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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いのローファンタジー、正論に切られる連理の枝
55/100

天見のペース

 水鏡天見……ベリメスによって召喚された日本人。『コピー』魔法使い。日本人だけあって人への気遣いが上手い。基本的には他人に合わせる性格だが、考えがある時には主張し、引かない時もある。特に魔法に関しては強情ですらある。体力がなく、勉強もあんまり。不器用で絵も下手なことが判明。

 現在の魔法ストック状況。1、原初の光輪 2、双爆輪唱 3、平和の象徴 4、覚醒の恵風 5~8、著作権フリーの火・水・風・木(夏休みに入り、全ての属性を網羅することができなかった)。

 BACOOOON!! と、ファイナの鬱憤が溜まった怒りの炎をまとわせた拳が、天見の頬にクリーンヒットした。十人の度肝を抜いて、天見は面白いように吹っ飛んで床を転がり、頬を押さえて悶絶する。


「しょうがなくはないだろう! 水鏡は、私の『連理の枝』ではないか!」


 ガバッと勢いよく起き上がった天見は、魔法で殴られたのでどこか嬉しそうな顔だが、膝がガクガクと震え、K・O寸前のボクサーもしくは生まれたての小鹿のようだ。


「だってさ! さっきから話の中心はファイナだけで、俺放置じゃん! ベリメスなんて俺の肩で寝てたぞ!」


「ちょっと天見、ばらさないでよ」


 寝ていたらしいのに、危機を察して素早く天見から離れていたベリメスは、恥ずかしさで頬を染めて彼の肩に戻ってきた。


「退屈な上におっさん連中の渋面見せられて、コンコンと長ったらしい陰湿な話! 長時間の移動も相まって眠くもなるって! こんなことなら街灯見ていた方が有意義だわ!」


 濃紺の髪が熱で沸き上がっているファイナは天見に近づいて胸ぐらを掴み、顔を間近に引き寄せる。


「退屈だろうが起きてろ、そばにいろ! 私達の今後の話だぞ! 出て行くなどありえないだろ、不可解過ぎる! 睡魔に襲われていたのなら会話に入ってくればよかったではないか! 弁護をするとか反論するとか!」


「いや、正論に言い返したって返り討ちにあうだけだし……」


「そんな弱気でどうする!」


「それに俺、ちょっと気分が悪くって……」


「気分が悪い?」


 先程まで元気だった天見を見ているファイナは、それが嘘ではないかと思ったが、実際彼は、顔をしかめて頭に手をやっている。


「……言ったら失礼になると思ってたんだけど……」


「何だ? 言ってみろ」


 ファイナに促されて、天見は仕方なさそうに口を開く。


「若作りのためなのか体臭を誤魔化すためなのか、ファイナと会うから気合いが入っているのかは分からないけど……香水の臭いがヒドイ。それが何人かいるせいでブレンドされて、頭がガンガンする。もう我慢できない。だから退室したかったんだ」


「……まあ、確かに。私も気になって胸が悪かったが……」


 徐々にファイナの周囲の気温が落ち着いてきた。そして、同意した彼女の言葉に十人の中に少し動揺が現れた。


「特に俺の向かい辺りと、たぶん右端辺り? がスゴイ」


 天見が指をさす所をファイナも見る。すると、自分ではないと主張したいのか、「誰だ、誰だ」というように両隣を疑うように顔を動かしていた。


 そんな中、真ん中にいた男が立ち上がって天見を逆に指さす。


「いきなり失礼ではないかね!」


「だから、失礼になるかなって言ったじゃないですか。もう~、見た感じいい歳したご年配の方々なんですから、身なりぐらいちゃんとしてください。着飾って臭いまで重ねたって余計なだけですよ。待っていますから、皆さん香水を落として来てください。全員で行けば、誰が犯人だったか分からないでしょ。その間、部屋を換気してますから」


 そちらの臭いをかぎたくないのか、天見は顔をそらして「あっち行け」と手を振る。


 その犬猫にやるような仕草に、男達が黙っているはずがない。


「犯人とは何だ! 犯人とは!」


「貴様程度の輩に、香水の良し悪しが分かるか!」


「お姫様も胸を悪くしているから、天見と同程度ということかしら?」


 ベリメスの切り返しに、発言した男はウッと呻いた。それでも、他からはまだ声が上がる。


「ちゃんとした身なりと言うが! 貴様の貧乏くさい身なりと私の服はランクが違うのだ! グスヴァのブランドスーツだぞ!」


「グスヴァ程度で」


 隣の失笑が聞こえたのか、睨みを飛ばす。睨まれた男はこれ見よがしにスーツを開いて中地を見せる。


「私のは最高級のスルトーイのスーツだ」


「勝ったな。私のはスルトーイのオーダーメイド品だ」


「随分と安っぽい指輪をしているではないか、どこの石だ?」


「はん! そんなささやかなダイヤの指輪でよく人の宝石にケチがつけられるな!」


「香水の臭いがキツイのは大方貴様だろ! 似合っていない耳石といい、美的センスがないようだからな!」


「はぁ!? 歳くって鼻までダメになっているのか!? どうせもう、あっちの方も役立たずだろ!」


「ハゲが!」


「少しはやせたらどうだ!」


 揉みくちゃになるほど入り混じって言い合いをする姿に、ファイナのこめかみに怒りマークが張りつく。


「いい加減にしろ!」


 ファイナの叱責が飛び、男達は固まって静かになる。


「珍しくまとまっていると思ったが…………くだらない張り合いなど見たくもない。香水の件はもういい。次回から、控えるようにしろ」


 ファイナが席に戻ってきて、ドスンっと腰を下ろす。


 男達はファイナの前で醜態を晒すことになった原因、天見を恨みがましい目で睨む。


 全員が座り直した所で、唯一騒いでいなかった端に座る男が、


「それでは姫には……」


「貴様、確か水鏡天見とか言ったな!?」


 天見の向かいに座るでっぷりとしたお腹のじいさんが、割って入ってきた。


「そうですよ」


 水鏡が返事をした所で、端の男は目頭を指で揉むように押さえて黙った。その男以外は、手元にある数枚の書類を手に取る。


「貴様に言いたい文句は山ほどある!」


「身の程知らずのピーコー風情が!」


「グリューテイルに近づく不届き者め!」


 先程のことで前々から溜まっていた苛立ちが露わになってほえる。が、ほとんど同時に騒いでいるのであんまり聞き取れない。ので、何だか天見は面白かった。


 そんなんだから、さらに男達の怒りを煽った。


「何がおかしい!」


「自分の置かれた現状も分かっていないのか!」


 バンッと、一枚の書類をテーブルに叩きつける。


「水鏡天見、十五歳。出身地不明、所持属性不明、体内〈粒子〉量不明。家族構成――保護者ベリメス。追記、学園に来る前の経歴が一切不明。ふざけた奴だ!」


「誕生日なら八月末ですよ」


「そんなことどうでもいい!」


 役に立たない書類を投げ捨て、九人の怒りに燃える視線が天見に集中する。


「出身は!?」


「気づいたらベリメスと一緒にいました」


「家族は!?」


「ですから、ベリメスが保護者です」


 その返事に、ファイナは心象で「え?」と思った。以前天見は「優しい両親がいた」と言っていたからだ。だが、今の雰囲気でその質問は出来ない。


「生まれつき持っている属性は何だ!?」


「よく分からないですね」


「体内〈粒子〉量は!? 学園で測定されたはずだ!」


「う~ん、計測不可能って出ましたよ」


「コピー魔法の技術はどこで手に入れた!」


「ある日いきなり使えるようになりました」


「学園に来る前はどこにいた?」


「ベリメスと一緒にいました」


「それはどこだ!? 地名が分からないなら、地図で大体の場所をさせ!」


 広間の壁に飾られている大きな地図を指さされて、天見は困ったように笑う。


「教科書で見るまでここの地図なんて見たことが無かったので、分かりません」


「海の近くか山の近くか、クレッセントから東西南北のどっちから何日かけて来たかぐらい分かるだろ!」


「クレッセントへは、ベリメスの魔法でパッと着きました」


 激しく拳でテーブルを叩かれたが、天見は怖気づくことなく苦笑する。


「マジメに答える気があるのか!」


「心外ですね。ウソは言ってませんよ」


「話にならん!」


「どうせ小汚い捨て子が妖精に拾われたとかだろ!」


 その吐き捨てたセリフにベリメスがムッとしたが、天見の邪魔をしちゃいけないとイライラを抱えて我慢した。


「まともな教育を受けたとも思えん! なんだ、この期末テストの結果は! 八教科中四つが追試! 一つが補習! バカか!」


「体力に関しても最低レベル!」


「頑張ったんですけどね~」


 ズバリ言われて、天見は言い訳できずに後ろ髪に手をやる。


 さすがにそれには、心象のファイナは恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。


「貴様より優秀な者など、吐いて捨てるほどいるわ!」


「その通り! おい!」


 その言葉は、ドアの所で石のように存在を消して立っていた執事に向けられていた。その指示を聞いて、端の男は「段取りがメチャクチャだな」と隠れて呟いた。


 執事がドアを開けると、四人の若い男女が部屋の中に入ってきた。その中には、先程玄関で出会った三人もいた。彼らは右から簡単に自己紹介をしていく。


「フリューゲル=アポネスです。朱雀宝門流免許皆伝。ムセイオン学園では一位の成績です。現在二人目の『連理の枝』がいますので、経験はあります」


「バーニングハート奥義取得者、テオキル=ジェンティだ」


「リラ=カナイマン。ムセイオン学園中等部首席。ボクも『連理の枝』を希望しているけど、ファイナ姉様と同じでいい相手が見つからず苦労している」


「私はピエルナ=カノールよ。周りからは『無慈悲の灰燼(かいじん)』って呼ばれているわ。あのグリューテイルに誘われるなんて、光栄ね」


 穏やかに微笑む初対面のピエルナは、肩ほどまである茶髪。まとう雰囲気はクールそうに見えるが人を寄せ付けない感じはしない――これが大人の余裕というものだろうか。見事なプロポーションと相まって、大人のお姉さんという感じだ。


「ご覧ください! 姫と遜色ない実力を持つ、火の属性を持つどこに出しても恥ずかしくない者達です! 姫にはこの中から、真っ当なパートナーを選んでいただきたい!」


 ファイナは後ろに並ぶ四人を見回して、


「……確かに、私が昔誘おうかと思った者も入っているな。その時は、なんやかんや理由をつけられて断られたが……」


 体を正面に戻して、視線を目の前の九人に走らせる。その少女の睨みに、大の大人全員が汗を流した。


「ピーコーと組まれるぐらいならと、ようやく札を切ったわけだ」


「か、勘違いしないでいただきたい。姫が『連理の枝』を探している時、本当に彼らは都合が悪かったのです」


「そうです。ですが、我らが熱心に説得して、口説き落としたのです」


 ファイナはその言葉を聞き逃すように肩をすくめた。男達はこれ以上ツッコまれないよう、畳み掛ける。


「これが我らに出来る最大限の譲歩です!」


「『連理の枝』を続けたいとおっしゃるのならば、そのピーコーとは別れていただく! これは絶対の前提です!」


「それだけは、我らは譲れません!」


「本当ならば『連理の枝』として魔法戦に出るなど危ないことはやめていただき、勉学に集中していただきたいのです!」


「そして卒業後は――」


「黙れ! 私はグリューテイルだ! 『連理の枝』こそ私の宿命なのだ!」


 立ち上がって胸に手を当てて宣言するファイナの意思表示に気圧され、部屋の中は静まり返った。


 だが、意外な所から声が上がった。


「ファイナ。約束は覚えておるか?」


 全員の目が、ドアの横にある椅子にずっと座っていた老人――翁に注がれる。


 問われたファイナは、コクリと頷く。


「覚えています。破るつもりもありません」


 翁はそれを聞き、椅子に立てかけていた杖を持って、床を一度打つ。


「よし。ならば顔見せも済んだことじゃし、今日はお開きじゃ」


 いきなりお開きになったので、室内にいる人は何となく去りがたいようで、動きが鈍かった。そんな中、端に座っていた男性だけがさっさと席を立つ。そして、出て行く前に翁に話しかけられた。


「やられたの」


「ええ。予定していた半分も姫を追い詰めることが出来ませんでした。随分と早められましたよ」


 彼らの当初の予定ではファイナを完全に言い包めてから、後ろ盾を失った天見を排除するつもりだった――のだが。


「面白いやり方でガス抜きまでしおった。しかも、タイミングが絶妙じゃ。どうやらファイナに唯々諾々と従っている輩じゃなさそうじゃな。あれを狙ってやったのだとしたら、確かにリコリス姉さんが言う通り、『連理の枝』に向いているの」


「だからと言って、認められるわけがありませんがね」


 男性は翁に頭を下げて、部屋を出て行った。


 ファイナは席を立ち、疲れを心象に隠して濃紺の長髪を手で後ろに流す。


「大丈夫だったかい?」


 フリューゲルが心配そうに駆け寄ってきた。


「……何を心配していたのだ?」


 質問に質問で返され、フリューゲルは「え」と言葉につまる。


「いや……それは~、ほら、彼と『連理の枝』になったことで、色々と厳しいことを言われたんじゃないかなって……」


 合点がいって、ファイナは数回頷く。


「別に。貴重な意見だったとは思っている」


「あ~早く終わってよかった」


「まったくね」


 その時、ファイナの視界に足早に退室しようとしている天見が入った。


「水鏡。いくら何でもアレは無いだろう。自分から評価を下げるようなことを言って」


 ファイナは「失礼」の一言も無くフリューゲルを素通りして、天見の横につく。


「最初から最低なイメージだったんだから、下がる余地なんて無かっただろ」


 確かにそうだったろうがとファイナはコメントしにくく、額に手をやる。


「それに、あなただって香水は気になっていたんでしょ」


「それはそうだが……」


 いきなり肩を掴まれたのでファイナが肩ごしに振り返ると、フリューゲルが訝しげな表情で彼女を引き留めていた。


「ファイナ。どうしてそんな薄情な奴を気に掛ける? 彼はキミを見捨てようとしたじゃないか」


「……盗み聞きとはあまり感心出来ることではないな」


 ファイナに指摘されてフリューゲルは気まずそうに呻いたが、彼を擁護するようにリラが隣に並ぶ。


「あれだけの大声、ドアの外にいたら聞こえるよ。ファイナ姉様のあんな声、ボク聞いたことがなかった」


 そして、リラの敵意の眼差しが立ち止まって様子を見ていた天見に飛ぶ。


「あんな礼儀も無い適当な奴、ファイナ姉様に相応しくないよ」


 天見はその視線を受け、身震いした。リラとは初めてあったはずなのに、何だか初めての感じがしなかった。


 何だか分からないけどその感じをマズイと取って、天見はそそくさと退散するように部屋から出ようとした。


「待て」


 その時、翁が天見の行く手を杖で遮った。


「ワシはお主のことは全く信用しておらん。この家に滞在してほしくも無い」


「そんな――翁」


「はあ……まあ、ピーコーと同じ屋根の下なんて、魔法が盗まれるんじゃないかって気が気じゃないでしょうけど……」


 ファイナは言い分があるようだったが、天見は当然の反応のように受け止めてケロリとしている。そんな反応をされたのでは、招待したファイナの立場は形無しだ。


 ファイナはフリューゲルの手を払って、ツカツカと天見に近づいて無言で肩を掴んで力を込める。それで、彼は痛みに呻いた。


「じゃれてないでついて来い。貴様の能力、見極めてやろう」


 有無を言わさぬ感じで翁は歩き出した。天見達三人は当然として、部屋の中にいた他の人達も気になってついて行った。



 長い廊下を歩きながら、天見は隣のファイナに、


「あの四人は全員ファイナの親戚なのか?」


「ピエルナは違う。だが、知っている。私より二つ上で、火の属性を持つかなりの使い手だった。あの若さで自分の魔法が二つ名になっているほどだからな。直接会ったことはないが、『連理の枝』に誘ったことがある。契約金やら雇用条件など、金の話ばかりするのでやめた」


『連理の枝』をそういう金銭目的で見られたら、ファイナなら怒っただろうな~っと天見は声に出さず考えた。


「ねえねえ、あの子が言っていた奥義取得者って何なの?」


 話に入ってきたベリメスが指差すのは、後方にいるテオキル。天見も肩ごしにチラリと振り返るが、ニュートラルな状態がそうなのか、何もしていないのに睨まれた。


「それはですね~」


 どこからともなくやってきて並んで歩く燕が、人差し指を一本立てて説明を始める。


「免許皆伝の上で~、流派の奥義を習得し、使用を許された人のことです~。そのまま正統後継者候補になることが多いので、実力の他にも求められることが多いんですよ~。人格者であるとか、教え方が上手いとか~……あ、正統後継者候補っていうのは~」


「あ、それは別にいいよ。この前知ったから」


 そう言われたので燕は説明を終えて、今度は質問をする。


「ところで~、みなさんぞろぞろとどこへ行くんですか~?」


「水鏡の能力を確かめるつもりらしい」


「え~、また水鏡さんは非生産的なコピー魔法を使うつもりですか~?」


「著作権法を守ればいいだろ」


 だが、燕は不満そうに頬を膨らませた。


「私も今回はあまりピーコーらしさを出さないでほしいのだが……」


『無理』


 天見とベリメスの声が重なって、ファイナは心象でため息をついた。


(『双爆輪唱』の使用許可を出したところで、使わないだろうな)


 さすがのファイナも、天見のことを分かってきている。


 そんな風に普通の会話をしているファイナを、後方の人達は奇異の視線で見ていた。彼らにとってはもしかして、今の彼女は別人に見えるのかもしれない。



 着いたのは屋敷の外、だだっ広い草原だった。


 天見とベリメスが翁と対峙し、他の人は離れて見守る。


「簡単な話じゃ。戦って勝てば客人として迎えよう。負ければ荷物を持って出て行ってもらう」


「何をやってもいいですか?」


「構わんよ」


 その言葉を聞いて、天見の目が喜びに輝く。


 と翁が手を叩くと、どこからともなく三人の執事が彼の背後に現れた。


「そっちが何をやってもいいのに、こっちが何をやってもダメとは言わんじゃろ?」


 ニヤリと笑う翁に、天見も笑って答える。


「当然」


「敵が増えて喜ばないの」


 ベリメスが呆れたように呟いて、『赤の書』を開く。


「それじゃお主達、後は頼むぞ」


 翁は三人の執事に任せて、その場を離れていく。だが、別れ際にボソッと、


「やり過ぎて構わんぞ」


 残していった。


 翁はファイナのそばに来て、一緒に観戦する。観戦している多くは、天見が無様にやられるのを楽しみにしているようだ。しかし、ファイナと燕は大して心配もしていない。


「翁。数で押そうとしても無駄です。むしろ、コピーする種類が増えて水鏡の戦いの幅を広げてしまいますよ」


「知っとるよ。あやつの戦歴は全て調べたからの。じゃが……始め!」


 翁が開始の合図を送ると、三人の執事は懐から取り出した懐中時計型のガジェットにチップを入れ、モザイク処理された文言を周囲に展開させ、魔法を使う。


 三人の背後に出現したのは、水で形作られた同じ騎士だった。


「コピー魔法使いの倒し方ぐらい心得ておるわ。さて、全員が全員同じ魔法を使ったら、あやつはどうするんじゃろうな」

 達人というものは技を編み出した時、同時にそれを破る方法も考えるらしい。素人の私もコピー魔法使いを破る方法を考えねば。

 そこで一つ問題が、この主人公……オリジナルにやられてくれないんです。一番メジャーな方法が封じられているので、ま~大変です。

 第二部に書いた、「コピーされないよう遠くから狙撃」が倒し方その一です。今回はその二「全員同じ魔法を使って数でボコる」です。

 それでは、次回予告! どこの世界でも恐ろしいのは数の暴力か!? 天見の目の前にあるのは一種三つの魔法! どうする天見!? コピーできる状況で美学を捨て、勝敗にこだわって他の魔法を使ってしまうのか!?

 次回更新は来週の金曜日予定です。

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