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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
134/176

134.王族

「セグレスト! 民を傷付けるお前に王位を渡すわけにはいかない!」


 エウローリア公爵はセグレスト公爵は二歳違いの姉弟、実力もほぼ互角であり王位継承権は共にある。


「エウローリア! 王の資格を持つのは私でありお前ではない!! この大地を、世界を統べる力を持つ為ならば、民が王にその身を捧げるのは当然だ!!!」


 覇権への欲望、力を持つがゆえの歪み、だからこそ王家はかならず継承権を持つ者を二人以上設け、そして別々に育てる。

 かならずどちらかが国家のため、国民のために戦うと信じ、多くの血と犠牲の下オーディン王国は続いてきた。


「すまない アークス兄さん」


「気にするな。 お前はよくやった」


 兄アークスの肩を借り、エウローリア公爵の姿を眺める。

 

 空白地帯となった互いの陣の中央に向け、エウローリア公爵が歩いていく。

 燃える様な朱の長髪が揺らめきたち、多くの炎と風と雷の精霊が周囲を舞い踊っている。歩くたびに精霊が反応し、炎が舞いあがり雷が迸る。

 光の精霊を従える兄アークスよりも数が多く、守るように飛び回っている。

 セグレスト公爵もまた、紅の髪を短くまとめ、光り輝く剣を右手に握り出てきた。


「あれは、王の剣。 あんなものまで奪っていたのか」


 王が持つべき剣、王であるものの資格。

 一方エウローリア公爵は錆びた槍を握っている。


「その様なもので前に立つとは、私を侮るかエウローリア!」


 セグレスト公爵が剣を振るうと、バスターブレストの何十倍もの威力を持つ波動が放たれ、地面を削りながら向っていく。


 無言でエウローリア公爵は槍を振るうと錆がはじけとび、その本当の姿を現した。

 蒼く光り輝き雷光を纏う槍、初代王が持っていたとされる神槍ゴングナー。


 手に入れるには初代王の墓であり、この魔物が闊歩する大地を納めていた龍の住まう地、偉大なる龍王と対話しなければならない。

 この大地を元々納めていた龍族、魔物が余りにも多く、ダンジョンが形成されやすい大地は龍族でしか納められなかったが、初代王は龍族と対話することでこの大地をオーディン王国へと譲り受けた。

 初代王が老死したとき、龍族の住まう大地に亡骸と武具は安置された。


 ゴングナーを持つという事、それは龍族はこの大地を納める後継者として、エウローリア公爵を選んだと言う事だ。

 国家を挙げて戦っても勝てない存在、龍王の許しを得なくては成らない。

 その存在がすでに正当な後継者とエウローリア公爵を認めている。セグレスト公爵がいくら力を示したところで、もはや変更される事はない。


【継承者争いを見届けるは他のモノでよい】


 と上位龍が言ったのは、確たる差をわかっていたからだろう。


「例えそうだろうと、貴様を殺して奪えばいい!」


 セグレスト公爵は自らに従う精霊を共に向っていく。

 どこか寂しそうな表情をエウローリア公爵は一瞬浮かべ、槍を握り締め迎え撃った。


 精霊同士も主導権争いが行われ、炎と雷、そして竜巻がぶつかり合い、エウローリア公爵とセグレスト公爵の振るう槍と剣の雷光と光、二つが交差し周囲の大地を破壊していく。

 目で追うのがぎりぎりの高速で繰り出される攻防、正騎士でさえ一手さえ防げないだろう攻撃を意図も簡単に受け流し、その一撃だけで周囲の大地に甚大な被害を与えている。 

 王家に代々使える四公爵以外介入する事のできない戦いに、両陣営に使える騎士や兵士達はただ状況を見守る事しかできない。

 

 セグレスト公爵が勝てばオーディン王国は覇権主義国家に、

 エウローリア公爵が勝てばオーディン王国は民の為の国家に、

 どちらも自分が信じる主義主張を押し通すために、血縁者を殺す。




 自らを遥かに凌駕する凄まじい戦いを見て思う。


「これが、この世界の力」


 転移者さえ倒す事ができる高みにある存在ながら、戦えば怪我を負い、流れるべき世界と歴史に影響が出てしまう。本来存在するはずのない害である転移者を殺すために、転移者たる自分が存在する。


 本来その世界に住む人々にとっても“異世界に転生者など不要”なのだから。

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