ジャンルはファンタジー
「あらすじが漢字ばかりで読む気にならない!まずは読者に読んでもらわなきゃお話にならないんです!貸して!僕がお父さんの小説を全面プロデュースしてあげます!」
「や……やめろ!」
「人気が欲しいんでしょ!一度人に任せたなら見届けてくださいよー!男らしくないです!」
「くっ……」
愛之助が正座し、拳を握り歯ぎしりするのを横目に騎士は愛之助の小説に手を加えだした。
(歴史ロマン溢れる自慢のあらすじだったのに……しかし読者に『読んでもらう』か……。いつ以来の感覚だ?)
何度も持ち込みをし、何度も原稿を破られた新人時代を思い出して愛之助は皮肉な笑みを浮かべた。
(あれ?今何かを思い出しそうな……?気のせいか?)
「お父さん何笑ってるんすかー?気色悪っ!ゲロの次に気持ち悪っ!できましたよー!」
「……読ませて見ろ」
「自信作です!ブッホッホッホッ!今日はこの辺で!こりゃーガポガポ読者がつきますよー!僕はこれから手伝いがあるんでこれで!」
「ん?手伝い?ほう……お前でも親の手伝いぐらいはするのか?」
「ブヒョウッ!」
『魔法少女ウシカ?シカか!?』と書かれた薄汚れたTシャツをきた騎士はなぜか背伸びをして笑い出した。
その姿は何度もシーハーさて汚れきったつまようじの用だった。
「やだなー!『アフリカの子供が飢えで死んだぶん僕に寿命こないかな?』と思ってる僕がそんなことするわけないじゃないですかー!友達が今シーズンのアニメを無料ダウンロードできるサイトを立ち上げるんでその手伝いに!ヒャッヒャッヒャッ!お父さん!ナイスジョーク!」
「帰れ」
こいつの人間性にはもうなにも期待しまいと愛之助はため息をついた。
(というかそれは犯罪なのでは……?)
「いや……いまはあらすじを読もう……なんだこれは!?」
作者『大作家A』
タイトル『さんごくし!~俺が三国志の英雄や日本の武将を蹴散らして大英雄になってしまい女の子が放っておいてくれない件~』
ジャンル『ファンタジー』
あらすじ~
『なんの変哲もない足軽大将の俺『ヒサノブ』が『時空の歪み(ワールド・コンフューズ)』によって三国志の英雄や日本の武将たちの入り乱れる『異世界』にトリップしちまった!神様の犯した『確率的未来』によってチート能力を手に入れた俺はこの異世界で成り上がり、ハーレムライフをおくることに決めた!果たして俺はこの世界で何を見て何を成し遂げるのか……※ヒサノブ『つーかそこを書けっての!俺どーなるんだよ!?作者!』作者『書いてる俺もまだわかんないんだってば(笑)ほぼ処女作の行き当たりばったりで書いてるからみんな生温かい目で見守ってねー♪』ヒサノブ『さりげなくあらすじを使っていいわけすんなwww』※感想アドバイスなどいただけると泣いて喜びます!おもしろかったら評価ポチーお願いします!かしこ!』
☆彡
「……」
愛之助は右の拳でこめかみをグリグリ押していた。
(わからん……)
アクセス数が1000を軽く越えている……
まだ伸びる……まだまだ伸びる……
(私にとってこここそが異世界だ……しかし)
気になるのは『お気に入り登録数』だった。
アクセスに対してお気に入りは『18』……芳しくない。
(文学を理解できぬ低脳ど……やめよう。悔しいがここで生き残るには特殊なやり方をせねばならぬらしい……考えろ)
「ほうっ?よく見たら感想がずいぶん貯まっているじゃないか?」
感想は次々と送られてきていた
。
『直接会った者の感想しか聞かない』
『自分の作品を少しでも悪く言う奴は低脳』と決めつけていた愛之助にとってネットに小説をあげ、それに感想を貰うというのは新鮮だった。
(どれ……気晴らしに読んでやるか……これで返信などしたら泣いて喜ぶだろうな。ましてや大作家である勅使河原愛之助だと知ったらふふふ……)
愛之助は感想ページを開いて読んだ。