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『君ねー…異世界……『ファンタジー?』こんなの売れるわけないじゃなーい?今、昭和何年だと思ってんの?文章は悪くないんだからさ。歴史小説とか書いてみれば?そしたら読んであげるから』
『んだどもオラ……この小説が好きでぇ……宮沢賢治さみでな……』
『あとさー。そのいがぐり頭にズーズー弁でペンネームが『雨宮流星☆彡』?舐めてんの?本名は?』
『勅使河原愛之助っす……』
『いいじゃん!歴史ロマン作家って感じじゃん!その名前で歴史小説書きな!いや!書いてこい!』
『んだどもぉ!』
『口答えするな!いいか!ファンタジーなんて忘れろ!作家になって飯が食いたいんだろ!?』
『……』
☆彡
(あれから30年以上……なんで忘れていたんだ私は……)
「忘れなきゃ……やってられなかったんだろうな。ハハッ!『○○side』?『××side』?私は時代を先取っていたのだなぁ」
物置から自分が初めて書いた小説『異世界勇者マーヴェラス!』の原稿を見つけた愛之助の頭に苦い思い出がフラッシュバックした。
「思い出した……ファンタジーを書くのを諦めて、歴史小説書いて……そうか」
(どうりでスラスラ物語が出てくるはずだ。私は一度この小説を書いている)
☆彡
「お父さんただいまー」
「うん……ええぇっ!?」
その日も執筆していると何事もなかったかのようにマリが帰ってきた。
「あー!腹減ったー」
「マリ!お前誘拐……犯人……騎士は警察に……」
「誘拐?騎士?誰?お父さんなにいってんの?シャワーあびてきまーす!」
「えっ?あれ?……どうなって……?」
☆彡
『騎士?だれそれ?』
『騎士ぃ?そんな気持ちの悪い奴見たら忘れませんよ』
『警察にいたずら電話ですか?』
驚いたことに『騎士の存在』が消えていた。
誰一人として騎士を覚えているものはいない。
「『騎士』なんて奴存在しなかった……?私の妄想?そんなバカな!」
(落ち着け……はて?)
30年以上前に書いた小説の原稿用紙は黄ばんでいたが何枚かが新しいことに気がついた。
「ん?ん?」
順番に原稿用紙を並べてみた。
「ちょっとまて!これは誰が書いた!?」
完結したはずの異世界勇者マーヴェラスの『続き』が誰か自分とは違う筆跡で書かれている。
「これは……子供の字か?これも……これもどこかでみたことが……」
『いせかいゆうしゃマーヴェラス2!はじまりはじまり』
「私は2なんて書いて……」