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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
1章 王都での戦い
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12.固有能力

 二人とともにエルとリーアナも、何故かテーブルの上でこちらをみている。依頼というか願いのとおり二人を助けたのだが、いつまで居るつもりなのだろうか。ともかく二人を治療する為にこの世界に来て初めて魔剣を取り出さないといけない。

 目を瞑り意識を集中させる。本来こんな事必要ないのだが、数万本あるの中から該当する能力を持つ魔剣一本だけを取り出すとなるとそう簡単にはいかない。該当する魔剣を選ぶと私のすぐ横の空間がひび割れ、無数の小さな穴から白い腕と剣が現れる。

 私が前世から引き継いだ固有能力《生命の魔剣化》。魔剣で殺した存在を固有能力の魔剣に変え、狭間の空間から必要な魔剣を取り出し自在に使う事が出来る。

 その手一つ一つに魔剣が握られており、望む剣が何も収められていない腰の鞘に納められ、その様子を見た二人は恐れる表情を浮かべている。白い腕は死者の腕、魔剣に喰われた命の欠片が腕となり従属しているが恐怖を感じるのは当然か。

 魔剣に魔力を流しながら両手を二人に向ける。大抵魔剣は自らの魔力や生命力を流し力を増幅させ身に戻すタイプか、魔剣が力そのものを生み出すタイプの二種類。今鞘に収められている魔剣は魔力を流す事で治癒の力を発揮するタイプ、ほんの僅かな魔力で傷を癒してくれる。

 一部えぐれていた肉が盛り上がり、靭帯や裂傷が繋がり綺麗にふさがっていく。10分ほどで完全に治り、二人は自らの体の変化に声を出さずに驚いているようだが、これだけ時間がかかるようでは上手く扱えているとはいえない。

 戦争レベルの戦いでは、炎や雷で焼け焦げていく体を瞬時に治す必要がある。治療速度が遥かに遅く、このままでは命が危ない。魔剣の扱いに成れるために常時一本くらいは手元に持っておいたほうがいいだろう。


「それで、もう声は治ったはずだが、どうかな」


 体を左右に動かし状態を確認しているのだが、できれば声が治ったかどうかも確認してほしい。


「あっ、あぁ感謝する。 ほらリヒトも礼をいいな」


「すまん。 驚いてた、感謝する」


 怪我を治った二人を見ると、なんというか美男美女だ。弟のほうは随分と整った顔に赤い瞳に切れ目、赤い短髪と額に一角、全身戦うために引き締められた体は無駄な膨らみがまったくなく、体格そのものは自分と幾分か似ている。

 姉のほうは美麗な顔と赤い瞳に切れ目、黒い長髪と額に二角、戦いの為引き締められては居るが女性を主張する部分はかなり主張し、随分と人目を引くプロポーションをしている。

 もしかしたら怪我の原因は嫉妬から罠に掛けられたのかもしれない。


「そのまま軽く動いて、違和感が無いか確認してくれ。それが終わったら契約を行ってもらう」


「だが、いいのかい。 あんたはあたい達を奴隷とした買ったんだ」


 姉の鬼人族の言う事ももっともかもしれないが、はっきり言えばそんなことどうでもいい。


「エルとリーアナが優秀な戦士だと薦めてくれたし、それに鬼人族は契約を重んじると聞いてもいる。 なら奴隷より戦士として契約すべきだろう?」


 奴隷として最低限の賃金で自由に扱っても良いのだが、奴隷の考え方では命懸けのダンジョンでは困る。戦士として共に戦う仲間が必要なのだから。


「それに割当は少なめだが、ダンジョンと依頼報酬割当は行います。 少し経てば奴隷から離脱もできるはず」


 二人は驚いているようだが、元々奴隷として扱うつもりなど毛頭無い。エルとリーアナは何か頷いているようだが、予想通りだったとでもいいそうな顔をしている。精霊も格が上がれば下級神となるのだが、もしかしたら随分神に近い精霊なのかもしれない。


「わかった。 それじゃあんたと鬼人族で一番の契約を行うよ」


 情報の守秘、得た報酬の分配割合、戦いのルール等を確認。問題なしとして鬼人族特有の血と骨の契約を行う。契約違反は死を持って償う。それが鬼人族の最高である契約。


姉の名前はラーラクシャ・ドゥーガ

23歳 鬼人族女性

190センチ 78kg

得意武器は両手持ちの斧

元Bランク冒険者


弟の名前はリヒト・ドゥーガ

20歳 鬼人族男性

205センチ 88kg

得意武器は片手斧の二本持ち

元Bランク冒険者


 これで契約は出来た。鬼一族は元々契約にも厳しいが、最高の契約となればこちらも相応の代償はあるが信頼はできる。残る問題は奴隷服ではなく、ちゃんとした服や武具の購入、姉が片腕を失った事による武器の変更が必要な事だ。


「ラーラクシャには義手も調達しよう。 それでいくらかましになるはず」


 魔法が発達しているが故に機械の発達は非常に緩やかだ。だがまったく無いわけではない。水車や風車もあるし、それに伴う機構も幾らか存在している。武器についても大砲もあるにはあるが、火薬ではなく火系魔石の爆発を利用している。

 話を戻すが貴族などが治療が間に合わず、失った腕や脚の代替物として義手や義足を作る事は多々あり、そこから発展し治癒できなかった冒険者向けだが、武器義手や義足など多数の物がオーダーで購入する事が出来る。

 

「ラクシャでいい。 それに義手がなくてもどうにか」


「目的は王都のダンジョン35層じゃない。 標的はドラゴン以上、それでも不要と言えますか?」


 本来の標的はある意味で世界そのものなのだが、伝えるわけにも行かない。ある意味では転生者はドラゴン以上の強敵、もしかしたら今の自分よりも上かもしれない。

 

「・・・・・・それなら必要だね。 片腕だけでやれる相手じゃない」


「ならまずは服を買いがてらギルドに行こうか。 武具は、義手のあとかな」


 ギルドに向う途中で出来れば鬼人族の服を買いたいが、王都では作られて居ないため商人頼りで高価だ。武具や義手のことを考えると、普通の服で我慢してもらうしかない。二人は気にしないと言ってくれているが、仲間が不遇な状態というのは精神的によくない。

 

「出来る限り優先します。 本当に申し訳ない」


 今売れるものがあるとしたら付与魔法剣だが、特殊付与魔法剣は鍛冶教官で判断する限り技術がなく希少、通常の付与についてもギルド酒場で見かけた冒険者の武器から判断して、やりすぎれば同じ事だろう。

 どちらにせよ過ぎたる武器を売れば、出所を探られて面倒な事になる。売るとしても市場コントロールと信頼ができる商人が見つかるまで、注意しながら売るしか無いだろう。

 道中の店で購入した服に着替えた二人と共にギルドに入ると二人を見た冒険者達がひそひそと話し始める。


「おぃ、あれドゥーガ姉弟じゃねぇか」


「奴隷落ちしたと聞いてたが、あんなガキに買われるとはおちぶれたもんだ」


「へっ、腕も失って無様なこった」


 随分と雑音が響いているが、リヒトが睨むと黙りこんでしまう。元々勝てるなら雑音のような声で悪態を吐くことはない。それ以上相手にせずギルドの雑務対応窓口に相談してみると、あっさりと教えてもらえた。


「機構術士の方々が集まっている商業区に行くのが良いかと、あそこでしたら多くの義手職人も集まっています」

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