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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
128/176

128.一時撤退

 そこは地面に広がった巨大な血の池からから血の刃が噴出し、兵士や騎士を次々と貫いていた。そこはまるで戯れのように舞い踊るサーシャ一人の舞台のようであった。


「サーシャ!」


「なぁに? ちゃんと私のままよ?」


 もしやと血の乾きに溺れたのかと思い焦ったのだが、かすり傷一つ負っているようすもなく、どうやらただ殺戮を楽しんでいるだけだったようだ。


「敵が混乱から抜ける前に一旦陣に戻ろう。 少数で敵陣真っ只中に居続けるのは危険過ぎる」


「少し物足りないのだけれど、そうね。 そろそろ一度戻ろうかしら」


 両腕を大きく広げると血が竜巻のように巻き上がり、血の刃は周囲の騎士と兵士が切り裂き血を吹き出しながら倒れる。

 その血液さえも血の池が取り込み、すべては赤いドレスに吸い込まれるように消えていく。実際は亜空間倉庫にしまっているのだろうが。


「ジノは一緒じゃ?」


「食料庫を襲いに行ったわ。 迎えに行きましょうか」


「ココニイル」


 声のするほうを見ると黒い毛皮が返り血で真っ赤に染まった姿があった。口も人間だろう血液で真っ赤だ。


「馬ヲ喰ラッテキタ。 邪魔ナ人間モ幾ラカ片付ケタ」


「一旦陣に戻ろう。 敵が落ち着いたら数で押されてしまう」


 話してる最中だが、サーシャはジノの背に座る。それと同時にジノに付着していた血液が全てサーシャのドレスに吸い込まれる。


「ワカッタ」


「話は済んだ? 戻りましょう」


「あぁ、急いで戻ろう」


 すでに囲まれ始めているが、幸い陣の前衛は寄せ集めの雑兵ばかりで難しいことはない。そこまでいければなんとかなる。


「地に伏せし大地の精霊 グノーメよ。今魔力を奉納し 大地より従者を使わせ給え《ストーンゴーレム》」


 3メートルを肥える巨大なゴーレムも今のこの場では的になるような囮でしかない。

 巨大な腕を振り上げ、岩石を投げ飛ばすと重装兵の盾で防がれるまでかなりの道が開かれる。あと一歩で雑兵が多くいる場所まで届くはずだったが、随分敵陣深くまで入っていた。

 僅かに開いた道を走り抜けていくと、一人の騎士が目の前に立ちはだかった。


「ワシは騎士 ホメヌス! 汝に一対一の戦いを申し込む!」


 この状況で騎士に名乗りを上げて挑まれるのは非常に困る。だがそれを分かっていてやっているのだろう。


「グレン・ソーディアン。 騎士ではないが子爵家の者として相手をする」


「感謝!」


 騎士は長剣を構えるが、少々古ぼけた古い剣に見える。フルヘルムの隙間から見える顔にも若さは余り見られない。


「参る!!」


 中段に構えたまま刺突の体勢、こちらが大剣なのを理解し最適な初手を選んでいるようだ。しかし長々と相手をしているわけにはいかない。

 呪殺剣 鬼喰らい 天津風を背中に止め両手を横に向ける。


「《アイスツィンソード》」


 氷で出来た刃の鋭い両手剣を作り出し、リーチの長さを利用して同じく突きの体勢に入る。

 剣が交差すると思われた瞬間、騎士は剣を縦の状態に切り替え、アイスツインソードを受け流しながら一歩踏み込み柄でうち上げた。

 体勢を完全には崩されてはいないが、剣を振り下ろす体勢にあるのは騎士、相手のほうが技術と経験で勝っている。

 両手剣よりも軽量である長剣ならば、間違いのない戦法、あくまで鉄製であり氷で出来た両手剣なら話は別だ。

 体を落とし上段からアイスツインソードを長剣よりも先に振り下ろす。

 騎士のプレートメイルを切り裂き、騎士が死んだ事で長剣を握る力が抜けたためアダマンタイトのアーマーに弾かれその場に落ちた。

 騎士がこちらの武器を見誤っていなければ、かなり危なかったかもしれない。

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