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コピー魔法使いのローファンタジー  作者: 春花
コピー魔法使いのスパルタ教育
50/100

スパルタ教育その2

 祝! 400ポイント達成! かなりの幸運で到達できました。ありがとうございます。


 今まであまり説明してこなかったオリジナル魔法の作り方とか、著作権法への申請の仕方とかをこの短編では説明していきたいと思います。整合性が取れるか不安ですけど、なるべく頑張ります。

・著作権法第六条……著作権の存続期間は、創作の申請を出した時から始まる

 教会で従事しているシャロンは、シスター服に身を包んでいた。そして、ドアが開く音に気づいて振り返った。


「シャロン先輩」


 手を上げて挨拶してくる天見とその肩に乗るベリメスを見て、「う~ん」と人差し指を顎に軽く当てて少し考える。


「そうですね。それじゃ今日は窓の掃除を」


「罰掃除以外の用事で来たって思わないんですか」


 言われて、キョトンと目をパチクリとさせる。


「……………………やですね。冗談ですよ」


「オホホホホ」と何やら怪しげな笑い方。


 ジト~っとベリメスはうろんげな視線をやる。


「長い間だったわね」


 シャロンはコホンと一つ咳払いし、クルリと優しげな笑顔を見せる。


「それで何の用事ですか? ついに懺悔ですか?」


「違います。オリジナルの魔法を作るので申請したいんですけど」


 天見はオリジナル魔法の申請について全く要領を知らないので、著作権委員のシャロンに尋ねに来たのだ。燕は講習中だし、シャロンなら教会にいて近いと思ったのだ。


「水鏡さんが?」


「いえ」


 後ろを振り返って紹介しようとしたが、後ろにいたセリアはドアから動いていなかった。仕方なく遠くにいる彼女を指さす。


「あそこにいるセリアが」


「彼女が、ですか」


 シャロンのちょっと驚いた様子に、


「知り合いなの?」


「あ、いいえ。知り合いというほどでは……悩み相談にいらしていたのを何度か見かけたので」


 それを聞いて、天見はコソッとシャロンに聞く。


「もしかして『神の使徒』に誘いました?」


「水鏡さん、たまにイジワルですよね」


 まだまだ新しい罪悪感を刺激され、シャロンは口を尖らせる。


「誘っていません。彼女の悩みは〈粒子〉量とかの問題ではありませんでしたので」


 苦笑する天見に「少し待っていなさい」と言って、シャロンはその場を離れ、戻ってきた時には数枚の紙を手にしていた。


「こちらが書類になります。足りなかったら白いノートでも結構です。ただ自分のクラスの著作権委員に提出するのですけれど、皆さん夏休みに入っていますし、私も毎日教会にいるわけじゃありません。杜若先生も文化庁に出向いているので、学園にいませんよ」


 天見は説明を聞きつつ、書類を受け取る。


「じゃ、一体誰に提出すれば?」


「夏休み明けに提出してください。それでもひとまず作成開始日を明確にするため、先生二名の日付入りサインをもらってください。先生ならば誰かしら職員室にいますから」


 最後まで説明を聞いた天見は、せかせかとセリアを引きつれて出て行った。その足取りは急いでいるというより、楽しみが我慢できない様子にシャロンの目には映った。



 天見の後ろをついて行くセリアは、彼が持つ白紙の書類を見つめる。


「本気で……作るつもりですか?」


 天見は足を止め、セリアに振り返る。


「作るのはセリアだ。俺は手伝うことしかできない」


「作りたくないの?」


 そう聞かれたら、セリアも返答に困る。オリジナルに対する憧れは、彼女ももちろん持っている。いつかは、自分の全てを詰め込んだ魔法を作ってみたいとは考えていた。


 でもその考えも、力の無さを自覚して諦めていた。


「…………」


「で、作り方なんだけど……まず、何をどうすればいいんだ?」


 セリアの答えを待たずに話を進めた天見の言葉を聞いて、彼女はカクッと項垂れを深くした。


「私も知らないから、あなたが頼りよ」


「え? え~っと……」


 天見とベリメスに見られ、セリアは俯きつつポツポツと話す。


「テーマを決めて……参考にする魔法を見つけます」


 結局、引っ張られてだがスタートを切ることになった。



 三人は職員室に行って、頼み込んで鍵を借りて図書室で作業をすることにした。


 とりあえず、過去にどんな風の魔法があったのか書物で調べる。


「カマイタチ系を外すと、やっぱり竜巻や風の塊の魔法が多いわね。あと、飛行系も」


「武器に付加させる魔法も多いな」


「風属性は武器との相性が良く、攻撃力を倍加させるんです。けど、武器そのものを形成するのには向いていません。風の特性上、状態維持には不向きで媒介無しだと、形を失って拡散するまで早いですよ。〈粒子〉の扱いが難しく、繊細な属性です」


 難しく繊細……意図せず風を集めてしまうセリアが言うと説得力がある。


「あなた武器は?」


 ベリメスが尋ねると、セリアは首を横に振った。


 まあ、あんまり武器を持って戦う気性には見えない。そう思って天見は提案する。


「飛行やスピード強化以外にも敵の動きを止めるものもある。カマイタチを使わないならこっちの方が向いているかも……攻撃系じゃなく、こういう補助系を作るか?」


 どうしようかと俯くセリアは、本をめくる手をピタリと止めた。そして、頭を小さく横に動かして、


「攻撃系がいい……かな」


 ハッキリと答える。


 意外なのは攻撃系を選んだことではなく、その決断の早さだ。


「もしかして、もうイメージって言うか、テーマが決まっているのか?」


 すると、セリアは読んでいる本を立て、縮こまって影に隠れてしまう。


「……そんな……具体的な、ものは……」


 と言って逃げようとするが、天見がジッと見つめて逃がさないので、セリアは頭上に汗を飛ばす。そして、観念したのか本の上からチラリと天見を窺い、


「あの……これ」


 その本を開いたまま天見に差し出す。そのページには挿絵があり、男が群がる異形のモンスターを風の魔法で吹き飛ばしていた。


「小さい時は……こんな魔法、使ってみたいなって」


 天見とベリメスは「へ~」と、挿絵を眺めた。確かにカッコイイし、これに憧れるというのも分かる話だ。でも、その挿絵は(予想)と書かれていた。


 実際の魔法とは違うのかと思い、その魔法の『発言』を確認し――天見とベリメスの心臓がドキッと大きく打った。


『創世の魔法――至天の空域、帝風壊雨(グレイテストゲイル)


 ダラダラと汗を流す天見とベリメスに気づかず、セリアは俯いたまま気恥ずかしそうに自分を笑う。


「いいんです。それは気にしないでください。ちょっと思い出しちゃっただけですから」


 そして、適当な本を手に取って、パラパラとめくって一つを指さす。


「えっと~、これなんていいかも」


 しかし、天見はセリアが提案する魔法なんて見ずに、両肘をテーブルにつき、手を組んでそこに顎を乗せ、マジメに聞く。


「創生の魔法の、どこに憧れたんだ?」


「そんな……どこに、って言っても……」


 まさかマジメに取られるとは思っておらず、セリアは困ったように口ごもらせる。


「難しく考える必要はないわよ。何気なく口にしてみればそこから糸口が見つかるかもしれないし」


 ベリメスの言葉に天見も頷く。それでセリアは手に持っていた本を置いて、天見の前にあった本を改めて自分の所に引き寄せて挿絵を見つめる。


 子どもの時にこの魔法に強く憧れたのは、大好きだった本の魔法使いの必殺技だったからだ。追い詰められても諦めず、最後に全てをかけて放つ力強さ。


「…………一撃必殺の所、かな……」


 それを聞いて、天見は上体を起こしてしばらく虚空を見上げて考え込む。そして「一つの案なんだけど」と前置きして紙にペンを走らせ、


「これとかどう?」


 ベリメスとセリアに見せるよう、紙をつまみ上げた。


【風の残存〈粒子〉を全て込めた、回避不可能な魔法】


 見せられた二人は、「いやいやいや」とばかりに手を横に振った。


「回避不可能とかありえないわよ」


「それに〈粒子〉量が変動タイプの魔法はデータ化が複雑ですし」


「いや、これは将来的な最終目標で、手始めの魔法はもうちょっとアッサリさせる予定なんだけど。時間もないことだし」


「アイディアがあるの?」


「セリアは風を集める能力に優れているから、風ごと敵を引き寄せられるんじゃないかと思ってさ。それで敵の動きを止めて、追撃の魔法でドカンっと」


 説明しながら紙に絵を描く。


 中心に小さな丸。それに向かって渦巻くような矢印と棒人間を描いて、離れた場所に腕を突き出している棒人間おそらくセリアを描いた。


「…………天見って、絵も下手なのね」


「そうだよ、そこも短所だよ」


 いじけたように口を尖らせる天見を見て、セリアは「本当に短所が多い人なのかな?」と思った。


「ほらほら天見。ちゃんと自分が描いたってサインしとかないと」


 楽しそうにせっつくベリメスに頼まれ、ムスッとした天見は適当に名前を絵の下に書いた。


「絵の感想はいいんだよ。で、どうだろうセリア? 長所を取り入れたやつで考えてみたんだけど……」


「…………」


 セリアは微動だにせず考え込む。決定権のある人の判断を目の前で待つ天見は、何か緊張して不安な心もちで待つことになった。


「えっと……追撃の魔法まで作るのは難しいと思いますけど、相手を風の中心に巻き込む魔法でしたら大丈夫だと思います。データ打ちの参考になりそうな魔法に心当たりがありますから」


 オッケーの返事をもらった天見だが、微妙に困った顔を浮かべる。


「その~……好みじゃない魔法なら断ってくれて全然いいんだけど……創世の魔法とも違うし……」


 絵の感想は求めていないが、魔法の感想はすごい求めてきた。セリアのオリジナルになるので、彼女の気に入らないものにする訳にはいかないという思いなのだろう。


 それに気づいたセリアは気を遣うように慌てて、


「いえ、すごくいいと思いますよ。創世の魔法のことはそんなに気にしなくっても……ただ……あの……私のせいで、上手くできないかもしれないけど」


 徐々に口ごもり、下を向いてしまう。


「そんなことは試してみれば分かるよ。で、次は――」


「天見、もうあの子達の勉強終わっているんじゃない?」


 言われて天見が時計を見ると、講習が終わって数分経っていた。夏休みでチャイムがならないため、すっかり忘れていた。


「ちょっと待ってて! 用があるって言ってくるから!」


「あ、あの、私の方はもういいので――」


 というセリアのセリフを聞かずに、天見が図書室を飛び出して行った。


 数分後――。


 何やら廊下の方でけたたましい音が聞こえてきた。図書室に駆け込んできた天見はドアの鍵をかけ、ベリメスとセリアがいるテーブルに駆け寄ると上に乗っているものを全てテーブルの下に投げ入れ、セリアの手を引っ張ってテーブルの下に隠れる。追って、ベリメスもテーブルの下に入る。


 訳も分からずセリアが天見を見ると、汗でびっしょりで激しく肩を弾ませて息をついていた。


 何かを聞こうとセリアが口を開きかけると、天見の手が口を塞ぎ、人差し指を口元で立てて「静かに」のジェスチャーをする。


 彼は真剣な目でドアの方を見て――ドアノブがガチャガチャと動いた時に緊張が頂点に達した。


 ドアのガラスから中を窺うような影が見えたが、しばらくするとドアの前から気配が消えた。ようやく緊張を解いた天見は、全身から脱力して両手を床につく。


「はぁ~、死ぬかと思った」


「そこまでする」


「あの……一体何が……」


「ちょっとファイナに追いかけられただけだ」


「事情を説明しなかったの?」


「説明したら絶対に燕と一緒について来ちゃうからさ、適当に濁してダッシュした。あの二人が来たらセリアが委縮するだろ?」


「それは、まあ」


 委縮するどころか、『仲間殺し』を前にしたら三秒ともたずに自分は逃げると、セリアは思う。


「職員室で俺達が図書室の鍵を借りたって聞くかもしれないし移動しよう。次は何をするんだ?」


「あ、はい。え~」


「テーブルの下から出たら?」


 膝がくっ付くほど天見の近くにいるのに気づいたセリアは慌てて上体を起こして、テーブルに頭をぶつけてしまった。



 図書室の鍵を返すついでに、職員室にいた先生二人の日付入りサインをもらって、三人は学園を出た。


 クレッセントの魔法ショップに行って、空のチップを購入するのだ。


 店に来てセリアはさっさと買ったが、天見はじっくりと店内を見て回っている(はしゃぎ回っていない分本気を感じる)。


 チップやガジェットが陳列され、魔法関連の本も並んでいる。


 魔法のデータが入っているチップには術者の名前と『発言』が表記され、売れ筋のやつなのだろうか、魔法を使っているモノクロの写真が添えられているものもある。


 ガジェットの所には『武器への取りつけ・取り外し承ります』との張り紙がある。


 じっくり見ている天見の髪をベリメスが引っ張って、彼はそちらを向く。


「あの子が困っているでしょ。時間がある時に来ましょう」


 見ている間にすっかりセリアがいることを忘れていた天見は、何も言わずにそばにいてくれた彼女に気づいて、謝って店を出た。


「ごめん。夢中になって」


「いえ、でも声をかけなかったらいつまでも見ていそうな雰囲気でしたね」


 冗談げにセリアは言うが、ベリメスはため息をついて首を静かに横に振る。


「雰囲気じゃなくて、確実にいつまでも見ているのよ」


「え?」


「天見の長所はそこだから。魔法に対しては真剣一途」


 呆れ混じりに肩をすくめながらも、ベリメスは笑っていた。


 そして、三人は大通を歩きながら会話を続ける。


「ひとまず、寮に戻って昼飯を食べないと」


「その次はデータの打ちこみかしら?」


「そうですね。打ちこみと調整を繰り返して作っていくんです。そして、動作と『文言』と『発言』を決めるんです」


「『文言』や『発言』って自由にできるの?」


「データとして打ちこむ割合を調節すれば、けっこう自由にできますよ。そこでオリジナリティを出す方もいます」


「そっか。カッコイイやつを考えないと」


「それはこの子に決めさせなさいよ。この子の魔法なんだから」


「……私は、別に構いませんけど……」


「ダメ。自分のものなんだから他人が決めたものじゃなく、納得いくものをつけなさい」


 天見の肩に座るベリメスにピシッと注意され、セリアは「は、はいっ」と背筋を伸ばして答えた。


「しっかりしている妖精さんですね」


「だって、俺の保護者だし」


「ね~」


「え?」


 セリアの目が面白いほど綺麗な点になった。



 寮に戻った所で天見は待ち構えていたファイナに捕まり、連行された。


 初日の残りはデータの打ちこみで、補習を受けている天見が手伝えることは何もないので影響はない。むしろ、邪魔にならずよかったかもしれない。


 セリアは昼食をとった後、自室から資料を持ってきて、女子寮の一階にある情報室のクリスタルにチップを挿入する。夏休みのため寮にいる人自体が少なく、彼女の他には誰もいない。人を気にせず作業が出来る。


 まず、自分の〈刻紋〉をチップに刻んだ。そして、カタカタとキーボードを叩く。時たま資料を見て、書類にメモを取る。


 椅子に寄りかかって腕を伸ばし、時計を確認するとまだ一時間ほどしか経っていなかった。慣れていない作業のため、疲れが溜まるのが早い。


 もうひと頑張りと作業に戻ろうとして、書類に描かれている天見の絵が目に入った。


『セリアはすごいよ。きっと、超一流の風属性の使い手になれるよ』


 天見の言葉を思い出して、頭の天辺から湯気が出て顔が真っ赤になる。だけど、すぐに頭を振って邪念を払う。


 自分にそんな才能はない。期待に応えられるはずがないと思うと、申し訳なく感じる。


「私に……才能なんて……」


 沈み込みかけると思い出す、期待が失望に変わる顔。その変化の顔が天見の顔で再現されそうになって――セリアは考えないように頭を振った。


 フェザーのブローチ型ガジェットを撫で、作業に戻った。

 というわけで、魔法はこういう風に作成されていきます。一番大変な作業はゼロからの打ちこみなので、セリアさんが一番大変です。ホントに天見は手伝っているだけですね。

 短編だとファイナや燕が出てこないですね。別にそう決めているわけではないのですが、書きたい所があるのでちょっと一歩退いてもらっているんです。

 次回は、魔法が徐々に出来ていくところですね。

 今回の短編は3か4回になると思います。それでは、また明日。よいお年を~。

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