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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いのローファンタジー、正論に切られる連理の枝
54/100

ファイナの親戚

 ファイナ=グリューテイル……グリューテイル家長女。火属性の使い手。水鏡天見と家伝である『連理の枝』の仲。天見とベリメス、燕と付き合うようになって、色々と変わりつつあるがまだ柔軟性に欠ける。コミュ力は低い。当初から天見の不利に目をつぶって、『連理の枝』になれと強行していたのには何か理由が……。

 後ろに山、前に海があるスペリオルの町はなだらかな勾配の上に建物が並んでいる。夜になっても活気が溢れ、どこかから楽しげな音楽が色々と聞こえてくる。魔法の灯で明るい町中は治安も良く、雰囲気ものどかだ。


 馬車は坂を上がり、町の上の方へ向かう。


 着いたのは、まさに御屋敷と言える建物の前だった。呆然と見上げる燕は、クレッセントにあるファイナの祖母――リコリス=グリューテイルの邸宅に泊まったことがある。その時も家の広さに驚いたが……この家は、それより格段にレベルが上だった。


 まず、屋敷が二つくっ付いている。一つは使用人達が寝泊まりし、調理場などがある建物。そして、もう一つがファイナの家族の家だ。


 外観は白い石材で作られた、まさに白亜の宮殿。鼻に突くような派手さはなく、出入り口や窓の装飾は繊細で落ち着いている。所々魔法の灯で照らされ、美しい白さが際立っている。


 実は、ファイナの屋敷も観光スポットの一つになっている。スペリオルの町を見下ろすように立つ屋敷は建築技術が高く、美的価値も高い。私有物のため近づくことはできないが、下から全景を見られる場所は人気である。


「燕、荷物を渡せ」


 呆けていた燕は、ファイナの声で気を取り戻した。出迎えに出てきたメイドが間近でニッコリと待機していたので、燕は慌ててボストンバックを肩から下ろして、恐縮してメイドに手渡す。メイドは一礼して、屋敷の中へ戻った。


「えっと~……『連理の枝』って、そんなに儲かるんですか~?」


「……『連理の枝』だけではない」


 とファイナはどこか複雑そうに語り始める。


「『連理の枝』として国で一・二を争う魔法使いだった先祖は、ここに居を構えた。どうやら、この風景に惚れ込んだらしい」


 振り返れば、町の向こうに月明かり・星明りに光る黒い海が見える。波でゆらめき、きらめき、常に様相を変える漆黒の輝きと穏やかな海の音に、燕は声も無く感動を味わう。


「元は小さな港町だったらしいが、上質な塩が取れた。それに目を付けた先祖は特産物にしようとした。今でも、山の向こうの海には塩田がある。職人以外の立ち入りも船が近づくことも許されていない」


 風景に目を奪われている燕は、振り返ることなく耳だけで聞いて頷く。


「だが、貿易に向いた大きな船がなかった。それで先祖は私財を投じて船を作り、伝手もあって多くの航路を開いた。それで海運業を取り仕切るようになって…………今に至る」


「なんか、大幅にはしょりませんでした~?」


「私は、商売に興味などない」


 ファイナは腕組みをして、プイッとソッポを向いた。


「おかえり、ファイナ」


 優しげな声に振り返ると、一人の青年が軽やかに玄関の段差を下りていた。


「フリューゲル。来ていたのか」


 フリューゲルと呼ばれた青年はニコヤカにファイナに近づき、握手を求めて右手を差し出す。彼女はそれに応えて、右手を出して握手をかわす。


「久しぶり」


「そうか?」


 素っ気なさに、フリューゲルは苦笑する。


「そうだよ。最後に会ったのが去年の夏だよ? ファイナがクレストエルクに進学するって言い出したあの時だよ」


「あぁ~」


「てっきりファイナは僕と同じそこのムセイオンに通ってくれるものだと思っていたから、すごいビックリしたよ。グリューテイルに連なる者なら、『連理の枝』のノウハウも分かっているし、クレストエルクで教わることなんてないと思うんだけど……どうしてだい?」


「ここは敵が多すぎる」


 ボソッと呟いて、ファイナは握手を外した。


「は~、随分カッコイイ人ですね~。どなたですか?」


 感心するように呟く燕に、フリューゲルは体ごと向き合って笑顔を見せる。艶光る金髪に、親しみを覚える穏やかな青い瞳。背は高く、立っているだけなのに絵になる。


「僕の名前はフリューゲル=アポネス。ファイナの親戚で彼女より一つ年上だ」


「私は聖籠燕です~。ファイナさんのクラスメイトで友達で~す」


 お互いに自己紹介をして、握手をかわす。


「ファイナの友達か。彼女は少し気難しいが、仲よくしてほしい」


 燕は「は~い」と頷き、握手を解いてファイナに近づいてこっそり、


「良い人ですね~」


「まあ、そうだろうな。私も昔からよくしてもらっていた」


「僭越ながら、ファイナのことは妹のようだと思っているよ」


 しっかり聞いていたフリューゲルは、おちゃめにウインクを一つした。


 しかし、フリューゲルは軽く笑った後、申し訳なさそうに顔を曇らせた。


「……ファイナ。着いたばかりで疲れているだろうけど、みんな待っているよ」


「みんなだと?」


「うん。分家のみんなだ」


 それを聞いて、ファイナはため息をついて腕を組む。


「存外まとまるのが早かったな。分家同士、もっともめると思っていたが」


「それだけ、キミがしたことにみんなお冠なんだよ」


 表情一つ変えないファイナを見て、彼女が事の大きさを理解していないと思ったのか、フリューゲルは慌てる。


「僕はファイナの味方だけど、今回のことはさすがにフォロー出来ないよ」


「ありがたいことだが、自分達のことは自分達でどうにかする」


 しばし、フリューゲルは黙ったままでいたが、おもむろに手を上げてファイナの頬に触るか触らないかぐらい指を近づけた。


「そんな難しそうな顔しないで。女の子は笑顔じゃないと……可愛い顔が台無しだよ」


 そのきどった仕草も、フリューゲルがやると似合っていた。そばで見ていた燕は、自分がされている訳でもないのに少し頬を染めていたが、ファイナの表情は一切変わらない。


 しつこくせず、フリューゲルはあっさりと手を放す。


「で、彼はどこかな? まさか連れてこなかったの?」


 フリューゲルはファイナのそばを見渡すが、男の姿はどこにもない。


 ファイナは長いため息をつき、燕は乾いた声で笑う。そして、二人は視線を同じ方へ向ける。屋敷の前にある急な坂。そこに転落防止用の柵があるが、そこから落ちかねないほど身を乗り出して町を見下ろしている少年――水鏡天見がそこにいた。


 馬車から下りるやいなやそこに行ったので、使用人達にも気づかれず、天見の手にはまだカバンがある。


「もしかして……彼が?」


 燕は頷くが、ファイナは答えずズカズカと天見に近づきに行った。


「水鏡、不可解なことをしていないでこっちに来い」


 ファイナはむんずと天見の後ろ襟を引っ掴んで、連行していく。いきなりのことで天見は慌てて、


「あ、ちょっと待って! あそこの町の灯りはさっき点いたんだ。点灯時間が何時間キープ出来るのか見ていたいから――」


「約六時間をずっと見ているつもりか」


「約でしょ!? しかも、一律で点いたわけじゃないから方法が気になるし、その驚異的な持続時間は絶対に著作権フリーじゃない!」


 勢い込む天見を見て、ファイナは嘆息する。放っておけば確実に六時間見ていると、彼女は確信した。


「その通りだ。言っておくが長時間の点灯魔法は絶対にコピーするな。光明企業コイルが独占している。もし手を出そうものなら罰金どころじゃない。消されるぞ」


「穏やかじゃないのね」


 その賑やかな会話を聞いていた燕は、頭に大きな汗を流す。


「まさかこの絶景を目の前にして、注目するのが点灯魔法ですか~」


 町の夜景でも、雄大な海でもない。あまりにも天見らしい。それでもファイナに力で負ける彼は、引きずられて玄関前に来た時は渋々諦めた。


「ふぅ~ん。キミがファイナの『連理の枝』ね~」


 天見とベリメスは、見知らぬフリューゲルにしげしげと見られて、頭上に疑問符を浮かべる。


「どちら様? ファイナの兄弟?」


「私に兄弟はいない。フリューゲル=アポネス。親戚だ」


 簡単すぎる紹介のされ方に、フリューゲルは頬に汗を流した。あらためて彼は天見に名乗ろうとしたが、


「そんな事より――」


 ファイナの切り出しの内容とタイミングに、フリューゲルはショックを受けた。「そんな事」って。


「どうやら私の親戚一同が集まっている。おそらく私達の『連理の枝』に関してだ。遅くなると心証も悪くなるし、急ぐぞ」


「え~っと、それじゃ俺はどこか宿屋を探してくるか」


 都合の良いことに手荷物を持っている天見は、サッと屋敷に背中を向ける。


「不可解な。行く所があると思っているのか? 燕が言っていただろ。この時期に飛び込みで宿屋を見つけるなんて至難だぞ」


「野宿の方法なら私が一から教えてあげるわよ」


「変な所で寝ていれば、都警に引っ張られるぞ」


 逃げ道を塞がれ、天見は露骨に嫌そうな顔をファイナに向ける。


 コピー魔法は邪法とまで言われ、コピー魔法使いは「ピーコー」呼ばわりされるほどの評判の悪さ。『コーピストレス』というコピー魔法を扱う堕落の悪魔までいて、コピー魔法使いに対する世間のイメージは最悪に近い。


 だから、天見は『連理の枝』の本家本元であるグリューテイルの娘、ファイナとはパートナーになりたくなかったのだ。絶対に彼女の親戚から何か言われることが目に見えていたからだ。実際、この前学園にまで乗り込んできた親戚が一人いて、『連理の枝』存続をかけてプロの魔法使いと戦わされた。


「さっきまでの気分が吹っ飛んだ。絶対グチグチ言われるよ……」


「どうせいつかは通る道だ。むしろ集まっているならばいっぺんに済む」


「済めばいいけどね」


「行くぞ」


 二人は並んで(天見の肩にベリメスがいる)玄関の段差を上がって屋敷に入っていく。その後ろ姿を見送って、フリューゲルは燕に尋ねる。


「燕さん、あの二人はいつもあんな様子なの!?」


「大抵そうですよ~」


「……ファイナは、彼が隣を歩いていて何も言わないの!?」


「? どこ歩いたっていいんじゃないんですか~?」


 どうやら燕は知らないんだとフリューゲルは分かった。中等部時代のファイナは、周囲の人間を寄せ付けないでいた。彼女自身が相手を認めない限り無視したし、隣を歩かせるなんてありえなかった。


 隣を歩くことを許されていた数少ない一人、フリューゲルは当時を知っているので驚きようは天地がひっくり返るほどだ。だって、今、ファイナの隣を歩いているのは…………ピーコーだぞ。


「おいファイナ! てめぇ、気でも狂いやがったか!?」


 屋敷の中から聞こえてきた怒声に、燕とフリューゲルは慌てて中に入った。


 怒声の主は、二階から玄関ホールにいる天見とファイナを見下ろしていた。黒髪の短髪は自然と立っていて、鍛えている体格は服の上からでもガッシリしているのが分かる。


 長身で切れ上がった目の睨みは迫力があった。


「『連理の枝』がピーコーだと!? どうすればそんな愉快な発想が出てくるんだか!」


「テオキル」


 ファイナが彼の名を呼ぶと、テオキルは忌々しげに手すりを強く拳で叩いた。


「よくも堂々と顔を出せたもんだ! 相変わらず度胸だけはありやがる。人形みたいな面しやがって――おい、てめぇ! どこを見ている! 俺はこっちだ! てめぇがピーコーだろ! その顔見せろ!」


 わめいているテオキルに目がいっていて全員気づかなかったが、天見は彼を見ずにずっと隣接する部屋の方を見ていた。そちらは暗く、誰もいないようだが。


「古典的ね」


 天見と同じく部屋を見ているベリメスの手には、彼女のサイズに合わせた赤い本がある。


「一人が騒いで注目を集めて、隠れている仲間が攻撃する」


 ベリメスの言葉で、テオキルは忌々しげに舌打ちした。


「バレてるわよ。それでいいならさっさと使ったら? コピーされるだけだけど」


 失敗を認め、暗闇の中から出てきたのは短い黒髪の少女。天見と同じぐらいの身長で、大きな丸い目で体の線は細い。彼女は左手首にある腕輪型ガジェットからチップを抜きながら、不思議そうな視線でジッと天見を見る。


「どうしてボクがここに潜んでいるのがわかったの?」


「何となく? 理由なんて考えていたら魔法を見逃すかもしれないだろ」


 脳を経由しないで魔法を見ようなんて……平然と信じられないことを言ってくる。


 ファイナは隠れて狙っていた彼女を見ても特に怒るわけでもなく、


「リラか。何をするつもりだったのかは知らないが、魔法に関して水鏡に常識は通じないぞ」


 次に上にいるテオキル――身構えている彼を一瞥して、コメントもなく歩き始めた。


「水鏡、行くぞ。集まっているのはおそらく一階の広間だ」


「うん…………あ、しまった! 今の気づかないフリをして魔法に当たっておけば、魔法を見れた上に出なくてよかったかもしれない!」


「不可解なことを言っていないで、いいから来い」


 やり直ししかねない天見を引っ張って、ファイナは奥に続く廊下を進んでいく。


「あいつ本当にファイナか? 何もせずに行きやがった……」


 ポツリと呟くテオキル。ファイナの背中を、燕をのぞいた親戚達はキツネにつままれたような顔で見送った。



 扉の前で待機していた執事が、ファイナと天見とベリメスが来たことを室内に伝えてドアを押し開く。


 そして、無遠慮な瞳が天見に集中する。その視線にさらされ、彼は小さく嘆息した。


「無難な顔だ」


「姫と身長差がありすぎる。一枚の写真に納まるか? 写真映えしない」


「全体的にみすぼらしい」


 容赦ない容姿に関する批評に、天見は落ち込むよりも呆気に取られて頭に大きな汗を流す。


「この子の一族は、外見から入るのかしら?」


「理事長にもされたからね」


 だが、ファイナは集まっている面子の確認をして取り合わない。先程の三人の父親は元より、総勢十人。主だった分家の親族は全員来ているなと、彼女は気を引き締めた。


「まあ、座りなさい」


 背後からの声に、ファイナは驚いて振り返った。扉の横の椅子に、ちょこんと白ひげの老人が座っていた。


「翁!?」


 その人物がいたことが意外だったのか、ファイナは珍しく驚きを声にした。


 とにかく、二人は長テーブルについている十人と向き合って椅子に座る。それでもファイナは、後ろにいる老人を気にしているようだった。


 天見は座った後、少し顔をしかめて椅子を引いた。


 そして早速、真ん中にいる男が口を開く。


「それでは姫、言い分を聞きましょうか」


「言い分だと?」


「我らには全く理解が出来ない。なぜピーコーなどを『連理の枝』にしたのですか」


「単純なことだ。水鏡が私の『連理の枝』に相応しいと思ったからだ」


「……残念です。もしかしたら、何か深いお考えでもあるのかと思ったのですが……」


「どうやら姫は、グリューテイルとしての意識が低いようだ」


 呆れた口調で失望の様子を見せる男達にファイナは怒りを覚えたが、つとめて冷静な口調で、


「私の『連理の枝』だ。私が決めて――」


「『私』!」


 大きな声で遮られ、ファイナはそちらに顔を向けた。テーブルの端にいる中年男性は、静かに尋ねる。


「『私』……とは、誰のことですか?」


「何を言っている。私、ファイナ=グリューテイルのことだ」


「そう。あなたのことだ……よかった。自覚が無くなったわけではなさそうだ」


 眉根をよせているファイナに、真ん中にいる男が尋ねる。


「それでは姫。本当にグリューテイルの『連理の枝』に、ピーコーが相応しいと考えておいでですか?」


 ファイナはその問いに表情一つ変えなかったが、心象では言葉を詰まらせていた。


「我らは何も、頭ごなしに姫を否定しているのではありません」


「姫に何かしらの固い決意があり、ピーコーを『連理の枝』にしてもいいと考える経緯があったのだろうとは察せられます。でなければ、切羽詰まっていたとは言え、姫が妥協するわけがない。ましてや、ピーコーを『連理の枝』にするわけがない」


「先日リュートハルトさんを撃退したのは聞いています。なるほど。確かに、姫が選んだほどの相手だ。説得力がある」


「ですが……それでも……」


 十人の目がファイナに突き刺さる。


「我らの目には、あなた達がグリューテイルの長女とピーコーにしか見えない」


 ファイナの太ももの上で、拳が震えるほど強く握られる。


「世間も同じ目で見てきます。理解できないでしょう。何故と思うでしょう。そして、人とは理解できないものを多かれ少なかれ嫌悪します。あなた方だけが嫌われるなら、まだ傷が浅い。しかし、あなた方を通して『連理の枝』が嫌われてしまったらどうしますか」


「姫のワガママが、五百年以上も歴史ある『連理の枝』の誇りと名誉を傷つける」


「ご自分の立場を今一度見つめ直してください。あなたの行動の全てが、人に見られているものだと思ってください」


「軽はずみな行動が、『連理の枝』全体に関わってくるのです」


 入念に稽古でもしたのかと思うほど、順繰りに理路整然と話す。そのせいで、ファイナは誰に狙いを定めればいいのか分からない。仕方なく全員に向けて、


「勝てばいいのだろう。私達が他に例を見ないような『連理の枝』になり、認められれば」


 十人に向けて分散された檄は、何の効果も無かったどころか、さらにファイナを追い詰める。端にいる中年男性が「もし」と声を出す。


「姫とそこのピーコーの『連理の枝』が世間から認められたとしましょう。そうなれば、『連理の枝』はピーコーでもこなせる程度のものだとされます」


「ち、違う! 水鏡はただのピーコーでは――」


「何度でも言いましょう。あなた達は個人である前に、グリューテイルの長女とピーコーなのです」


 ファイナは強く歯噛みする。だが、それは口を閉じたということ……。


「お分かりですか? 成功しようが失敗しようが、『連理の枝』の尊厳は地に落ちるのです」


「『連理の枝』であるだけで『連理の枝』を害する。黙っていてもです。まるで毒のようですよ」


「いない方がマシです」


「やはり、姫は『連理の枝』を目指さなかった方がよろしかったのでは?」


 チリッと、ファイナの長い濃紺の髪が吹き上がりそうになった瞬間――その前に天見の手が上がった。


 それまでずっと黙っていた天見の行動に、全員の視線が向けられる。隣にいるファイナの視線もだ。身構えると書くと大げさだが、十人は彼が何を言おうが全て論破するつもりで待ち構える。


 所詮はどこその者とも知れないピーコー。ファイナのそばで良い所を見せようといきがるつもりだろうが……逆に教養の無さを露呈させて、身の程を思い知らせてやると考える。


 促されてはいないが、全員が黙っているので発言していいのだろうと天見は判断した。


 そして、全員が注目する中、天見の第一声が――


「あの~、俺いてもしょうがないみたいですし、退室していいですか?」


 炸裂した。

 あ~まみ~! おまえは何を考えているんだぁ~! ヒロインのピンチにそりゃないだろ、主人公~! まあ、明らかに面倒で、関わり合いになりたくない部類の問題なのは分かりますけど。

 しかし、前回わめいていた大人達が、まあ~理解ある大人ぶりやがって。その化けの皮、次回はがしてやる。

 さて、学校経営だけでなく、会社経営までしているファイナの家です。天見にとって、確実に面倒くさい事態になりそうな予感。

 それでは、次回予告。天見の発言に当然怒るファイナ。だが、彼が部屋を出ようとした理由はちゃんとあった。そこから話し合いは天見のペースとなる。が、そのままではすまさぬ翁。会議を終わらせ、天見に挑む。

 次回更新は金曜日です。え~、水着回をどこにいれればいいのか、本気で悩んでいます。

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