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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
131/176

131.休息


「囲まれるとは」


 自陣営に戻ろうと試みるも、敵に囲まれ徐々に不利な状況追い込まれていく。

 腕の出血は止まったものの、いまだ震えと痺れによって戦いに使える状態ではない。

 効果的だと思われる魔法を唱える余裕も、治癒を最優先にしているため不可能、この状態で意識を一定以上魔法に向け、瞬時に治癒する魔法の余裕はさらにない。


「風よ。 今飛翔する刃を」


 周囲から迫る敵兵に、意識を集中させる事もできず詠唱を中断させられる。

 両腕も使えず、魔法を使うすきさえ与えられない。


「《ウィンドエッジ》」


 詠唱せずに風の刃を放つも、兵士を何人か切り裂くが正騎士が振り下ろす剣にかき消されてしまう。

 こんなものではやはり時間を稼ぐ事すらできない。二重詠唱など出来るはずもなく、このままでは手が一つしかない。

 腕を一本犠牲にすることになり、治すのに時間を要してしまうが他に手段はない。


「《ボーンナイト:クレンデル》」


 地面につけた左腕を喰らいながら、全身鎧をまとった骸骨の騎士が地面から現れる。


「対価に基づき我が身を守れ。 死者の騎士 グレンデル」


 ガントレットの部分を吐き捨て、骸骨の騎士は背負う二振りの身の丈を超える大剣を握り締めると、周りの騎士や兵士を薙ぎ倒し始めた。

 肘から少し上までを食いちぎられたが、魔力で出血だけを止める。そのまま走ることも出来なくなったが、白鳳騎士団が戦っている前線になんとかたどり着き、そのまま自陣へと戻る。

 死者の騎士グレンデルを送還し、意識を集中させる。


「《細胞増殖》」


 肘先の傷口から骨と肉が盛り上がり、数秒して完全に元に戻る。元あった傷痕がそのままなのは、すでに体に馴染んだ為あることが当然になっているためだ。

 大分魔力と体力、そして血液を失ってしまったが、これでなんとか戦える事ができそうだ。

 一旦休憩を取るためシーナが居るだろう場所に向うと、そこには着替えも終えたらしい痛みのない赤黒いドレスを纏ったサーシャが、戦場の雰囲気に似合わずお茶を楽しんでいた。


「……随分と用意がいいんだね」


「グレンもどう? 血が香る中でのお茶も悪くないわよ」


「一杯だけ貰っていくよ」


 立ったままヘルムを脱いで用意されている紅茶に口を付けるが、体が受け付けず飲み込みにくい。

 その様子を見ていたサーシャは少しため息をついた。


「少し、血が足りてないわね。 無理をし過ぎじゃないかしら?」


「そのつもりはないけれど、さすがに無理しなくては戦争には勝てない。 何よりも現在拮抗している」


 数の差を覆す事はできていないが、拮抗した状態になっている。

 セグレスト公爵側の正規の騎士や兵士も質がそれほど良くないらしいのが幸いだろう。


「無理をして、生き残れるならいいけれど、死んでしまえば意味がないわ。 あなたは空虚を満たしてくれるのでしょう? 生き続け為さいな」


 前に言った言葉を返されるとは思わなかった。


「なんにせよ椅子に座りなさい。 体を休めなければ戦えないわよ」


 促されてテーブルの反対側に座るが、紅茶と茶菓子が置かれ戦場とは全く異なる雰囲気になんとも妙な気分になる。


「このクッキーは?」


 二三枚を手に取り口に入れ、茶で流し込む。

 行儀は悪いが、早めに栄養を補給し体を戻したい。


「イノが作ったのよ。 あの子もあと少しで貴族院にいくわ」


「元々頭の出来も見た目も良い。 貴族院で良い仲間も見つかる」


「あなたも私も貴族院に行った事がないけれど、どうゆうところなのかしら」


「アークス兄さんやシーナからどういうものなのか聞いたことはないからさっぱりわからない」


 戦場に似合わない話をしているとは分かっているのだが、少しだが心が安らぐ。


「グレン兄さん! 戦の最中に何をしてるのよ!!」


 シーナの声に振り返ると、怒りの表情でこちらをみていた。


「あぁ、シーナか。 一緒に食べるか? イノが作ったクッキーだがかなり美味しい」


「シーナもいらっしゃいな。 まだ戦は続くから、体を休めて備えなさいな」


 どこか呆れた表情を浮かべながら、シーナは亜空間倉庫から自分のイスを取り出すとテーブルに着いた。


「……グレン兄さんもサーシャ義姉さんも、神経が太いわね。 私は落ち着かないわ」


 確かに戦場でのんびりお茶を楽しむなど、確かに神経が太い行動かもしれない。

現在戦場の表現力不足に苦しんでます・・・。

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