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ファイナVSテオキル

 ふぅ、書けた書けた。この前までフラストレーションが溜まっていたのですが、この話の後半部分からけっこう楽しくなってきました。

〈核魔獣〉戦では、戦う学生達の攻守がキチンと分担されている。それはどちらかに専念させることでミスを少なくし、チップの入れ替える手間もはぶくためだ。


 だが、攻守のグループに属さず、臨機応変に対応するフリーもいる。ファイナやテオキルがそれだ。この二人は実力的に申し分ないだけでなく、チームプレイに不向きなためそれが認められている。


「朱雀宝門流、緋槍!」


 ファイナが投げた火の槍が、〈核魔獣〉のクリアブルーのボディに突き刺さり、ヒビを入れる。


〈核魔獣〉は〈核〉を破壊しなければいけないが、そのためにはまずボディを破壊して〈核〉を露出させる必要がある。


〈核魔獣〉の灰色の〈核〉が鈍く光り出した。すぐさまファイナはチップを入れ替えたが、起動させる前に横手から人が飛びこんできた。


「朱雀宝門流、寂静火壁!」


 フリューゲルが腕を振るうと地面に火の弧が刻まれ、それが燃え上がって火の壁を作る。それで〈核魔獣〉が全方位に向けて放った闇の波動を防いだ。


「大丈夫ですか、グリューテイル様」


 フリューゲルのパートナーであるネイロが、心配そうにファイナに声をかける。


 無表情のファイナは二人を見て、


「なぜここにいる」


「いくら強くてもファイナも女の子だ。放ってはおけないよ」


「そういう意味で聞いたのではない」


 珍しく、ファイナの言葉に分かりやすい険が入った。フリューゲルとネイロは戸惑ったが、ファイナは何も言わずチップを入れ替え、二人を無視して〈核魔獣〉へと走る。


「バーニングハート! グランドフィスト!」


 テオキルの体から炎がわき起こり、巨大な拳を形作る。彼自身の動作に連動し、炎の拳が〈核魔獣〉のボディを破砕する。


 そして、後方から学生達の魔法が着弾し、ついに〈核〉が露出する。


「二頭一対の理に爆砕せよ」


 ファイナは〈核魔獣〉のボディを蹴って、〈核〉の場所まで跳び上がる。


「双爆輪唱!」


 光る右拳を下からアッパーで〈核〉に叩きこみ、爆炎が〈核〉を砕いた。ガラスが割れるような音を立てて、〈核魔獣〉は空気中に霧散した。



 戦闘後、ファイナはムセイオンのシャワー室で汗を流した。時間をかけず手早く済ませて上がる。


「ファイナ姉様、見事な活躍でした」


 リラはファイナに頑張って合わせ、わたわたと後を追ってくる。


「別に」


 長い髪をタオルで押さえつけるようにして水分を取り、ゆっくりと乾かしていく。


「リラはあまり前に出なかったな。後方で魔法を使っていたようにも見えなかったが」


「気にかけてくれていたのですね」


 晴れやかな顔に暑苦しさを感じて、ファイナは若干リラから距離を取る。


「ボクはまだ中等部ですので、あまり差し出がましいマネはしない方がいいかと思いまして。もちろん、ファイナ姉様がピンチになるようなことがあれば、駆けつけるつもりでした! ボクはファイナ姉様のパートナーになって、後ろから支えるのが夢ですから」


「随分と熱烈ね」


 声に振り向けば、椅子に座って背もたれに寄りかかっているピエルナがいた。


「あなたは何もしなかったな」


 ファイナに言われてもピエルナは気にした様子も無く肩を竦める。本当に彼女は何もしなかったので(校庭に下りることもなかった)、シャワーを浴びる必要が無いので服のままだ。


「タダで〈核魔獣〉と戦うなんて御免よ」


「では、なぜここに来たのだ?」


「ま、付き合いよ」


 その適当に流す感じにリラはイラついたが、ファイナの方は「そうか」と流した。


 そして、身支度を終えて三人が外へ出ると、フリューゲル組とテオキルの三人が待っていた。


「〈核魔獣〉のことも済んだことだし、いよいよ本格的にファイナのパートナーのことを話し合おうと思うんだ」


「その前に、キミは本当にいいのか?」


 と、ファイナがネイロに尋ねる。自分に声をかけてくれたのにビックリしてか、ネイロは少し緊張した面持ちで姿勢を正した。


「自分から『連理の枝』の座を奪おうとする私が気にくわなかったり、他の女に乗り換えようとするフリューゲルが憎かったりしないのか?」


 ストレートの問いに、ネイロは優しげな顔でゆっくりと首を横に振る。


「フリューゲルさんには今まで大変良くしてもらいました。一緒に練習ができて、わたくしも随分と魔法の扱いが上手くなりました。感謝しかありません。それにグリューテイル様以上に、フリューゲルさんの『連理の枝』が相応しい方はいないと、わたくしも思います」


 ネイロはファイナにニッコリと微笑み、


「わたくしのことは気になさらないでください。フリューゲルさんはとても優しい方です。それに強く気高い。必ずグリューテイル様のお力になり、ないがしろにすることも不安にさせることもありません。間違いなく、今の方よりも友好な関係を築けると思います」


「そうか」


 ファイナは嘆息しつつ返事をした。


「……どうかしたのかい、ファイナ? 随分と疲れているようだけど」


「先程の戦闘でお疲れなのでは?」


「あのピーコーのことがまだ気になってるんじゃないの」


 言われて、ファイナは手で目元を覆おう。自分の感情を知られないよう無表情を信条としているのに、どうやら駄々漏れのようだ。自分でももうダメだと思う。


 心象の自分だけではもう…………このイライラを抱えきれない!


「話し合って決めるものでもあるまい。それに時間をかけるつもりはない。もう私の中では、ほぼ結論は出ている」


 その言葉で周囲に動揺が走る前に、ファイナの深紅の瞳が一人を射抜く。


「テオキル。貴様が私に勝てれば、パートナーにしてやらんでもない」


 ピエルナ以外の全員に衝撃が走った。フリューゲルとリラなんて「そこ行く!?」とモロに顔に出ている。


 当のテオキルはというと、口の端を吊り上げる獰猛な笑みを見せ、


「ウソじゃ――」


 ファイナが放った著作権フリーの火球を顔面に喰らい、ダメージが無いはずの彼は無様によろめいた。


「水鏡は貴様とリラの罠も見抜いたのに、貴様は戦うことが決まった後の攻撃すら避けられないのだな。失望する」


「てめぇ」


 怒りに染まった目で睨まれても、ファイナはそれを涼風のように平然と受け流す。


「言っておくが、水鏡は今まで唐突に襲われまくったが、無防備に魔法を受けたことなどないぞ」


「殺す!」


 テオキルが拳に炎をまとわせて殴りかかるが、ファイナは大きく後ろに飛び去ってかわす。


「こんな狭い廊下では全力も出しにくい。外にでも行くか」


 答えを待たずに、ファイナは走り出した。


「待ちやがれ!」


 テオキルがすぐさま追いかけ、急展開についていけなかった他の人も慌てて追いかけた。そんな中、ピエルナだけがのんびりと歩いて行った。



 先程〈核魔獣〉と戦った校庭に出て、ファイナはガジェットにチップを入れて待っている。遅れて出てきたテオキルはベルトのバックル型ガジェットを起動させ、


「バーニングハート! グランドフィスト!」


 巨大な炎の拳を放った。


「一切を通さぬ炎の断絶――朱雀宝門流、寂静火壁!」


 ファイナが作り出した火の壁が拳を受け、二つの魔法は共に消滅した。


 すぐさまファイナはチップを入れ替え、


「赤き尾の星を掴め! 朱雀宝門流、緋槍(ひそう)武闘(ぶとう)!」


 作り出した火の槍を手の中で回しながら、テオキルに一足飛びで迫る。彼は腕のガードを上げて身構えるが、寸前で彼女の姿が消える。


 目で追っていたテオキルは頭上を見上げ、投げ放たれた火の槍を横に飛んで避ける。


 両者ともに着地し、同じように間合いを開けながらチップを入れ替える。


『起動!』


 二人のガジェットからモザイク処理された文言が現れる。


「紅の時雨に空よ染まれ――朱雀宝門流、紅雨!」


「ガムシャラな熱量を迸らせろ! ――バーニングハート、フレイムブラスト!」


 ファイナが放った数十の火球を、テオキルの直線的な炎の波動が呑みこみ、そのまま彼女へと迫る。


 ファイナは炎の波動を避け、その横ギリギリを走ってテオキルへと迫る。


 その間にチップを入れ替え、


「二頭一対の理に爆砕せよ」


「それは喰らうわけにはいかねえな」


 テオキルは軽く地面を蹴っただけなのに、後ろに大きく下がった。それを見て、ファイナは発言を取りやめる。


「俺のバーニングハートは火の属性と同時に体の属性も鍛える流派だ。攻撃力において右に出る奴はいねえ」


「その分火の〈粒子〉量が少ないため、火の魔法が効きそうだな。万が一の話で聞いておくが、『双爆輪唱』を使える程度の〈粒子〉量はあるのか?」


「俺の体内〈粒子〉量を侮るなよ、楽勝だ」


「ならばいい。さて、基本的な動きは見せてもらった。身体能力はさすがに水鏡よりも上だな」


「あの貧相な奴と比べられる時点で気にくわねえんだよ」


 海で見た水鏡の体を思い出して、より一層テオキルは頭に血が上った。彼はバックルのガジェットにチップを入れ、


「起動!」


 モザイク処理された文言を展開させる。


「燃え尽きることのない紅蓮の意志! かぎろいを背負い、覇者の道を歩め!」


 火炎をまとう右の拳を左の胸に叩きつけ、


「バーニングハート奥義! グレイテストギャロップ!」


 その火炎が全身にめぐって炎をまとう。


 体勢を前に傾けたテオキルが、その場に深い靴跡を残して消えた。


 ショルダータックルを喰らって地面を転がったファイナは、自分がどうして寝ているのか止まるまで分からなかった。


 お腹に響く鈍痛に顔をしかめることもなく、ファイナは平気な素振りですぐさま立ち上がる。先程まで自分がいた近くに、全身を燃え上がらせているテオキルがいる。そして、その背後には炎の轍が一直線に出来ていた。


(あれは、リュートハルトおじ上が使った魔法に似ている)


 などと考えている内に、またテオキルの姿が消えた。


 すぐさまファイナは横に動いたが、肩を引っかけられた。それだけで、上空高くに錐もみ回転で跳ね飛ばされた。


「くっ!」


 方向を見失いそうになりながらも、何とか手をついて頭から落ちることは免れた。


「体を炎の弾丸として相手に超高速で突撃する。単純だろ? だが、それを奥義にまで高めたこの魔法は、強力無比!」


「確かに、避けるのは難しそうだ……起動!」


 ファイナはモザイク処理された文言を展開し、


「二頭一対の理に爆砕せよ! ――双爆輪唱!」


「目にも止まらねえ俺に、当てられると思ってんのか!」


 テオキルの姿が消えた。確かに彼の動きをファイナは目で追えない。拳を当てるのはほぼ不可能だろう。だが、問題ない。ファイナは『双爆輪唱』を胴体前面に集中させ、カウンターを狙っているのだ。


 息が詰まる衝撃の次に『双爆輪唱』が発動し、爆炎がテオキルを呑みこんだ。しかし、ファイナも吹っ飛ばされて再び地面を転がった。


 咳き込みながらも体を起こし、同じように地面を転がっているテオキルを見ようとして、ファイナは心象で驚きの声を上げる。


「報告ではそれを使うのはピーコーだけのはずだったが、ちゃっかり自分のものにしてるのな」


 炎をまとうテオキルは怪我らしい怪我もなく、コキコキと首を傾けて立っている。


「演出のために炎をまとってんじゃねえんだ。生半可な魔法じゃダメージも受けねえ、攻防一体の魔法なんだよ」


「……奥義というだけのことはある」


 テオキルは喉の奥で「くくくく」と笑い、


「まだそんな強気な言葉がほざけるなんてな。立てんのか、おまえ?」


 ファイナの顔は無表情だが、頬に一筋冷たい汗が流れる。二発の直撃で、ダメージが足にきている。立ち上がるのにすら時間が必要で、その調子ではもう次の攻撃を避けることは出来ないだろう。


 今のカウンターが突破口を開くための会心の一撃だったのだが……。


(……どうすればいい? 『双爆輪唱』でダメだとすれば、私に最早手は……)


(手が無い? おまえ『双爆輪唱』を舐めんなよ! この脳筋!)


 頭のどっかから、ムカつく声が響いてきた。心象のファイナに怒りマークが張りつき、当のファイナはスクッと立ち上がった。


「降参でもするか?」


「面白い冗談だ。笑ってやろう」


 ファイナは本当に、薄らとした笑みを浮かべた。その反応に、テオキルは戸惑った。珍しいファイナの笑顔を見たというのもあるが、この状況でどうして笑えるのかまるで分からなかった。


 何かあるのか? と思って、テオキルは探るようにファイナの様子を窺う。


 ファイナの思惑通り――時間稼ぎは成功した!


 その間に必死にファイナは頭を動かし! 回転させ! 『双爆輪唱』の可能性を探っていく。心象のファイナの形相など、当のファイナは微塵も顔に出さず、涼やかな笑みを浮かべ続ける。


 しかし、日頃戦闘は力押しのファイナ。そうそう名案なんて思い付くものじゃない。まず…………考え方が分からない。


 初手から行き詰りそうになったファイナが参考にするのは、


(そうか。自分の魔法だけじゃない。相手の魔法の特徴も考慮しないといけないのか)


 ファイナは目を走らせる。炎をまとうテオキルの全身像。炎の轍。そして喰らった攻撃と自分がやったカウンターを思い出す。


 ファイナはゆっくりと息を吐き、右の拳を前に突き出し、半身になって左の足を大きく下げる。テオキルに対し、右の拳で体を隠す。


「二頭一対の理に爆砕せよ、双爆輪唱」


 単純に右の拳を光らせる。


「来い。貴様の最期だ」


 こめかみに青筋が浮かんだテオキルは、上半身を前に傾け、クラウチングスタートの姿勢を取る。


「へっ! てめぇがすがっているオリジナルごと、吹っ飛ばしてやるぜ!」


 今までの比ではないほどの勢いで、テオキルは突っ込んだ。


 激突の音は、敗者が地面に倒れた後に聞こえてきた。

 どうやら私は、ファイナが元気になると書くのが楽しいみたいです。今一度自分に問いたい。主人公はどっちだ!?

 次回はテオキル戦の結果とファイナのパートナー決めの結論ですね。それと天見か燕サイドのお話……かな?

 というわけで、また次回! と言いたい所ですが、たぶん次回の更新は一回お休みになります。これも書き溜めがなくなったせいか。申し訳ない。

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