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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
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108.前座

 決闘が行われる闘技場に赴き、待機室で鎧を身につけ静かに時を待っていた。時間が近付くとゼノンも騎士の鎧を纏い待合室に入ってきた。 


「ほう、ルーンウルフを従えているのか」


 ゼノンは入るなり部屋の隅で寝ていたジノに気付いた。そしてソードウルフではなくルーンウルフだと見抜いたようだ。


「正確には戦友ですので、群れの一員と言ったほうがいいでしょう」


「群れか。 中々面白い表現だ。 しかし従魔か、私も何れは所有したいところだな」


 ゼノンはそう言うと近くのイスに座った。

 さすがに立会人のいる決闘中に罠を仕掛けることは出来ないが、何を仕掛けてくるか分からない。油断をしないよう、意識を戦闘状態にまで引き上げる必要がある。


「グレン様 ゼノン様、お時間となりました。 本日、ゴルノス・グレイブ侯爵様は代理人を立てるそうございます」


 闘技場の職員に呼ばれ、薄暗い通路を抜ける。

 立場のある貴族や長男なら代理人を立てる事もある。ゼノンも私も長男ではないために、誇りを賭けて自ら戦ったが、侯爵家の長男なら代理人をたてるべきところだろう。

 円形の闘技場の周囲には座席があり、そこには多くの貴族の子息や子女が座っていた。どうやら自らの力を見せ付けるのにも利用するつもりのようだ。

 それなりの観衆の眼がある以上、ゴルノスも敗北を認めないことはないことはないだろう。こちらとしても好都合だ。

 立会人となる闘技場の支配人が大台の上に立つ。


「まずは決闘の相手として相応しいか。 彼らと戦ってもらいます」


 まずは前座。侯爵家の代理人と戦うのに相応しいか理由をつけさせ、少しでも体力や魔力を削っておこうと言う算段だろう。


「20勝中のコロシアムの戦士 フィリップ」


 反対側の大きな扉が開くと、10匹のソードウルフと人間が出てきた。

 獣使い。さすがに10匹も居ると普通なら手間取りそうだが、ちょっと今回は運がなかったな。魔狼であるルーンウルフのジノが居る以上、魔獣のソードウルフでは相手にならない。

 ゼノンも相手に対して気の毒そうな顔をしている。


「ゆけ!」


 獣使いフィリップはムチを地面に叩きつけ命令を下したが、ソードウルフたちは動かず、尻尾を下げ震えている。

 ジノは欠伸しながら座っているだけなのだが、本能的に戦いにならない事を本能的に理解しているのだろう。


「どうした! 奴等を倒せ!!」


 なんどもムチを地面に叩きつけて命令をしているが、主への信頼とムチの恐怖よりも、ルーンウルフであるジノの方を避けたいようだ。


「ソードウルフにとってルーンウルフは上位なる存在、いくら主の命令といっても攻撃してくるわけがないだろう」


 さすがのゼノンも呆れたように話すと首を左右に振った。ルーンウルフを見た事がある者は少ないだろうが、それでもゼノンのように分かるものにはわかる。獣使いがなのだろう。


「くそが!! だがこれはどうしようもないだろう!!」


 獣使いのフィリップはムチを投げ捨て、人の頭ほど大きいクリスタルを取り出す。


「獣操魔石か?」


 魔物を強制的に従わせるクリスタル、恐怖に震えながらもソードウルフ達はこちらに向ってくる。これで群れの主とは、ソードウルフたちが哀れだ。

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