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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
103/176

103.談話


「え……あの、でもなんで」


「まずはその不安げな顔を洗って、化粧をなおしてきなさい。 皆も手伝ってあげて」


 いつの間に付いてきていたのか、サーシャの取り巻きの貴族の子女たちに問答無用で連れて行ってしまう。サーシャにも派閥と言うか取り巻きが居るのか。


「どうして手を貸したんだ?」


「上手くいけば、年齢からしてイノの知り合いになれるわ。 今は恩を売っておくのも大事よ」


 本当に貴族として立ち回りがわかっているというか。そこまで思考が巡らない私自身が嫌になる。

 身嗜みを整え直した子を連れ、サーシャと再び他の貴族と

 そうはいっても、当たり障りも無い話と相槌を打っているだけだが、それでも自慢話が好きな貴族の話を聞くだけで相手は満足する。

 そんな中、煌びやかな服の上からでも、一際体格の良さが分かる男が近付いてきた。


「これはグレン殿ではないか。 決闘以来だな」


「ゼノン殿、 お久しぶりです」


 子息や子女は貴族ではない為立場の上では上下はない。むろん親の権力を傘に着ることは多々あるのだが。

 あの一件以来ランドルフ伯からは正騎士になるよう薦められたり、子息であるゼノンと共に何か功績を挙げ、自ら家を立てるよう注意を受けたりと、お互い長男でもない件によって個人的な関わりが増えてからはそれほど仲は悪くない。


「婚約おめでとうと正式に伝えさせてもらう。 そしてこちらが私の婚約者 ローニャ」


 もう婚約者が居るのかと内心驚いたが、考えてみればランドルフ伯爵の子息であり正騎士、相手など幾らでもいる。

 紹介された婚約者はとても穏やかな表情で、小さな角には飾りが付けられ、綺麗な茶色の髪を後ろでまとめている。貴族の第一婦人として珍しく、人間族ではなく小柄なミノタウロス族で、どことなくナルタに似ていた。

 どうもゼノンは庇護欲をそそられる、胸が大きく大人しい女性が好みのようだが、乳母がミノタウロス族だったのだろうか。


「少し話をしたいのだが」


「私がローニャさんと話しているから、いってらっしゃいな」


 軽く背中を押されるようにバルコニーに移動し、他に誰もいないことを確かめ話を始めた。


「あれの隣によく居られるな……。 私としては命をいつ奪われるか恐ろしく思うのだが」


 何事かと思ったが、どうやら決闘の一件からこちらに戻るまでの間、サーシャが盗賊団を潰して回ったり、罪人狩りを嬉々として行っていた事を知り、とんでもない相手だったと気付いた様だ。

 昼間に殺しあった事を知ったらどうなることやらだ。


「元々そういう女性ですから、油断しなければ大丈夫ですよ。 それよりも新しい婚約者の方はお美しいかたですね。 同じ伯爵家の方ですか?」


「あぁ、南部の領地を治めている家柄で、とてもいい女だろう」


 ミノタウロス族で伯爵となると南部地域、エルフが統べる大森林国との境を治めるローネシア・バロン・ヒゼン家だろうか。


「有名なヒゼン家の令嬢ですか」


「私から婚約を申し込んだのだ。 条件として子爵以上の爵位を得ることを条件にされたが、功績を積んでいけば数年で地方領地の子爵にはなれるだろう」


 数年で子爵位を得られる見込みがあるとは、さすが歴史のある伯爵家。爵位を推薦する伝手があれば後は実力さえ身に着けば簡単なのだろう。

 他にも軽い雑談をしていると、少々大きな音が形状から聞こえてきた。


「騒がしいな。 またどこぞの馬鹿子息が決闘でも叩き付けたか?」


「恒例なんですか」


「王都付きの連中はプライドだけが高い奴は多い。 2男3男ともなれば夜装会ではいつもの事だ」


 バルコニーから騒ぎの中心へと赴くと、そこには見たくない光景が広がっていた。

 騒ぎの中央では、サーシャとローニャが庇うように、先ほどの子を挟んで貴族の男と対立した状態になっていた。

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