、グレン。 一度シーナの学園に顔を出せ。 シーナが言い出しに難そうにしていたから、ワシが言った事派は秘密にしておけよ」


 そう言うと祖父は歩いていった。

 妹のシーナが自分に一度学園に顔を出して欲しいなんて、何か理由があるのだろうか。

 一度はイノの事もあるのでいくつもりではあったのだが、すでに王都に戻る一団と共に先に向ったシーナに一度話をしておこうか。

 まだふらつく足で王都に向う一団に混ざり、歩く速度が遅いので随分置いて行かれてしまったが、


 ジノの背に座っているサーシャが

 

「機嫌がよさそうですね」


「上機嫌よ? 存分に殺したもの。 満足したわ」


 内戦とはいえ極々稀にしか起きない戦争、欲望を満たせたのならそれでいいさ。


「満足できて何より」


「先に屋敷に戻っているわ。 イノが心配しているでしょうから。 ジノ、行って」


 そう言うとジノが走り出しすぐに姿が見えなくなった。


「イノが心配か。 サーシャにとってイノはなんのだろうか」


 私にとってイノはこの世界の可能性という範囲でみていると考えている。

 だがサーシャにとってイノは、イノにとって私やサーシャはなんなのだろうか。

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