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大事なのはカタルシス

『大作家Aってマジもんのジジィなの?』


『ジジィがファンタジーかいとるぞwww』


『ジジィのラスボス感パネェ!』


『ラッスッボスッ♪ラッスッボスッ♪(ノ^^)ノワショーイ』


『ジジィ必死やな』


『ジジィ説教プリーズ!』


『もっと頭さげろや。ジジィ。ポイントいれてやらんこともありまへんで~』

 

ネットで年齢を公開し、なろうでファンタジー小説を書き出した愛之助は嫌われ者から一転『なろうの番人』『なろうのラスボス』と呼ばれ『いじられ』だした。※もっともアンチも山ほどいるが。


いい使い方ではないが、今では感想欄は愛之助に人生相談するコーナーにもなっている。


(『一位になりたいんです!なろう読者の皆様!今までのご無礼お許しください!』と謝罪文を書いたのも……良かったらしいな)


(いいですか?お父さん?なろうに多い20代は『最近のゆとりは!』と上司から口うるさく言われいる世代です。お父さんのようなおじさんにね?そんなおじさんが頭を下げて自分たちにお願いする……彼らはバーチャルで『下克上』気分を味わえる訳ですよ。普段自分が頭を下げている世代のお父さんが自分たちに頭を下げておねだりしてる……これはカタルシスですよ!ピンチはチャンス!アンチをファンに変えてやりましょう!)


覚せい剤所持法と窃盗などの罪で捕まった騎士の言葉を思い出した。


(『特別な存在に特別扱いされる』……このカタルシスも小説に大事だな)


(キーワードは『な……何者なんだ!?あいつは!?』ですよ!学校一の美少女が突然主人公に会うためクラスに訪れる……誰もが怖れるヤンキーが主人公には敬語……Aクラスの冒険者も倒せないドラゴンをワンパンする子供主人公……エクスタシーですよ!い……イクッ!です!ムラムラしてきたなぁ……マリの部屋でオナニーしてきてもいいですか?) 


今は檻の中の騎士のことを思い出す。

愛之助はファンタジー小説『異世界転生!勇者マーヴェラス!(仮)』をスラスラとスマホに打ち込む。

(しかしなぜこんなプロットもストーリーもスラスラと出てくるのだ?私にはファンタジー小説の才能があったのだろうか……?不思議でならん)


「しかし目が疲れた。休憩するか……」


愛之助はラノベを手にとって読み出した。


「『スキルを無効化する主人公』と『相手のスキルを上位互換にして自分で使えるようになるライバル』と『全く新しいスキルを生み出せるヒロイン』……誰が勝つのだろうな?」


熱心にラノベを読んでいると電話が鳴った。

熟読していたのを邪魔された愛之助は舌打ちをしながら通話ボタンを押した。


「はい……」


『はい……じゃないですよ先生!今どこですか!?』


(なんだマネージャーの宇都木か……)


「家だが?」


「家!?なにしてるんですか!?今すぐプリンスホテルにきてください!授賞式が始まりますよ!」 


「授賞式……?あっ!」


(思い出した!今日は!)


「勅使河原文学賞』の授賞式かぁ!?」


『『ニーズ』のお二人ももう来てますよ!』


『ニーズ』は中堅お笑いコンビで、コンビのボケ担当『巻足』が書いた『毛玉』を愛之助は授賞作に選んだ。


「ノッてきてたのにな……」



仕方なく着替えてライトノベルを何冊かカバン懐にしまい、自宅前にタクシーを呼んだ。






☆彡

「おめでとう」


「ありがとうございます!」


授賞式。


愛之助は巻足と握手をした。


「ところで先生はラノベとかよみますぅ?」


「えっ!?」


巻足の突然の質問に愛之助はたじろんだ。

巻足の相方の堀部が巻足の頭を叩いた。


「バカヤロー。先生がそんなもんよむわけねーだろ!」


「そーでした!ラノベは純文学の搾りカスですもんね!カス…カス…カス…」


そう言いながら巻足が薄目になってどんどん頬を細めていった。

堀部がまた頭を叩く。


「バカヤロー!お前が絞りカスになってんじゃねーか!」


ドッと湧く会場。


愛之助の機嫌をとるために考えたネタだったのだろう。


少し前までの愛之助なら大笑いしただろうが……

今の愛之助にとっては不快でしかない。


「『ラノベを読んどるか』って?よ・ん・ど・る・よ!悪いかっ!?」


「いたっ!」


巻足の手を思い切り握って懐に忍ばせておいたライトノベル『ノートアンドオロナイン』を堀部に突きつけた。


「読め!」


「えっ?えっ?」


「グダグダグダグダグダグダうんちく垂れて区別差別してる暇があるなら文章をかけ!以上!」


騒然となる会場を愛之助は早歩きで後にした。

なぜか無性に騎士に会いたかった。


(しまった……あれはまだ読んでなかったのに……これから本屋にいかねば……)



『お父さん……よく言ってくれましたね……』


(えっ!?)


脳に直接騎士の声が響く。



『落ち着いてください。今『俺』のスキル……『神秘的交信ミスティックシンフォニー』を使ってお父さんに語りかけています。純文学がライトノベルがと上下をつけたくなる……そんなの馬鹿らしい……文章にもジャンルにも貴賤はないんです……あるのはおもしろいかつまらないかのみ……いや、あと人気があるかないか……あとエロいかエロくないか……長いか短いか……』


(結構あるな!疲れてるな……幻聴か?)


『お父さん……覚えておいてください……『キャラクター』には魂が宿るんです。信じられないかも知れないけど……未来を作るのはあなただ……頼むぜ!』


「何を言っている……?」


『よく頑張りました。はなまるだ!さよなら……創造主メンオブクリエィティブよ……じゃーなっ!』







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