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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
129/176

129.本番


 自陣に戻ると多くの怪我人が出始めていた。

 すでに雑兵の殆どが蹴散らされ、騎士同士の戦いが始まっている。元より数で大幅に劣っているため、一気に攻められれば不利になるのは当然であった。


「いま少し耐えるのだ!」


 命を捨てる覚悟を持ってエウローリア公爵に仕え、決して引こうとせず騎士達は果敢に戦っている。

 第一次防衛ラインが破れそうになったとき、何かが弾ける様な音が響き、セグレスト公爵側の空中に現れ魔法陣が砕け散る。

 その代わりエウローリア公爵の陣の上に魔方陣が現れ光を放った。


「我は汝ら雷の精霊と契約せし血族に連なるもの! 敵を雷よ! 天より降りて我が敵を砕け!!」


 相手の魔法の妨害詠唱と合わせて詠唱していた魔法の準備が出来たようだ。

 リーゼルハルト公爵の周囲には多くの雷の精霊が舞っている。


「《カテギーダ・アストゥラピフティーピセ》!」


 天から降り注ぐ雷撃の嵐に大地が焼け焦げ、セグレスト公爵側の兵士が次々雷撃によって倒れていく。 圧倒的力、あれだけの魔力を消費すれば、並の魔導士であるならば死んでしまうどころか、発動させる事さえできないだろう。

 私も、そして魔導士ギルド幹部である兄セズでさえも、これだけの魔法を使うことなどできない。


「白鳳の戦士たちよ! エウローリア公爵の為に守護者たる我らが戦うとき!」


 白鳳騎士団副長であり、兄アークスが剣を掲げる。

 その背後に立つのは殆どが亜人族や魔物で構成される白鳳騎士団。全てはその人柄に惹かれた猛者。

 様々な雄叫びが上がり、何も知らないモノからすれば、魔軍のようにみえるだろう。

 強大な広域雷撃魔法が止んだ時にはセグレスト公爵騎士団の3割近くが損耗していた。


「行くぞ!」


 光を纏った聖騎士の兄の後ろを様々な種族が付き従う。

 多種族との共存、平和を愛するなら魔の生を受けたものも許す。オーディン王国建国以来、ずっと国家の方針として大事にされてきた事。


「私も出ます! 魔導兵団は攻撃ではなく詠唱妨害に集中しなさい!!」


 ロータス・シリエジオ・イールス・ヒューレ・デュークウーマン・リーゼハルト、白鳳騎士団 団長にしてエウローリア公爵の片腕。


「戦の女神 アテーナーよ。 今我々の誇り高き戦いに汝の加護を与えたまえ《ポラフィラックス》」


 そしてオーディン王国建国以来、国家の安寧の為に代々王家に仕えてきた四公爵家の筆頭である。


 魔力で作り上げた蒼く光り輝く鎧を身に纏い、その背からは同じく蒼く光り輝く翼が出来上がっている。


「さて、ワシもそろそろ行くか」


 一旦陣に戻り、刃を研ぎなおしながら休んでいた祖父レオハートも、体を軽く動かしている。


「グレン。 ワシは クラノウス公爵 を狙う。 お前はどうする」


「私は敵陣を引っ掻き回そうかと思います。 数の不利を覆すには、頭を取るだけではなくそれも必要かと」


「良い答えだ。 それでこそワシの孫。 武運を祈るぞ」


 祖父レオハートは再び敵陣に向け走り出す。


「では自分もいきますか」


「そうね。 そろそろ戦いたいわ」


 サーシャは身嗜みを整えなおし、魔石の宝飾品を身につけている。どうやら本気で戦うつもりようだ。


「出来る限り殺したいから、グレンも私の近くにいなさいな。 きっと楽しいわよ?」


 血の飢えはなくとも、存分に戦争を楽しみたいという意図が分かる。


「私は敵をかく乱するために、敵陣の層が厚い所に行きます」


「あら、そちらのほうが楽しそうね。 私も行くわ」


 一人でいるよりお互いに安全は確保されるのだが、サーシャと一緒ととなると危険度だけはさらに上がる気がしてならない。

 それでも、心の中にある僅かな不安が払拭されるのなら、共に戦った方がいい。

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