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異世界に転生者は不要   作者: 赤崎巧
3章 戦争へ
102/176

102.社交界

 社交界、王都近隣の領地を持つ貴族や王都内でクラス貴族ならば定期的に出席し、顔繋ぎや利権の駆け引き、若い貴族同士の結婚活動などを目当てに行われる社交の場。特に夕方から夜に掛けて行われるのは、規模が大きく貴族の子達は着飾って参加する。

 ソーディアン家は王都から離れている上、魔物が多い領地の為ほとんど出席したことはない。

 兄クロムについては貴族同士のやり取りではなく、養成学校時代からの付き合いですでに婚約者が居る。 兄セズは結婚するつもりがない。

 私も一応婚約者が居るのだが、今回はサーシャと共に出席するよう義姉から命令されていた。



 夜会が始まると、煌びやかな服装を纏った貴族達は、互いの立場に相応しい相手や妥協の出来る範囲で相手を探そうと、グラス片手にダンスや話し相手に声を掛けている。

 私は積極的に出る必要もないのだが、リーゼルハルト公爵に由縁のある身、礼節に問題がないよう笑顔を作り、無難な話に相槌を打ちながら時折給仕が持ってくるワインに少しだけ口を付けていた。

 

「グレン、ちょっときて」


 サーシャに呼ばれ、ワイングラスを給仕に返してから向う。

 昼間とは違い藍色のドレスに、銀のサークレットやイヤリング、所々に魔石が装飾として埋め込まれており、元々の美貌と合わせて紅い髪と目に一際周りの眼を引いている。

 

「なにか?」


「付いてきて」


 サーシャの横に立ち共に歩いて行く。他の子息達が小声の話が耳に届く。


「あの人 盗賊狩りの 鮮血姫 じゃないかしら」


「罪人狩りの 首狩り嬢 だろう」


 大分派手に行動していたようだ。それにしても余り良い響ではないな。

 連れられて到着した場所は会場の隅、壁際には積極的に出れない男女が大抵居る。もちろん夜会に不慣れもあるし、家の事情で出席はさせるものの、余り関わりをもたないようにという配慮の為などさまざまな理由だが。


「下品な男爵の娘」


「金で買った爵位の芋娘」


 クスクスとわざと聞こえるような声での陰口が聞こえる。

 金で買った貴族、実際あることだが、まだマナーが出来ていないのか、わざと聞こえるように貴族の子息や子女が陰口を叩いている。品位は歴史やお金では手に張らない。生まれつきもしくは教育だけだが、まだ教育不足なのだろう。

 視線の先にはまだ10代前半に見える。金髪を左右に揺らしながら不安そうな表情で周囲をきょろきょろ見回している。たいていの場合慣れた姉や教育係などと来るのだが、どうやら初めてなのに一人で困惑しているみたいだ。藍色の眼にうっすら涙も浮かんでおり、酷な事だ。


「あなた、今夜がはじめてかしら?」


 サーシャに声をかけられて、一瞬驚きいたようだが、戸惑いの表情を浮かべている。余り話すのも得意ではないようだ。


「その……、そうです」


「そう、それなら笑顔で居なさい。 きょろきょろせず、不安そうな表情をしてはだめ。 きつくてもそれが貴族の社交界よ」


「でも……その、すみません」


「今回は笑顔を作って私に付いてきなさい」

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