135.祖父
「グレン、私はロータスと共にアルンフォル公爵とクラノウス公爵に話しを付けに行く。 お前はこのまま休んでいるがいい」
兄アークスと義姉ロータス様はセグレスト公爵側の陣営にまだ残っている二つの公爵家の元にむかった。
王族同士の戦いになり、もはや貴族や騎士の戦いは終わった。どのような結果になろうとこれからは国を支えなければならない。
いがみ合いがあろうとも国家のために国民のために。
立つ事もできず、座りながら激しい戦いを眺める。魔法でも血液だけは作れず、2~3ヶ月は戦いに出られないだろう。
だがこの世界で得られた並の力だけで、戦えるだけ戦い、そして転移者の影響は排除できた。
後は転移者そのものを狩るだけなのだが、
「エル リーアナ、転移者の居場所はわからないか?」
いつもどおりいつの間にか肩に乗っている二人に話しかける。
「方角だけならわかったよ」
「それでも、違和感があります。 隠されているような」
示した方角は 国、やはりあの国に
しかしそうなると、ロボットの兵隊や爆弾を作れる技術があると言うことになる。他の国にまではまだ出回っていないようだが、かなりの覚悟が必要だろう。
恐らく科学によって機械化された国家、
国ごと滅ぼす覚悟、それをもてるだろうか。やるしかないのだが、やはり考えるだけでも気がおもい。
激しい衝撃が陣にまで襲いかかり、怪我人が出始めみな陣を下げ始める。巻き込まれるだけで命に関わる王族同士の戦い、四大公爵家以外では立ち入る事は騎士団長クラスの者達でも不可能だ。
命に関わる戦いに巻き込まれないよう、まだふらつく体で立ち上がり、少しずつ後方に下がる。
「グレンではないか! 敵騎士団長を倒したのは見とったぞ!」
ゆっくり歩いていると、祖父レオハートが自分を見つけ駆け寄ってきた。
「お爺様は一体どこに居られたのですか? 公爵は存命ですが」
「うむ。 用を足しにいっとったらアークスとお前が戦っていたんでな。 シーナと後方で見とった。 しかし危ない戦いであったが、騎士団長を倒したのはよくやったぞ。 お前もようやく一人前だ」
「……そうですか。 ですが倒すだけで精一杯で、当分の間私は戦う事もできそうにありません」
祖父は笑うと、ふらつく私の背を叩く。
「何を言っとるか。 騎士団長を倒したのだ、少なくともお前は男爵以上の爵位持ちとなる。 祖父として嬉しいぞグレン!」
爵位、考えもしなかったけれど、騎士団長という地位も名誉もある対象を倒した。
名乗りあいこそなかったが、横槍こそ入ったが一騎打ちの状態による勝利、報酬として充分なものだ。
「爵位……ですか」
「なんだ気に入らないのか? 少なくとも家を立てられるぞ」
「余り……興味がないですね」
祖父レオハートは大声で笑い始める。
「はっはっはっは! お前は本当に冒険者らしい!!」
しかし、途中で真顔になり頭に触れた。
「だが、冒険者の時代もいずれ終わる、いつまでも冒険者という存在が居るわけがない。 子孫のためにも真っ当な地位に付け。 それもまた男の道だ」
冒険者として好き勝手に生きていても、祖父レオハートは血まみれの戦場と世界で生きてきた経験がある。だからこそ冒険者の役割が変化してきた事も理解しているのだろう。
「その割りに お爺様は好き勝手にいきてますね」
「ワシは老い先短いからな! 余生は存分に楽しむに限る!」
やっぱり祖父は祖父、血と戦場を好む戦闘狂、弱者にも興味がなくあるのは強者との戦い、そして家族のことだけだ。