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魔断大帝、回収

 は~い! 前回が急ぎだったので今回は余裕を持って書きました。どうにか書き切り、このお話も次で終わりになりそうです。どうなるかと思ったけど、よかったよかった。

 いや、すみません。行間あけていませんでした。

「水鏡! そんな実態の無い影に構っていないで、先に飛燕を倒すぞ!」


「確かに……傀儡の相手をしても骨折り損か」


 どうにかファイナと合流したいところだが、天見の相手である影は間合いをはかることもせず、息をつかさず彼に襲い掛かる。


 著作権フリーの体属性の魔法を使えば、どうにか斬撃を避けられるが、それでも隙を見せれば一太刀でやられそうな迫力がある。


「ファイナ! そっちから来られないのか!?」


「無茶を、言う、な!」


 お互い敵の怒涛の攻撃にさらされているせいで、どちらかに加勢する余裕もない。


(このままじゃじり貧だ……仕方ない)


 天見は影から目をそらさず、音だけでファイナの位置を確かめ、


「ナンバーツーインストール!」


「〝倍速〟コピースタート!」


 一瞬で発動させた双爆輪唱で飛び蹴りを影に喰らわせ、影を吹っ飛ばした反動で己も逆方向へ飛ぶ。


 勘によるところが大きかったが、運よく天見はファイナと挟む形で飛燕の背後に着地した。


「よし、ナイスだ水鏡! 行くぞ!」


 ここしかない! というタイミングで、ファイナは天見との秘技を合わそうと構える。が!


「ちょっとタンマ。体が痛くて動かん」


 ねじった右脇腹あたりを押さえて、天見が呻いた。


「水鏡ィ!」


 あのファイナも思わず大声を出してしまうほどだった。


「どうやら技術に体がついていかないみたいですの」


 倍速コピーは文言から発言までを早口で行い、それに合わせて動作もハイスピードになる。そのため飛燕の言う通り、天見の貧弱な体ではどうしても無理が出てしまうのだ。日に何度も使えるものではない。


 仕方ないのでファイナは再び作り出した火の槍で、飛燕の水で覆われた刀を受ける。


「よし、もう大丈夫だ。そのまま引きつけておけ、ファイナ!」


 飛燕は鍔迫り合いをしていた状況で力を抜き、ファイナの体を前に泳がせて彼女の背中を柄で打つ。


「ぐっ!」


 痛みに呻いたファイナが倒れ、飛燕は迫っている天見へ、


「水月・三日月の型!」


 水の斬撃を飛ばした。


 天見はそれを避けず、輝く左拳で迎え撃った。その瞬間双爆輪唱が発動し、水の斬撃をかき消しても余りある威力の爆炎が飛燕へと迫る。


 飛燕はその爆炎を体を捻ってかわし、その炎に沿って天見へ向かって走る。


 天見は舌打ちした。飛燕が双爆輪唱を避けたからだけではない。彼女の背後にまた復活してきた影がこちらへ駆けて来ていたからだ。


 影の間近にはまだ起き上がっている途中のファイナがいる。このままだと今度はファイナが影にやられる。


「ファイナ! 後ろから影が迫っている!」


 と、天見が注意喚起した時、信じられないことが起こった。彼を間合いに入れる直前にまで迫っていた飛燕が切り替えし、ファイナの方へと戻って行き――影は影で膝をついているファイナを無視して、一直線に天見へと向かってくる。


「は?」


 あまりの違和感に、天見からキョトンとした声が漏れ出た。


 だがすぐに迫っている影に、のんびりと考えている時間はない。だから、根拠はなく直感で行動を起こす。


 天見は影に背中を向けて逃げ出し、ファイナと飛燕の方を見る。


 飛燕が飛び掛かってくる時にはファイナも立ち上がっており、刀を槍で受け止める。


 それを確認しつつ、天見はベリメスにアイコンタクトを送る。


「ナンバースリー、インストール!」


「〝縮小〟コピースタート、七五%! 雨上がり、晴れ渡る青空に映える白。天空に浮かぶ雲に、自由に飛び立つ鳥の姿――平和の象徴! Ⓒシャロン=ニスレスト!」


 天見は自分の周囲に十数羽の光る鳥を作り出し、一斉に飛燕とファイナへ向かって放つ。


 二人は横手から来た鳥に気づき、離れて後ろへ跳んだ。


「ファイナ!」


 天見が呼びかけ、ファイナに向かって指鉄砲を見せ、それをクルンと回したハンドサインを出した。そのサインに気づいた飛燕がファイナを足止めしようと構えたが、それを邪魔するように光る鳥がまとわりついた。


 鳥一羽一羽には攻撃力もないのだが、十数羽も顔の周りに集まられると眩しい。それに通常より小さいので、斬ろうとしても中々当たらない。


 天見はファイナとすれ違う時に一言伝え、ファイナは驚きつつもコクンと頷いて、正面衝突さながらに近づいて来る影に目を向ける。


 そして、ファイナと影が接触した。


 結果、ファイナが影に抱きつくような形で踏み止まった。すると、影は彼女に抱きつかれているというのに、振り払うことも攻撃することもなく、ただただ前へ前へ行こうと両手両足をバタバタさせていた。


「……そうか。そうだったんだ」


 天見は正解を見てから、証明法に気づいたように呟く。汗をぬぐう仕草で、脇差に斬られて血を流した頬を触る。


「どういうこと、天見?」


「つまり、あいつは魔断大帝の脇差で最後に斬った相手だけを襲うようにできているんだ」


 その時、飛燕が天見の背中に斬りかかった。しかし、天見は尻餅をつく寸前まで腰を落とし、首をすぼめて避けた。


 避けられると思っていなかった飛燕は驚き、


「キャンセル! そしてナンバーツー、インストール!」


「〝倍速〟コピースタート!」


 天見の輝く右の裏拳が避けられず、飛燕は喰らって吹っ飛んだ。


 しゃがんだ状態のまま体勢的にも無理をして双爆輪唱をくり出した天見と、平和の象徴を中断したベリメスは舞台上に座り込んだ。


 飛燕の死角からの攻撃を天見が避けられたのは、平和の象徴で作った鳥と視界が繋がっていたからだ。あえて隙を見せて攻撃を誘発させた。


「み、水鏡、こっちもどうにかできないのか? こいつ、力も中々強い」


 ずっと影を押し留めているファイナからヘルプが入った。


「つまり、そいつは飛燕さんの意思で動いているんじゃなく、魔断大帝によって動いているんだ。だから――」


 天見は立ち上がって、ベリメスもフラフラと彼の肩に乗ってきた。その時、懸命に押さえていたファイナの腕の中から影が姿を消した。


「え?」


 呆けた声をもらして、ファイナは空気をかいて前につんのめった。


 天見は嫌な予感だけで地面を蹴って前に跳んだが、その直後に背中に熱い衝撃を喰らった。


「――っく!」


 前に跳んだ分傷は浅かったが、すぐに影は逃げた天見を追いかけて、脇差を突き込んできた。


 天見は俯いて脇越しに後ろの影を見て、体を無理にねじって突きをかわした。だが、その突きは天見の眼前で止まり、すぐ切り返しで薙ぎ払われた。


 脇差に押されるような形で吹っ飛ばされ、天見は舞台上を転げ回った。


「水鏡!?」


 そうなった経緯が分からず、ファイナは混乱したままとにかく天見を助けようと無防備に走り出し、


「影法師は一定時間動けなくなった時、対象の背後に出現するんですの」


 体勢を低くして走り込んできた飛燕が、膝を伸ばしながらファイナの体を斜めに斬り上げた。


 ゆっくりとのけ反るファイナの背後で、飛燕は彼女の足を払って倒し、馬乗りになって喉元に刃を突き付ける。


「大人しくしているですの。もう少しで終わるですの」


 言われて、ファイナは自分の状態も考えず天見の方へ顔を向ける。


 顔面を強く打ったのか、鼻から口から流血している天見が這うように太刀と脇差を避けた後に、蹴りを受けて舞台の端まで追いやられていた。


 天見はどうにかして立て直したいところだが、相手は影だからまったく息をつかずに攻撃をしてくる。


(反則だな)


 体中のあっちこっちから鈍い痛みが響いて、もうどこが痛くないのかも分からない状況で、天見は神具に対してそんな感想を持つ。が、自分も神具持ちだと思い出すと、今まで戦ってきた魔法使いもこんな風に感じていたのかと思ったら、なぜか笑えてきた。


 そんなことを頭の隅で考えつつ、メインではしっかりと対応策を考えていた。


「ベリメス!」


 天見は舞台に突っ伏し、腕の力で起き上がろうとしている時に声をかけ、


「ナンバーセブン、インストール!」


「〝拡大〟コピースタート! 四〇〇%!」


 天見を中心に水球が広がり、迫っていた影も水の中に入った。


 影は泳ぎを知らないのか水の中をジタバタともがき、天見は効果終了まで水の感触を味わっていた。


 水球は数秒で形を失い、天見と影の足が舞台に下りた。すぐに影は天見へ迫るが、彼は著作権フリーの体属性で攻撃を避け、影の後ろへ回った。


 そして、左手の指に力を入れてかぎ爪のような形を作った。


「人間相手に試せなかった使い方、遠慮なく試させてもらう!」


「ナンバーツー、インストール!」


「コピースタート!」


 影は舞台を蹴り、天見へ猪突してくる。


「二頭一対の理に爆砕せよ! 双爆輪唱! Ⓒファイナ=グリューテイル!」


 天見は影の太刀を避けて懐に飛び込むと、輝くかぎ爪の左手で影の右手首を掴んだ。


 魔法が発動し、天見の手の中で炎が爆縮した。双爆輪唱が待機状態になっている手でものを掴んだことで、手の内側で魔法が発動したのだ。あらゆる方向から中心に向かって放たれた炎の威力は凄まじく、天見の左手は弾かれて彼自身もその勢いに飛ばされて後ろに転んだ。


 掴まれた方はというと――右手が弾け飛んでいた。


 影が右手で持っていた魔断大帝・脇差は夜空高く吹っ飛び、影は平面に戻って地面を走り、飛燕の足下へ戻った。


「俺を斬ったことを記憶している魔断大帝を切り離せば戻ると思ったけど、ビンゴだったな!」


 天見はすぐさま体をひるがえして立ち上がり、魔断大帝の落下点へ走る。


 それに気づいた飛燕もファイナの上から離れ、走り出した。


 喉から刃が引かれ、ファイナは咳き込みながら起き上がり、


「ファイナァ~!」


 天見の声にビクッと反応した。目をやれば飛燕の背中はドンドン遠ざかり、その向こうにいる天見は脇差なんて見ておらず、ジッと自分を見ていた。


 そのことに「あ!」と心象で気づいたファイナは、ガジェットを起動させる。



 魔断大帝の脇差はちょうど天見と飛燕の中間ぐらいに落ちそうだ。


 飛燕は天見がまだ踏切のモーションに入っていないのを見て、刀を舞台に突き刺し、鍔に足を引っかけて高々と跳んだ。


 そして、飛燕が空中で脇差をキャッチした時、背後の方で激しい音が上がった。肩越しに確認すると、ファイナが双爆輪唱を足で使って、猛スピードで飛燕の真下を目指して飛んでいた。


 真下では天見も足を止め、拳をくり出す体勢を取っている。


 その段階に至って、飛燕は自分の失敗に気づいた。魔断大帝を取られまいと焦るあまり――『連理の枝』に挟まれてしまった。


 あの二人があそこから著作権フリーで秘技を成功させたことがあることを、飛燕は手紙で知っている。このまま重力に従って下りたら確実にやられる。しかし、魔法を使おうにも、ガジェットがついている刀は踏み台に使ってしまって手元にない。


 完璧な作戦だった。


 飛燕は悪あがきのように、天見へ向かって魔断大帝を投げた。しかし、それは予期していた彼に軽々と避けられた。


 そして、天見の狙い通りタイミングバッチリに飛燕は舞台に下りた。彼女の背後からファイナが火球を叩き込み、同じタイミングで天見が前から――。


「っ!?」


 ファイナは驚愕した。天見がまったく動いていなかったからだ。


 秘技が失敗に終わり、飛燕は体を回転させてファイナの顔を肘打ちし、地面に突き刺していた刀を抜いて、天見を袈裟切りに斬った。


 天見は胴に深い傷を負っても倒れることすらできず、拳を構えている体勢のまま固まっている。


「そうか!」と分かったファイナはグラグラする視界の中、ぼやける相手を蹴った。それは狙いがほとんど外れていたので飛燕は難なく避け、二人から離れる時に天見の影に突き刺さっていた脇差を抜いて回収した。


 天見がぐらりと倒れてくるところを、ファイナが抱きかかえた。


「水鏡!」


 声をかけるが、反応はない。ヌルッと生暖かい感触が手につき、ファイナが自分の手を見下ろすとベットリと血がついていた。


「――ッ! ベリメス!」


 すぐさまベリメスに回復を頼むが、彼女は沈痛そうな顔でかぶりを振る。まだ、勝負はついていない。この状況で回復を受けるのは天見が望まないと、分かっているからだ。


 そんなことはファイナだって分かっている。だが、そんなことにこだわっている場合じゃないと、心象も当のファイナも叫ぶ。


「ベリメス!」


 しかし、頑なにベリメスは動こうとしない。


「降参……するんですの?」


 離れたところから、飛燕が確認をしてくる。ファイナは焦るまま、深く考えずに宣言しようとした。が、そうはさせないと天見が彼女の口を手で塞いだ。


「バカ……『連理の枝』で戦っているんだぞ」


 天見とファイナの『連理の枝』が黙認されているのは、二人が敗北するまでだ。この戦いが非公式とはいえ、『連理の枝』として負けたらどうなるか分からない。


「だが――!」


 なお反論しようとしたファイナだが、近づいてきた天見の蒼白の顔を見て言葉に詰まった。天見はファイナの肩に顎をのせ、寄りかかるようにして彼女の耳に口を寄せて短く話した。


 そして、天見は傷口を押さえながら飛燕に体を向ける。


「まだやるんですの? これ以上は危険ですの」


「幸い、俺のコピーは体力によって威力が左右されないんで…………。それに、俺にはまだ、頼れるパートナーがいます」


 ファイナはゆっくり天見から離れ、一足飛びに飛燕へ接近した。右手を輝かせ、双爆輪唱を待機状態にして隙を見出そうとしているが、勝負を焦っているためか動きが大きい。


 飛燕はファイナの右手には触らず、彼女の攻撃を受け流していく。しかし、実際彼女もそう余裕はない。体力は削られているし双爆輪唱も一発モロに喰らっている。


 それに、燕の親友をこれ以上傷つけるのは気がひける。


 飛燕は先程のファイナの焦り様を思い出し、チラリと天見に目をやる。もう立っているので精一杯の様子だ。


 飛燕は太刀の切っ先をファイナに向け、刀身に溜まっていた水を水球にして放出し、彼女を後方へ飛ばした。そして、天見へ向けて走る。


 天見にトドメを刺す素振りを見せれば、ファイナから降参するだろう。


「ナンバーツー、インストール!」


「コピースタート! 二頭一対の理に爆砕せよ!」


 飛燕は向かいながら驚いた。相打ち狙いだろうけど、まだそうやって体を動かせる気力があることに。


 そう言えば燕の手紙に、魔法戦の時の天見は理解不能で常識が通じず、波乱を起こすことに定評があると書いてあったことを思い出す。その通りだなっと意識を切り替え、油断なく彼を見据える。


 天見は動けないようで、ギリギリまで飛燕を引きつけて魔法を使うつもりのようだ。


(なるほど)


 と、飛燕はチラリと視線を下に向け、天見の影を確認した。


(よし、いけるですの!)


 そして、二人の間合いが近づき、


「双爆輪唱! Ⓒファイナ=グリューテイル!」


 天見が発言を唱えて輝く拳を突き出そうとした時――飛燕の左手が動き、魔断大帝が再び舞台に突き刺さって天見の動きを止めた。


 天見の動きが止まったので、飛燕は足取りを緩め、固まっている天見の首に刃を突き付けて、背後にいるファイナに顔を向けた。


「さあ、水鏡君の命が惜しければ降参するですの!」


 天見が人質にとられたことで観念したのか、ファイナは脱力して肩を竦める。


「自分の体を使う魔法の時はそうなるとはな」


「え?」


 ファイナの言葉が分からず、飛燕が疑問符を上げた時、


「リスタート(再開)!」


 ベリメスの声が響き、天見の行動が再開されて輝く拳が飛燕の腹に深く叩き込まれた。そして爆炎に呑み込まれた飛燕は吹っ飛び、舞台から飛び出て観客席の壁に叩きつけられて地に伏せた。


 拳の輝きと炎が消え、天見の影は月光の位置に戻り、魔断大帝に突き刺さって倒れる寸前の動きを止めた。


 ファイナは最後の最後まで油断なく飛燕を見ていたが、しばらくしてもピクリとも動かない。


 よって、その場にいる全員が天見とファイナの勝利だと認めた。


 すぐさまベリメスは天見の治療に入り、急いで止血した。ファイナも天見に近づき、彼を抱きかかえてから、魔断大帝を舞台から引き抜いた。急に体重を感じたが倒れず、ゆっくりと天見を舞台上に寝かせた。


「本当に水鏡が言った通りだったな。一度影の場所を確認して勝利を確信したら、あらためて影を確認しないって」


「精神的油断ってやつかしらね。ま、実際に動きが止まったから、騙されても仕方ないとは思うけど」


 飛燕が魔断大帝で天見の影を突き刺す前に、彼の影は双爆輪唱の光で場所が変わっていた。そのため、魔断大帝は影から外れ、その効果で動きが止まることはなかった。


 しかし、そうやって攻撃しても満身創痍の天見の攻撃では飛燕に避けられたかもしれない。そのため、〈赤の書〉ヴァージョンスリーの「フリーズ(一時停止)」で動きを止め、魔断大帝で固まっていると誤認させた。


 あとは飛燕が完全に油断している状況でベリメスが再開させ……こういう結果になったのだ。


 その三人の下へ、燕と鋼燕が近づいてきた。飛燕の方には燕が言って刀祢を行かせていた。


「飛燕が承諾した勝負だ。文句は言わん。魔断大帝を持って行くがいい」


 鋼燕の武芸者としての意地か、勝負の結果を素直に受け入れている。もうゴタゴタしなくていいと、ベリメスとファイナはホッと安堵した。


「だが、怪我が治った時には俺と戦ってもらおうか」


 と、背中からオーラを噴き出しながら言ってくる。


「やめろ、大人げない」


 後ろからのチョップで鋼燕が振り返ると、そこにはパジャマ姿の(病院から抜け出してきたのだろう)錬磨が立っていた。その隣に立っていたセリアは、慌てて天見に駆け寄った。それを鋼燕と錬磨は見送ってから、


「大まかな話はお嬢さんから聞いた。どうやら、俺とおまえがいさかい合っていると、それぞれの流派の未来に支障をきたすようだ」


「どういうことだ?」


「俺もさっき聞いたばかりで確認を取っていないから、今は言えん。うっかりおまえと俺で死闘を演じるはめになりそうだし」


 まあ、鋼燕にしてみれば娘と憎き男の息子が隠れて付き合っていたことになる。我を忘れて激昂しても不思議じゃない。


 鋼燕は頭上に疑問符を浮かべ、要領を得ないことに不満げで顔をしかめている。錬磨は苦笑して彼の肩をポンポンと叩き、


「とにかく、魔断大帝が無い方が歩み寄りやすいということだ。勝負の結果だ、受け入れろ」


「なぜ貴様の言うことを聞かんといけない」


「……なら、娘と同い年の相手にムキになるのか? 大人げないし、娘の前で恥ずかしくないのか?」


「む」


 言われて、鋼燕は燕の視線を感じて、渋々と重たいため息をついた。


「…………燕、おまえの友人は大丈夫なんだろうな? 魔断大帝を悪用するようなことはないか?」


「というか~、水鏡さんなら使わないと思うな~」


 実際、今回の勝負でも天見は魔断大帝の太刀を持っていたのにまったく使わなかった。その答えで鋼燕はぐしゃぐしゃの線を頭上に浮かべた。


「なら、どうして躍起になって手に入れようとしていたんだ」


「さあ~。水鏡さんの行動を理解するなんて面倒なこと、私はしようとしないから~。そこら辺のことを聞きたいなら、あっちに聞いて~」


 燕が指差すのは、天見の周りにいて心配そうにしているベリメスとファイナとセリア。


 さすがにそこまで野暮じゃない鋼燕は……後ろ髪を引かれる思いもあるが、魔断大帝を諦めた。

 というわけで、今回は秘技が不発に終わりました~! まあ、まだ成功率は高くありませんし、双爆輪唱でやるには危険ですから。それにヴァージョンスリーの一時停止で、魔断大帝の動きを止めるのを誤魔化そうと決めていたので。

 これにて魔断大帝の回収は完了です。あとはまあ、のんびりエピローグをして終わりですね。まだ書いてませんけど。

 というわけで、次回予告はエピローグです!

 更新は来週の金曜日予定です。最後までお付き合いしてくださると嬉しいです。

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