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オイシイところをいただきます  作者: 池田 ヒロ
第一章 それでも選ばれし者か
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5話 マリスはジャスティスが史上最低の勇者だと判断する

 人間、勢い余って発言をするものじゃないな。ジャスティスは後悔をしていた。彼は世界を守るため、魔王を倒すために家を出ねばならなかった。町の外にはあちこち人を襲う魔族たちがうじゃうじゃいる。彼は最低限自分の身を守るための武器装備が必要であったが――。


「剣を持っていないのか?」


 自身が生まれ、育った町を出たときにマリスにそう言われた。現在のジャスティスの武器はまきわり用の斧、しかもちょっと刃が欠けている。


「金がないんだよ。お前が俺に剣を買ってくれるってんなら話は別だけどよ」


「やらないし、ボクはお前じゃない。マリスだ。自己紹介もしたから覚えろ」


「じゃあ、マリス。ところでマリスは魔法が使えると言っていたけど、魔法ってどういうのなんだ?」


 率直に気になっているのか、そう訊いてくる。マリスの魔法をまだ知らないクロウも肩で羽を休めてこちらを見ていた。


「気になるのか?」


「うん。というか、これから一緒に旅をするならば、互いのことを知っておいた方がいいだろ」


「それならば、先に名を名乗れよ。名前は知らないから」


 名乗っていなかったか、とジャスティスは頭を掻いた。あの時は神官たちが詰め寄っていたから名乗れていなかったのかもしれない。これを機に彼は自身の自己紹介をする。


「ジャスティス。正直言って、楽して魔王を倒したい」


正義ジャスティス……ここまで名前負けしているやつを初めて見た気がする」


 そちらが名乗れ、と言っていたのに。名乗った瞬間にこの仕打ち。ひどいな。


「うるさいなぁ。いいか? 正義は他人が決めるんじゃねぇよ。自分自身が決める正しい道なんだよ。だから、楽して倒したいという発言は何も間違いじゃない」


「カッコいいようでカッコ悪い発言ですよ、それ」


 思わずクロウが口を出してしまう。それに同調するようにしてマリスも頷いていたが――。


 げっ。


 一人と一羽は焦ったようにしてジャスティスの方を見た。彼は驚いた (当たり前)のようにしてこちらを見ているではないか。しまった、これぞ人間の罠かとも思ってしまうほどの状況。実際はそうではないのだけれども。


「今、お前のペットがしゃべらなかった?」


「えっ、い、いや。そんなことは……」


 そんなことはあるが、実のところクロウが自分たちの言葉を理解できて、口が利けることを黙っておきたかった。なぜって、動物はしゃべらないから。しゃべる動物や魔法道具がない状態で魔法を使う動物、完全に人間に対する敵意があれば、それは魔族である証拠。クロウはマリスが見てきた魔族たちの中でも一番人間に近付けるような者であると思っていたが、口に出すとあらば――。


「そ、そうだっ! ジャスティスは魔法を見たいと言っていたな!? 今、ここで見せてやるから!」


 魔法を見せて誤魔化そうと手の平に炎の塊を出すが、その魔法の矛先はジャスティスから見てもわかるようにクロウに向けられている。これに慌てて止めに入った。それはいくら何でも、な話だ。


「ま、待て待て待てぇ! お前絶対自分のペットを焼こうとしていないか!?」


「ふ、ふふっ……これでもボクは料理はできなさそうで、できるんだぞ!」


「何の話だよ! いいから落ち着けって!」


 魔法をぶちかまそうとするマリス。それが自分に被弾しないようにして、必死に止めようとするジャスティス。クロウは逃げようにも、動いたら彼女が攻撃してくると思って、微動だにできない。それでも、彼はなんとか落ち着かせるようにした。


「流石にこいつが可哀想だろうがよ」


「だって、しゃべる動物なんて……」


 周りを警戒しているのか、誰もいないかどうかの確認をすると「本来魔王を倒すジャスティスが魔族といたらダメだろうに」そう、消え入るような声で言った。


「大体、人と魔族は対立しているんだから」


「だとしても、人の味方をするなら俺は敵だとは思わないけど?」


「え?」


 今度はマリスが驚かされる番となる。そういう考えを誰かが持っているとは思わなかったから。いや、彼女だけではない。クロウ自身もである。


「それによ、話がわかるペットなら融通が利くしな。何かしら金儲けに使えそう」


 その一言さえなければいいのに。クロウは少しばかりがっかりしながら「改めて」とジャスティスの方を見た。


「私はクロウです。言っておきますが、私はマリスのペットではありませんよ。『案内役』と覚えておいてください」


「おっ、もしかして王都まで案内してくれる?」


 それにはお安いご用ですよ、とジャスティスの腕の中から飛び立つと、二人の目の前へと降り立った。そして、道の先の方をくちばしで差す。


「とにかく、北の方角へ行きましょう。ずっと向かえば、ひとまずは『最初の村』へと辿り着くでしょう。そこで一晩休息を取ればいいかと」


「なんとも安易な名前な村だな」


 その発言に対する反応をどう取ったらいいのかわからない一人と一羽は「行くぞ」と促して一本道を行く矢先に――人間(今日のご飯)がきたと言わんばかりに、彼らの下もとへと二匹の魔族が茂みから現れた。


「のうわぁああああ!?」


 情けない声を上げながら、相手の初撃をかわした。地面の爪跡を見て、ジャスティスは青ざめる。こんなのをまともに食らえば命はないだろう、と。自分は敵わないと判断したようで、マリスを盾にするようにして「行け!」と言い出す。


「行け、行くんだマリス! お前ならば、こいつらは楽勝だろ!?」


「いや、ちょっと待てぇ! どんだけ他力本願なんだ!? 魔王はきみが倒さねばならないんじゃないのか!? それでいいのか!?」


 できれば、同胞を倒したくないマリスはやりたがらない様子。だが、ジャスティスはそんなこと知る由もない。


「大丈夫! お前ならいける!」


 全く以てこの畜生勇者。よくそんな精神の持ち主で救世主として選ばれたよな、と――二度目の思い。


「ジャスティス殿! これはあなたが戦わねばなりませんぞ!?」


 思わず、クロウも口出しする。


「無茶言うな! 無茶を! 昨日までは鉄工房で日銭を稼いでいた一般人なんだぞ!」


 ごちゃごちゃと内輪もめをしている二人と一羽。これに痺れを切らした魔族たちは、待つのを止めてこちらに向かって攻撃を仕掛けてきた。


「うわあああああ!?」


 ジャスティスがあまりの恐怖に大声を出す傍ら、盾にされているマリスは――両手を前に突き出して、魔法を発動させた。自分たちを囲うようにして、地面からは土の盾が出現する。その直後に何かを引っ掻くような音が聞こえてきた。おそらく、魔族たちがこちらに攻撃を仕向けたのだろう。


「ああ、もうしょうがない!」


 土の盾が崩れ落ちると、追撃とでも言うようにしてもう一匹の魔族がこちらに爪を掻き立てる直前に――。


「周りをよく見ろ、周りを」


 束縛をする、つる性の植物。これで魔族たちの身動きは取れやしないだろう。マリスは使えなくなった土の盾を改良して、幾つもの土の棘を作って、その先端を二匹に向けた。


「……行け」


 その合図を機に放たれる土の棘。それはあまりにも硬過ぎたのか。魔族の体には棘が刺さったまま倒れて、息絶えた。戦いを終えてたマリスはあまりいい顔をせずしてその死体を見ていた。いくら、ジャスティスの首を獲るためとは言え、気持ちのいいものではないのだから。そして、そんな彼女の心情を知るわけない彼は「どうだ、見たか!」と自分の手柄だと言わんばかりに胸を張った。


「マリスさえいれば、魔王なんて楽勝よ!」


「いや、魔王はジャスティス殿自身が倒さねばならないんですよ? マリスは戦えませんよ?」


 そこは履き違えないで欲しい、とクロウが説明をするも「え?」と、どこかずれた様子で本気のきょとん顔。


「いやいや、そこはマリスが魔王を弱らせて、俺が止め刺せばいいでしょ」


 爆弾発言にマリスたちは硬直した。今、とんでもないことを言ったぞ、と。まだ、時間はかかってもいずれは自分の手で魔王と戦うというのはわかる。だが、ここまで誰かにおんぶに抱っこ状態となると――もはや、勇者として見ることができない。


 なんとも言えない表情をジャスティスに向けて思うのだ。


――こいつ、戦闘経験を積まさずに、力を解放した瞬間に殺せば楽勝じゃね?

○次回章予告○


『第二章 選ばれし者であるということを証明してみせよ』


 神様に選ばれた『鍵』のかかった魂を持つ者であるジャスティスと共に行動をすることになった魔法使いのマリス。本当に選ばれし者であるか疑わしい彼のやる気を見せるために『安全協会』というところへと入会することに。


 だかしかし、そこで入会したときのジャスティスの本音があまりにもひど過ぎたのであった。


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