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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
恨まれるピーコー
58/100

もはや定番? 狙われる天見

 表現不足でどうしてオリジナルの人達がコピーされたくないか、どうしてピーコーが毛嫌いされるのかが伝えきれていませんでした。これからの数回で説明しようと思います。上手く伝わるように頑張ります。

 昨夜、ファイナの屋敷から帰る馬車の中で、


「あの身の程知らずをどうにかしなければ、腹の虫がおさまらん!」


 でっぷりとした腹のじいさんが苛立っていた。その向かいに座る男も同じ思いで、コクリと頷く。


 だが、腹いせに痛い目にあわせようにも、相手は(マグレかもしれないが)翁の有能な執事達を倒す力を持つ。生半可な者では相手にならないだろうし、ピーコーを倒すために刺客を雇うなど、金をドブに捨てるように感じる。


「安心しろ。少額ですむ方法がある」


 男の心配を見透かしたように、じいさんが声を出す。


「どうするのだ?」


「簡単なことだ。私達が別に何かをする必要はない。ピーコーがいると流せばいい。それだけでいい」


 と、じいさんは懐から硬貨を取り出し、指で弾いて掴んだ。


 その日の内に(噂の出所は確かじゃないが)、スペリオルの酒場を中心に、妖精を連れたピーコーの話は一気に広まった。



 無表情のファイナはジャケットのポケットに手を突っ込んで歩き、その隣を恐縮した燕が歩いている。そして、二人を案内しているのがベリメスだ。


「なぜ離れた場所に水鏡を飛ばしたのだ?」


「あのね、飛ぶ場所を選ぶ余裕があるわけないでしょ。重りで沈んでいく天見をひとまず海上に飛ばして、目についた海岸に飛ばしたので精一杯よ」


 ベリメスはプリプリと頭上から蒸気を出し、後ろの二人に振り返った。


「重りがなければ天見は泳げるんだし、溺れなかったでしょうけど」


「私は重りを外そうとした。水鏡がピエルナとイチャイチャしていたのが悪い」


「あれをどういう風に見ていたのよ。それと……水が豊富にある場所では周りの水も巻きこんで、普段以上の威力が出るんだから気をつけなさいよ」


「基本なので知っていましたけど~、すいませ~ん」


 とはいえ、著作権フリーで吹っ飛んでいく天見も大概なのだが。


 岩場を越え、ベリメスが「ほらあそこ」と指さした先に、倒れている天見ともう一人。


 三人が「ん?」と思っていると、天見の傍らに膝をついている人は体を屈めていって……。


『ちょっと待った!』


 ベリメスとファイナの大声でその人はビクッと体を跳ねらせ、バッと体を起こして硬直する。


 おそらくその人は人命救助をしようとしたのだろう。その尊い行いはありがたいが、ベリメスの手早い救助のおかげでその必要は全くいらない。天見は今ちょっと、気を失っているだけだ。


 ベリメスとファイナはすぐさま天見の所へ飛んでいき、上体を引き起こす。その荒っぽいやり方で、天見の目がぼんやりと開かれた。


「紛らわしい所で寝ていたので心配をさせたようだが問題ない。大丈夫だ」


 ファイナに手早く言われ、その人は安堵して胸を撫で下ろした。


 天見は頭が働いていないまま首を横に向けて、


「……あれ、セリア? 今日って補習の日だっけ?」


 黒髪をうなじあたりで二つに結んで、前髪が少し長めで俯き加減だから目が隠れている彼女、セリア=フラノールに気づいた。


 言われて、ベリメスもセリアの顔を見て気づいた。


「あら、随分と奇遇ね」


 セリアは帽子を外して、ベリメスにペコリと会釈する。


「あの、天見さんは大丈夫ですか? 記憶の方が……」


「寝ぼけているだけよ」


 心配げなセリアを笑い飛ばすように、ベリメスは手をパタパタとさせる。


 その証拠に上体を支えていたファイナの手から離れて、天見が額に手をやってしばらく経つと、


「ん? いや違う。どうしてセリアがスペリオルにいるんだ?」


 現在を思い出し、セリアに疑問をぶつける。


「あ、私の両親はスペリオルにある天翔流の道場で師範をやっているので、顔を見せに帰ってきたんです。それで散歩をしていたら天見さんを見つけて、私てっきり溺れたのかと思ってじんこ……」


 そこまで言って、


「何でもありません」


 彼女は頬を真っ赤に染めて俯いた。


「水鏡さんの知り合いですか~?」


 人見知りのセリアの代わりに、天見がのんびりとやってきた燕に紹介する。


「セリア=フラノール。クレストエルクの一年A組の生徒だけど、知らない?」


「へ~、そうなんですか~」


 燕にじ~っと見られ、セリアは恥ずかしそうに帽子を口元に当て、顔の大部分を隠す。


「見かけた記憶はありませんね。水鏡さんはどうして彼女と知り合ったんですか~?」


「補習仲間だったのよ」


「そうそう。セリアは実技の補習で苦労していたから、一緒にオリジナルの魔法を考えたんだ」


「一週間の突貫作業だったわね」


「そんな短時間で出来るわけないですよ~」


 燕が笑って流そうとしたが、天見とベリメスはキョトンとし、セリアは恐縮して肩をすぼめる。


「完成形に繋がる基本のやつなら出来たぞ」


 …………少し長い間がその場に落ちた。


「え? ウソ……というか、冗談ですよ、ね~?」


 その驚きを超えている反応に、天見とベリメスの頭に大きな汗が流れた。それで、こっそりセリアに尋ねる。


「一週間で作るとか非常識なことだったの?」


「だから、最初に無理ですって、言ったじゃないですか」


「それで作れちゃったあなたがすごいわよ」


 褒められて、セリアは帽子を目深にかぶって真っ赤になった顔を隠した。


「聞きたいことがある」


「は、はい」


 ずっと黙っていたファイナに話しかけられ、セリアは反射的に背筋を伸ばした。


 ファイナは無表情でピッと天見を指さす。


「なぜ、水鏡のことを名前のさん付けで呼ぶ」


 指をさされた天見は目をパチクリとさせる。彼にとっては、そんなのどうでもいいような気がするのだ。


 セリアは顔を俯かせて前髪で目を隠し、


「ベリメスさんがずっと名前で呼んでいたので、そっちの方が馴染みがあって……」


 チラッと、彼女は前髪の隙間からファイナの様子を窺った。


 無表情で怒っているようには見えない。でも、錯覚だろうか? ファイナの背後に「ゴゴゴゴ」という擬音が見える。泣きそうになるのは我慢できるが、身震いだけはどうにもできなかった。


 それでも耐える。天見と出会った当初に比べれば、格段の進歩と言えよう。


「天見、さん」


 絞り出した声の後に、セリアは顔を天見に向ける。それにつられて、ファイナも彼に顔を向ける。


「私に名前で呼ばれるの、イヤ?」


「いや、別に」


 セリアは嬉しそうに肩から力を抜いて、心象のファイナのこめかみに、ペタッと怒りマークが張りつく。


「大切な苗字を呼ばれた方が嬉しいだろ」


 強めの口調で言われて、二人の間にいる天見は「あ、やばい。これ、答えが無いやつだ」とすかさず察した。


「嬉しい……とかはないけど、自分が、水鏡だって忘れないのは、いいかな」


 たどたどしいが、そつが無い答えを返す。


「はいはい、呼び方なんて想いを込めれば何でもいいでしょ。それより、変な人達が来ているわよ」


 ベリメスの注意喚起の後で、何やらガラの悪そうな集団が砂浜に現れた。


 荒んだ目をした者達で、若い者から歳がいっている者までいて、どういった集団なのか共通性がよく分からない。しかし、敵意があるのは間違いない。心的余裕の無い血走った眼は、それを如実に語る。


 彼らは何かを確認して確信を得ると、タイミングを合わせて走り出した。


 こういう手合が苦手なセリアは天見の背中に隠れ、逆にファイナは最前に出て、躊躇せずガジェットを起動させ、


「二頭一対の理に爆砕せよ!」


 待つどころか迎え撃ちに行った。


「双爆輪唱!」


 先頭の一人に問答無用で叩きこむと、そいつと爆炎が後続を巻きこんで吹っ飛んだ。


 爆炎から逃れた者達が、ファイナを無視して素通りする。狙いは彼女ではないようだ。


 刀を持っていない燕が迫ってきた男の一人を海へ投げ飛ばしたが、他の者は彼女も素通りする。


「ピーコー!」


「俺達の怨み、思い知れぇ~!」


「死ね!」


 殺気みなぎる彼らの狙いは、天見だ。


 それが分かった瞬間、


「天見さん、狙ってください」


 セリアがフェザーのブローチ型のガジェットにチップを入れ、彼女が文言を唱えている間にベリメスが『赤の書』を開く。


「ナンバーフォー、インストール!」


 ベリメスの声に反応し、天見のモノクルが藤色に光る。


「コピースタート! 暗中で巡り会った輝きを胸に、開闢(かいびゃく)の決意!」


 天見の閉じた目が開き、体勢を低くして体を後方にねじる。跳ね上がった右手に、風で形作られたブーメランが握られる。


 その時セリアが右手を大きく返して、人差し指と中指をそろえて上へ向ける。


「天翔流、アップバースト!」


 迫ってきた集団が、足元から噴く強烈な風で空へ放り上げられる。


「二人とも、しゃがみなさい!」


「覚醒の恵風(ゲイルレボリューション)! Ⓒセリア=フラノール」


 天見はブーメランを斜め上方に向かって力強く投げた。それが空中に留まって高速回転を始めると、踏ん張りが効かない空中にいる人達は巻き込まれて、ブーメランが弾ける衝撃でそれぞれ吹っ飛ばされた。


 ほとんどの者がやられて、残った者も怪我人を担いで逃げ帰った。


 ベリメスに言われてしゃがんで事なきを得たファイナと燕は、体にかかった砂を払いながら起き上がった。


「……私の知らない所でこんな魔法を……」


「すっごい風の魔法でしたね~。しゃがんでも体をもっていかれそうな~……」


 燕はギョッと気づいて、


「ファ、ファイナさん! ほら、あっち、その~あっちあっち、え~っと、あっちに」


 何やら大仰に腕を振って明後日の方向を指さすが、意図が分からなくってファイナは近づきつつ心象で怪訝な顔をする。


「不可解な。どこをさして何を言いたいのだ?」


「とにかく、こっちに来ないで~!」


 と言った時にはもう近くに来ていた。そして、燕が見せたくなかったそれを見て、ファイナの目元が陰で隠れる。


 砂浜の上で抱き合って倒れている天見とセリア(と見えるのはファイナ視点で、実際は天見の胸にセリアが飛び込んだような一方的に押し倒した形)。


 心象のファイナが理由も分からず頬を膨らませ、イラ~っと不機嫌に震える。


 あたふたとする燕と硬直しているファイナの目の前で、ようやく二人は動きを見せた。


 間近で顔を合わせた二人はほぼ同時に顔を真っ赤にして、バッと離れた。


「で?」


 その静かな一文字に振り返った二人の顔は、赤から青に変わった。


「で?」


 再びのファイナの言葉。その迫力にセリアが射竦められているので、代わりに天見が、


「あの魔法が、俺とセリアが共作した魔法で、俺にも著作権があるんだ」


「で?」


「作ったばかりでまだ改善点が多い魔法で、下手したら術者も吹っ飛ばされかねない。特に俺やセリアは体が小さかったり軽かったりするから、注意が必要で」


「飛ばされなかった私は重いと」


 とんでもない解釈に、天見はブンブンと首を横に振った。


「ち、違うんです。飛ばされないために天見さんに抱き、抱きついた訳じゃなくって」


 天見の前に来て庇うセリアを見て、心象のファイナに怒りマークがペタリと張りつく。


 セリアは胸に当てていた手を丁寧に開けると、そこにベリメスがいた。


「ベリメスさんが飛ばされないようにって思って……勢い余って天見さんに突撃しちゃっただけです…………すみません」


 責められるのを覚悟して、セリアは固く目をつぶって気持ちファイナに頭を差し出す。


 そんなことをされても、どうしてこんなに苛立っているのか、どうやったらこの気持ちが解消されるのか……全てが未経験で、当も心象もファイナはどうすればいいのか分からない。ただ、差し出された頭を殴るのは違うと分かる。だって、相手はベリメスを助けようとしたんだから、責めるわけにはいかない。


 ベリメスはセリアの胸元から飛び立ち、頭を振って、乱れたライトグリーンの髪を手櫛で直す。


「助かったわ。天見の影に隠れるのが遅れたから、下手したら巻き込まれたわね」


 ファイナは心配げに自分を見てくる天見と燕に気づいて、両手を封じるように腕を組んだ。それで、二人は安堵のため息をついた。


(まったくスッキリしない!)


 心象のファイナは堪らず叫んだ。


 セリアは誤解が解けたんだと思って、緊張した体から力を抜いた。


「新しい魔法覚えたのね」


「両親に見せたら、この魔法を覚えた方がいいって……なんか、すごい喜んで教えてくれました」


 ベリメスはセリアの話を聞いて、「そりゃ両親は喜んだでしょうね」と、嬉しそうに魔法のことを話す彼女を見て思った。


 ファイナはそちらの話を無視して天見に、


「水鏡。今度の奴らは何だ? 随分と恨まれていたようだが」


「いや、まったく心当たりがないけど」


「……不可解だ。水鏡は少し狙われ過ぎだぞ」


 天見が不審者に狙われるのももう何度目か……慣れたものというより、飽きている感がある。とは言え、そんなこと天見に言われても……。


「ファイナ! 大丈夫だった!?」


「ファイナ姉様! お怪我は!?」


 ファイナの戻りが遅く、様子を見に歩いていたフリューゲルとリラは、騒ぎを聞いて走ってきた。リラはついでに、ファイナのそばにいる天見を突き飛ばした。


 ファイナは無表情だが、どこか面倒そうに「心配いらない」と答えていた。


 突き飛ばされた天見にセリアが近づき、


「あの、天見さん……私、そろそろ戻らないといけなくて……」


「そっか。助かったよ、ありがとう」


 お礼を言われて、セリアは口元が緩むのを隠すように帽子のツバを手で引っ張る。


「頑張るって決めたので……あの、時間がありましたら、また」


 ボソッと呟いて、セリアは逃げるように走っていった。


 フリューゲル達と一緒に来ていたピエルナは岩場から楽しそうにその様子を見ていて、テオキルの姿はこの場になかった。



 あんなこともあり当初の予定より早く切り上げて、昼食を屋敷でとり、午後の観光タイムになった。


 屋敷の外で天見とベリメス、燕がファイナを待っている。


「どうしたのかしら? 随分と遅いわね」


「ファイナさんは準備に時間をかけないはずですけどね~」


 一向に出てくる気配がなく、三人は首をひねる。


「まあ、その内来るだろ。それより、まずどこ行く?」


「私は別に希望は無いわよ」


「俺は神秘の巨石があるサタナ大聖堂に行きたいな」


「私は文化庁、著作権委員会本部に行きたいで~す」


 燕の希望先を聞いて、すかさず天見は待ったをかける。


「そこに俺が行くって挑発行為にならないか?」


「どうでしょうね~? でも、私は行きたいですし~」


 発言からして譲るつもりがなさそうだ。しかし、天見だって神秘と聞いたら放っておけない。


「まずは神秘だろ。と言うか、本部って見学出来るのか? セキュリティーが厳しそうだから、一般人が突然行っても入れさせてくれないんじゃないのか?」


「私達は委員長と顔見知りじゃないですか~。見学ぐらい名前を出せばさせてくれますよ~」


「あなた遠慮しないわね」


「何話しているの?」


 と、いきなりやって来たピエルナが天見の左腕を取って、胸を押し付けるように引き寄せた。


 天見は顔が赤くなるより早く反射的に左腕を引き抜いて、ピエルナから距離を取った。


「色仕掛けのし甲斐がない男ね」


 ピエルナは腰に手をあて、珍しいそうに天見を見つつも楽しそうだ。


「でも、反応は面白いわね。必死な顔しちゃって経験不足丸わかり」


 図星を突かれて、天見は言い返す言葉がなくピエルナから顔をそらす。何となく苦手な人だな~っと思っていると、前にベリメスが浮遊した。


「面白半分で天見にちょっかい出さないでくれる」


 苛立ったベリメスの言葉に、ピエルナは一層楽しそうに微笑む。しかし、その笑顔には朗らかさや純真さが少しも見られず、背筋が震えそうだ。


「本当に保護者なのね。あなたの御眼鏡にかなわなければ交際が許されないのかしら?」


「天見の悪影響になりそうな人は、見過ごせないわね」


「ただ仲良くしたいだけよ」


「あなたが仲良くなりたいのは、天見じゃなくてあっちの子じゃないの」


 ベリメスが屋敷を指さす。


「もちろんそうよ。でもほら、私ってお姫様の親戚じゃないから気後れしちゃうのよ。他の候補者と一緒にアピールするのも気まずいっていうか、遠慮しちゃうっていうか」


「そういうタイプには見えないけど」


「中身は繊細なのよ。だから、お姫様との付き合い方をあなた達を見て勉強しようかと思ったの。特に、ピーコーなのに好感度高そうな天見君には、色々教えてほしいわ」


 ベリメスを無視して天見に飛びつこうとしたピエルナだったが、その両腕はむなしく空をかいた。


「教えておいてあげるわ。天見にそういうスキンシップをすると、あの子の好感度が下がるわよ。危なかったわね。お礼はいいわよ」


 背後からの声にピエルナが振り返ると、そこにベリメスと天見がいた。ベリメスによって、そこに瞬間移動されたのだ。


「ご親切にどうも」


 二人は微笑んで、視線の火花を散らさず見つめ合っていた。


 天見と燕は並んで静かな闘争に背を向け、


「ファイナ遅いな~」


「本当ですね~。何をやっているんでしょうか~」


 気づかないフリをしていた。


「あ、お姫様なら来ないわよ」


 思い出した感じのピエルナの言葉に、天見と燕は振り返った。すると、もう場は和らいでいて、天見の肩にベリメスが戻ってきた。


「え、何でですか~?」


「あの三人に止められているのよ」


 それを聞いた燕は天見の手を取って屋敷を指さす。


「水鏡さん、大変ですよ~! すぐ助けに行かないと~!」


 しかし、天見は慌てた様子もない。


「いや、そんな素直に囚われのお姫様になるタイプじゃないだろ。止められて止まっているなら納得ずくだろ。納得していないなら、爆音の一つでも聞こえるはずだし」


「それもそうですけど~……何だか水鏡さん、今回冷たいです~」


 納得できていない燕は口を尖らせる。


「う~ん、だってな~……良い機会の分岐点だと思うし」


 天見は屋敷の窓を見上げて――それだけだ。その姿を見て、燕は何となく変に思った。けど、具体的に何が変なのかはよく分からなかった。


「お姫様が来ないから、私がタダで案内してあげるわよ。私も地元民だし」


 ピエルナの提案にベリメスが嫌そうな視線を向けるが、


「治安が良いって言っても、ちょ~っと教育に良くない場所もあるわよ。天見君は自分がピーコーであることを公言しているし、無用なトラブルは避けたいでしょ?」


 聞かれても、その意味が分からず天見の頭上に疑問符が浮かぶ。


「ピーコーだと何かトラブルが起きるんですか? さすがに俺も、歩きながら魔法をコピーして使うってことはしませんけど」


「え? マジで言っているの、それ?」


 顔を見合わせて疑問符を上げ合う二人。


「まあ町は広いですし~、同じような観光客も多いから迷子になりやすいと思います~。案内してもらうのはいいと思いますよ~」


 夏で日が長いとは言っても午後からの観光、なるべく効率的に行きたい。


 結局ピエルナが道案内に立って、天見達は出発した。


 その様子を、ファイナは腕組みをして窓から見下ろしていた。

 どこに行ってもしつこく狙われる天見。でも今回は天見が狙われたというより、ピーコーだから狙われたような……?

 矢印が向いている女子が一人でもいると、まあややこしいですね。これで天見も少しは主人公らしい立場に立ってくれるといいんですけど。

 そして、ベリメス。保護者らしく「あんな男、お父さんは認めません」的なね。

 各キャラの立場を明確になるような話になってきました。とりあえず、天見とピーコーの立場を分かりやすく伝えられるようにします。

 それでは、次回予告。残ったファイナは候補者の話を聞くだけは聞いている。テオキルが挑発をしてきて、ファイナは軽く流していたが思わず反応する一言を言われる。そして、天見達は神秘の巨石がある教会に行くことになる。

 次回のお話で、ファイナが『連理の枝』にこだわる要因が少し分かると思います。次回の更新は金曜日です。

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