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再会、そして……

 あ~……ギリギリだった。今回は、何とか間に合いました。こんな調子で最後まで突っ走れるかな~。ちょっと不安です。

「何があったんですか~!」


 引っ切り無しに繰り返される燕の追及に、天見の困り顔に斜線が入る。


「だから……別に大したことじゃ」


「大したことないことで、あのファイナさんがあそこまで感情を表に出しますか~!?」


「あれには正直、私も驚いたわ」


 天見の肩に座るベリメスがそのようなことを言うので、燕は「ほら~」とさらに彼につめ寄る。


 三人は今、朝食を終えて著作権委員会本部へ向かっている。見学目的ではない。召喚状がファイナの屋敷に届けられたから、行かないわけにはいかないのだ。無視すれば、法的に強制連行される。


 心当たりはある。規格外のコピー魔法使いである天見なら、どういった理由で呼び出されても不思議じゃない。しかし、呼び出された理由を話し合うより、燕の関心事は昨日に向いている。


「どうせまた、言葉少なく変なこと言ったんでしょう~。何を言ったんですか~?」


 観念したように、天見は深いため息をついてから、


「ファイナが『連理の枝』を極めようとしているなら協力できるけど、グリューテイルとして『連理の枝』になりたいなら協力できない。的なことを言っただけだ」


「どういうことですか~、それ!」


「どうも何も、グリューテイルの『連理の枝』にコピー魔法使いが相応しくないのは、説明するまでもなく分かるだろ」


 燕は言葉を詰まらせる。それは分かる。大体にしてグリューテイルの実家があるこの町はピーコーに対して恨みを覚えている人が多い。反感を買わないわけがない。


「でも」と燕は顔を曇らせる。


「あのファイナさんが、グリューテイルを捨てられるわけないじゃないですか~」


「だからって、このまま誤魔化し誤魔化しやって、どうにも出来ない場所に追い詰められてから辞めますじゃ遅い。何か知らないけど、ファイナには時間制限がありそうな約束があるみたいだしな」


 天見はぶっきら棒に言って、頭をかく。


 どうしてそんなにファイナを思いやったことを言って、あれほど怒られることが出来るのか……不思議で堪らない。


(現場を見たかったですよ~、もう~)


 燕はため息をついてから、


「どうにかして、グリューテイルの人に水鏡さんとの『連理の枝』を認めさせることはできないんですか~?」


「九十九%無理だ」


「一%の可能性にかけてくださいよ~」


「イヤだ」


 と、天見はふと足を止めた。


「セリア?」


「はいぃ!?」


 露店で茶葉を物色していたセリアは、背後から声をかけられて肩を跳ねらせるほど驚いた。あたふたと振り返って相手が天見だと気づくと、彼女はすかさず若干顔を俯かせた。今日も帽子をかぶっているので、そうすると顔が全く見えない。


「買い物?」


「……はい。ちょっと、お茶とお菓子を……」


 モジモジと手を体の前で擦り合わせながら答える。


「あ、あの、天見さん……」


「ん?」


「皆さんで今度、うちに遊びに来ていただけませんか」


「いや、さすがに天翔流の道場にコピー魔法使いが出入りしたらやばいだろ」


 タイムラグ無しの天見の答えで、セリアの肩に闇がのしかかった。


 肩に座っているベリメスが、ポコッと一発教育的指導を天見に入れてから、


「一緒にどこかに遊びに行くのはいいんじゃないかしら? この町には見る所が一杯あるんでしょ?」


「あ~、それはいいですね~。昨日の海も全然泳げませんでしたし~、また行きたいですね~」


「あああああ、ううううううう」


「どうした?」


 奇声を出したセリアは「何でもありません」と顔を振ってから、真っ赤な頬に両手を当てて、「天見さんと、海」と誰にも聞こえないように呟いた。


 燕は新たな火種の予感を覚え、


「とりあえず水鏡さん、今は本部に急ぎましょうか」


「どちらかへ行く途中でしたか?」


「うん。著作権委員本部に……あ、セリアも来る?」


「何でですか~?」


 燕が詰め寄って来たので、天見はのけ反って頭に大きめの汗をかく。


「呼び出されたのが昨日の件についてなら、セリアも当事者だったわけだし、俺の身の潔白を証明してくれるかなって……」


「……なるほど~。でもですね~、セリアさんもお買い物の途中のようですし~」


「天見さん、昨日のことで何か疑われているんですか?」


 セリアは顔を上げ、真剣に天見に尋ねる。


「いや、そうと決まったわけじゃないけど、著作権委員に呼び出された」


「行きます。天見さんをちゃんと弁護します」


 以前セリアは天見のことを悪く言われ、言い返せず凹んだことがある。そのようなこともあり、次こそはと思っていたのだ。顔を上げ、気合いが入った返事をした。


「心強いわね」


 ベリメスは楽しそうに微笑むが、燕は微妙な心もちで少し呻いた。


「あ……グリューテイルさんは……」


「ムセイオンに〈核魔獣〉退治に行った」


 今日ついに、〈核魔獣〉の値が警戒値にまでいったのだ。



 海から離れた場所にある、飾り気がない白く四角い建物。それが文化庁、著作権委員会本部だ。その建物を四人は見上げる。


「さてと、何を言われることか」


「ここで考えてもしょうがないわよ。入りましょう」


 ベリメスの言葉に頷いて、四人は玄関前にいた守衛さんに一礼して建物に入った。


「あなた達も来たのね」


「杜若先生」


 出迎えてくれたのは、クレストエルクの保険医兼著作権紛争解決斡旋委員の杜若綾乃だった。今日は白衣姿ではなくスーツ姿だ。


「そう言えば、来ているのよね」


「おはようございま~す」


 綾乃はセリアがいることに不思議そうだったが、


「久しぶりね。天見、聖籠」


 階段から崑崙が下りてきたので聞くタイミングを失った。


「崑崙さん!?」


 燕の驚きの声に、崑崙は手を上げて答えた。


「どうしてここに?」


「ちょっと精神鑑定を受けているね。働くのに問題ないか」


「崑崙さん、著作権委員で働くんですか~!?」


「おそらくね。ん? 今日は一人違うね」


 セリアは崑崙の切れ長で冷ややかな目で見られ、恐縮して肩をすぼめる。


「友達のセリア=フラノール。クラスは違うけど学校は同じなんだ」


 セリアが紹介されている間に、ベリメスは崑崙の足下にいる猫と妖精に話しかける。


「二人とも元気だった?」


 一緒くたに聞かれ、妖精モドリスの頭にペタッと怒りマークが張りつく。


「元気なわけないでしょ。こんな下界で生活させられて」


「上にいた時なんていつも気だるげだったじゃない。そんな元気ある姿を見るのも久しぶりだわ」


「話を聞きなさいよ。元気じゃないわよ」


「まあまあモドリス様」


 猫のミヤがなだめてくれるが、


「そうだ。ちょっと話を聞いてくれる?」


「どうして私が」


「だってモドリスは私達の味方じゃない」


 その一言でまたモドリスの機嫌が悪くなった。



 綾乃と崑崙の案内で、天見達は建物の手狭な会議室に通された。そこには南川紀信とユナ=リーヨンが待っていた。


 紀信はセリアに一度目を止めるが、大して気にもせず流した。どうやら、彼女がここにいても不思議にならないぐらいの事情を知っているようだ。


「よく来た、な」


「来て早々騒ぎを起こしてくれたわね」


 やはり昨日のことかと思い、すぐに燕は反論に出た。


「でも、昨日は水鏡さん、著作権法違反はしていませんよ~」


「そのことについてはこちらで調べがついている。今日呼び出したのは、そんなことではない」


 促され、全員が席についてから本題が始まった。


「水鏡天見を確保しようと動き始めた所があると、報告が上がってきている」


 天見、燕、セリアの頭上に疑問符が浮かんだ。が、燕だけはすぐに気づいた。


「もしかして、水鏡さんのコピー技術を悪用しようと企てる人がいるんですか~?」


「そうだ」


 紀信は頷いてから、若干前のめりになって話し始める。


「水鏡天見のコピーは魔法をコピーする手間を大幅に省略できる。しかも、威力をほぼ完璧に再現できる。ガジェットを利用する現代の魔法で、そんなことが出来るのは水鏡天見とコーピストレスぐらいのものだ。コピー魔法を研究する所なら、ぜひ一度調べたいのだろう」


「コピー魔法を研究している人なんているんですか」


「当たり前だ。コピーガードを外す機械がそこらから勝手に出てくると思うのか? 誰かが作っているからに決まっているだろ」


「そういう輩にあんたを奪われ、著作権を脅かすコピー技術を開発されるわけにはいかないから、基本的に著作権委員はあんたを守ることにしたわ」


「基本的に……」


 セリアの呟きに、ユナは頬杖をつきながら手を軽く振る。


「水鏡天見が自らそういう輩に協力しようとしたら、守る対象から殺す対象に変わるってこと」


 ユナの何気ないセリフに、セリアは息を呑んだ。でも、天見や燕は以前紀信からそのようなことを言われたことがあるので、それを真摯に受け止める。


「魔法を使わせてあげるって言われて、ノコノコついていかないことね」


「やばい。それ聞いていなかったら引っかかってた」


 本気のトーンの返しに、みんなの頭に大きな汗が流れた。紀信は気を取り直すようにメガネを指で押し上げ、


「今、クレストエルクに著作権委員の部署を作っているし、学園には著作権委員が常駐している」


 視線が学園に常駐している綾乃に向けられると、彼女はいつものニコ目で微笑んだ。


「だが、常に守り続けるのは難しいかもしれない」


「私も守りますよ~」


 燕が挙手して存在をアピールするが、


「それは勝手にやってくれ。学生を当てにするようなマネは出来ない、な。実力的に不安があるのもそうだが、夏休み中、ずっと水鏡天見についていられるのか?」


「あ~」


 紀信の指摘通り、燕は来週には実家に帰る予定を立てている。


「だから、出来ることならグリューテイルの『連理の枝』で居続けろ」


 出てきた名前に、天見は嫌そうに顔をしかめた。


「グリューテイルは世界中に太いコネを持つ。敵に回せば厄介極まりない。おまえがグリューテイルの『連理の枝』であれば、そこらの奴なら手も出そうとしないだろう」


「もちろんそれは、グリューテイルがあんたの味方であることが大前提だけど。ケンカなんてしている場合じゃないわよ。ご機嫌でも取りなさいよ」


 もうすでに敵に回して、パートナーとはケンカ中の天見は目元を手で覆う。


「何で知っているんですか」


 紀信もユナもその問いには答えなかった。


 天見は嘆息して椅子の背もたれに寄りかかり、


「どうなるかなんて分かんないですよ。ファイナ次第です」


 適当そうな答えを返した。



 天見達が話し合いをしている間、ベリメスはモドリスと一緒にミヤの背中に乗って、建物の屋上にいた。


 ベリメスの話とは、天見とファイナのことだった。


「と言う訳なの。どうにかして周囲に認められて、穏便に済ませる方法ってないかしら?」


 これまでの経緯を聞き終わったモドリスは、億劫そうにピンクの髪をかき上げる。


「九十九%無理ね」


「天見もそう言っているんだけど、残りの一%って何なの?」


 天見と同じ見解なのがすごい嫌そうに、モドリスは顔を歪める。


「天見はなんか、それを嫌がってるんだけど」


「へ~」


 意外そうに呟いて、モドリスは体を後ろに傾けて両手をミヤの背中につける。青空を少し見てから、チラッとベリメスを見る。能天気な顔だったので、困らせてやろうと話し出す。


「残りの一%は簡単で必勝。やれば向こうの方から額を地面にこすり付けて、お願いしてくるでしょうね」


「何なの?」


「とっても簡単よ。あの人間をあなた、キベリアメスティの遣いだと公言させればいいのよ。そうすれば教会の教えであの人間は私達のすぐ下、天使のミヤと同格、ランク外の人間の上になるわ」


 この世界に広く普及されている『ラデルク教』では、神様がランク分けされている。最上位がこの世を創ったと言われる四柱のアロゴス。その下にベリメスやモドリスなどの神が三十六柱いて、さらに下に天使や神に認められた人(勇者や救世主など)がいる。そして人間はランク外なのだ。


 神によって異世界から召喚された天見や崑崙は、モドリスが言う通り天使と同格のポジションなのだ。


「特殊なコピーも神の御業だからこその特殊となれば、彼に対する全てが一転する。証明する方法もあるわ。忌々しいことだけどあいつは『原初の光輪』を持つ。過去に使った者がいないと言われる創世の魔法なら説得力は十分。それでも足りないなら、あなたがちょっとそこらの聖職者にお告げでもしてあげればいいわ。あの人間を奉ってくれるようになるでしょうね」


 聞いていたベリメスは俯き加減で、顔の前で両手を合わせる。その困っている様子に、モドリスは鼻歌でもしそうなぐらい楽しそうだ。


「……なるほどね。それは手っ取り早いわね」


「でしょ」


「どうりで天見がやりたがらないわけだわ」


 ベリメスは体を起こして、楽しそうな笑みを浮かべる。


「魔法世界を謳歌したいっていうのに、そんな堅苦しくなっちゃつまらないでしょうからね」


 モドリスは「あっそ」と肩を竦める。


「それじゃ、絶対に認められることはないわね」



 ベリメスと入れ替わりに屋上へ崑崙がやってきた。すぐにミヤは彼の足下に駆け寄る。


「ねえ、ちょっと協力しなさいよ」


 崑崙は意外そうな顔をする。モドリスからそんな提案をしてきたのは初めてだったからだ。彼はミヤの上にいるモドリスを観察するようにジロジロ見て、「なによ」という顔で睨み返された。


「何か悪巧みでも考えついたね?」


「失礼ね。私はあいつらの味方よ」


 心にも無いことをと、崑崙はニヤニヤと笑う。


「ちょっと用意して欲しい魔法があるのよ。たしか~…………『双爆輪唱』だったかしら」



「やっぱり今日は少し、人通りが少なかったな」


「そりゃ〈核魔獣〉の値が警戒値になっていますからね~。子ども連れでのんびりお散歩なんてできませんよ~」


「でも、〈核魔獣〉は魔法学園に出やすいんでしょ? 町は平気じゃないの?」


「念のためですよ~。〈核魔獣〉をなめていたら危険ですからね~。危機感を持つのは大事ですよ~」


 夕食前に戻ってきた三人の前を、ファイナが通りかかった。しかし、チラッと視線をやっただけで声もかけてこなかった。


「ちょ、ちょっとファイナさん~」


 燕は慌ててファイナを追いかけ、天見は嘆息して部屋の方へ向かった。


「まだ怒っているんですか~?」


「別に」


 素っ気ない声に、燕はため息をつく。


「水鏡さんも悪気があって――」


 と、ファイナの足が止まった。


「姫! どうですかな、新しいパートナー選びの進捗状況は?」


 燕が前方を見ると、親戚のおじさん数名が、嬉しそうな笑顔でやってきた。


「やはり姫には、フリューゲルが相応しいと思うのですよ。彼ほどパートナーにきめ細かい気配りができる男はいません」


「いやいや、我が息子テオキルの方が相応しいですぞ。姫のパートナーともなれば、バーニングハートの正統後継者候補となるのは間違いなし! そうなれば、バーニングハートの全面的バックアップも望めましょう。スポンサーになってくれるかもしれないですよ」


「ピエルナと組めば、間違いなく人気が出ますよ! 二人とも美人ですから、広報にも力を入れられますから!」


「リラと組み、姫がタッグリーダーの手腕を振るうのが一番だと思います! 姫の強さを知らしめるのに一番説得力が出ます!」


 どうやら、天見とファイナの間でいざこざがあったのを知って、ここぞと売り込みにきたようだ。


 一度に言われても聞き取れないだろうが、ファイナは構わず無表情で、


「そうだな。熟考の末決めさせてもらう。ただ、それほど時間をかけるつもりはない」


 淡々と答えて話題を切った。


 親戚は色めきだったが、ファイナはそれを無視して間を抜けていった。


 その背中を、燕は不安な顔で見送った。



 ファイナは屋敷の外で炎の槍を振り回している。周囲に浮かせた火球を突き、斬り、叩き落とし、一心不乱に動いて汗をかく。


「憂さ晴らしは学園でしたと聞いたんじゃが?」


 しわがれた声を聞いて、ファイナは動きを止めた。振り向くと、翁が壁に寄りかかって立っていた。


「〈核魔獣〉待機中の暇つぶしに、ムセイオンの学生を五十名ほど打ち負かしたらしいの」


「……ムセイオンのレベルを知っておきたかったのです。言うほどのものなのか」


「どうじゃった?」


「生徒全体のレベルはクレストエルクと大して変わりません。強そうな者は〈核魔獣〉の出現に備えて出て来ませんでしたので何とも言えませんね。テオキルが出てこなかったのは意外でしたけど」


「ほう」


「結論としては、ムセイオンでなければダメということもないですね」


 翁は白ひげを撫でつけながら、意地悪そうに笑ってファイナに尋ねる。


「水鏡天見が今日何をしていたか知っとるか?」


「著作権委員本部に行ったのでしょう?」


「そんなもん、午前中には終わったわ。その後、天翔流の娘と学園の保険医を連れて、お昼やお茶を一緒したそうじゃ。綺麗な女に囲まれて優雅な生活じゃの」


 ファイナが握っている槍が一瞬強く燃え上がったが、すぐにおさまる。


「それがどうかしましたか? 水鏡と燕がどこで何をしてようとも、関係ありません」


「よくよく考えることじゃな。何を選んでも構わんが、後悔だけはするんじゃないぞ…………あ、そうじゃ、今日は親戚の者達が泊まっていくそうじゃ。まあ、〈核魔獣〉が出るかもしれないし、安全のためじゃろ」


 翁はそう言って、杖をついて行ってしまった。


 ファイナは手の中で炎の槍を回し、上へ放り上げる。その間にガジェットのチップを入れ替え、文言を唱える。


「双爆輪唱!」


 光る右の拳が炎の槍に触れた瞬間、炎の柱が天へと伸びた。



 翌朝、ファイナ達が朝食をとっていると、使用人達が少し慌ただしく動いていた。


 そして、執事の一人が翁に耳打ちする。


「…………ファイナ。水鏡天見の姿が見えないそうじゃが」


「え?」


 ファイナよりも早く燕が席を立ち、天見の部屋に向かう。燕のその様子に胸騒ぎを感じて、ファイナも食事中に構わず席を立った。


 ファイナは燕に追いつき、二人同時に天見の部屋に入る。


 もぬけの殻だった。ベッドも綺麗に整えられ、寝ていた形跡がない。ただ、運び込まれた朝食だけが、テーブルの上で湯気を上げている。


「散歩にでも行ったんでしょう~」


 と、燕が固い表情で言う。


 その時、玄関でチャイムが鳴る。


 天見が帰ってきたのかと、二人はすぐに玄関へ向かう。


 しかし、玄関にいたのは天見じゃなく、身分証を出す都警の警部だった。


「こちらに『双爆輪唱』の著作者がいますね?」


「私のことだが」


 ファイナは応対していた使用人を押し退けて、警部の前に立つ。


 中年男性の警部は強気なファイナの態度に少し驚きつつも、


「今朝の六時ぐらいに、町の壁が魔法によって壊される事件が起きました。目撃者の証言によると、その魔法の発言は『双爆輪唱』だったらしいです。あなたはその時、何をなさっていましたか?」


「寝ていた」


「…………では、あなた以外に『双爆輪唱』を使える方は?」


「そ、それは……」


 ファイナが珍しく答えに口ごもっていると、


「います。ですがその人物は、今朝から姿を消しています」


 ファイナと燕が背後を振り返ると、そこにフリューゲルとテオキル、リラとピエルナが立っていた。


「そいつの名前は水鏡天見。ピーコーだ」


 テオキルは歯を見せて笑いながら答えた。


 すぐに都警は情報を元に、水鏡天見を重要参考人に手配した。

 主人公離脱。いいのか、これ!? 確かにファイナも天見もって書いていると長くなると思っていたけど!

 まあ、上手くおさまるように頑張ります。さて、思い出したように出てくる宗教ネタ。天見とファイナの仲を認めさせる方法として、最初に考えていたやつです。訳の分からんことになりそうなのでやめました。

 それでは、次回予告。天見が消えた。しかし、ファイナは探そうとすらしない。そのことに苛立った燕は怒って出て行ってしまう。崑崙を引き連れて、向かうは大聖堂。そこで顔を合わせる崑崙とシャロン……(微妙な空気になりそう)。

 次回更新予定は来週金曜日です。

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